目を覚ました気弱な彼女は腹黒令嬢になり復讐する

音爽(ネソウ)

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「きゃぁあああーーー!いやぁあああーーー!」

目の前にいたヴェネは鼓膜が破壊されるかと思うようなジーンの大声に一瞬怯むが、すぐに我に返ると姉に怒りをぶつける。

「なんて声を出すのよ!馬鹿じゃないの!」

それでも姉ジーンはただひたすら悲鳴を上げ続けた、怯えた様に頭を手で抱えヴェネの存在を無視している。

「巫山戯ないで!ウルサイって言ってるでしょ!」
ヴェネは手を大きく振りかぶると容赦なくジーンの頬を叩こうと構えた。

すると振り下ろすと同時にドアが開いた。


ヴェネは拙いと思ったがもう間に合わない、動作の途中で変更する余裕はなかった。
そしてジーンの寝室に乾いた音がパーンと響く。


頬を叩かれたジーンはベッドから転がり落ちてすすり泣いた。

「これはどういう事かしら……まるでいつもの逆ね」
「お、お母……さま」


明らかに狼狽えまずいことをしたと顔を顰めるヴェネに、母の顔は鬼の形相で睨んだ。

「メイド達から先週の騒ぎの真相を聞いたところよ、まさかと思って半信半疑だったわ。でも本当だったようね。日頃虐めていたのはヴェネだったのね残念だわ」


その言葉に目を見開いて反論するヴェネ。

「なによ!お母様だって姉様を虐待していたじゃない!それはそれは嬉しそうにね!」
「んま!人聞きの悪い!私の行為は躾です!」


ベッドの前でギャアギャアと親子喧嘩を始めた横で、ジーンはメイド達に抱き起されていた。
従者達の背の裏でジーンは誰にも見えない様にほくそ笑んだ。



その後、いままでの姉妹喧嘩の原因はヴェべの一方的な虐めだったと父にまで露見した。
豹変したジーンを恐れて、執事やメイド達が手の平を返したことで立場が逆転したのである。


こうしてヴェネは屋根裏へ押し込まれて軟禁されることになった。
反省文を100枚書けるまで出して貰えない事態にヴェネは激高して暴れたが誰も助けない。


あまりに喚くものだから父親が屋根裏へきて説教することになった。


「いいかヴェネ、お前は見た目もソコソコの上にバカなのだから一般常識程度学ばないと嫁にいけないのだぞ。しかも性格まで歪んでいるとは絶望的だ……教育を間違えた私の責任だな」

普段は温厚な父親から辛辣な台詞を浴びせられたヴェネは愕然とした。


「はぁ?私の見た目がソコソコ?どういう意味よ御父様!あんなに可愛い天使だって褒めてくれたじゃないの!」
「……そのままの意味だ、親の欲目で可愛いと思ったまでのことだ。鏡を見たことが無いのか?」

「そ、そんな御父様!どうしてそんな酷いことを言うの!いつものように可愛いって言ってよ!お母様だって世界一可愛い娘って言ったわよ!そうかわかったわ、反省させるために嘘を言ってるのよね!そうでしょ!?」


だが父は頭を振り溜息をつくと、引導を渡すかのような言葉を紡いだ。

【どんなに不出来だろうと我が子を可愛いと思うのは、血を分けた親目線の言葉に過ぎない】と言い残して父は部屋から出て行った。


ガシャリと錠がされた音が重たく響いた。

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