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最終話
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「やぁ、メル。昨日はよく眠れたかな」
「全然ですわ、まったくもう」
にこやかに微笑む彼は半身を開けて起き上がる、拍子にメルチェラはサッと目を顰めて目を逸らした。調子が狂うといってソッポを向いている。
二人が出会って二度目の冬の朝の事である。
「そう怒らないでくれ、私の可愛い人」
「う……」
彼はひとふさ彼女の髪の毛を取ると口づけて「愛しさがこみ上げてくる」と言った。彼女に怒られると知りながらも何度も口にしているのだ。
「勘弁してくださいな……このようなことを」
「ああ、ごめんよ。キミが慣れるまではと思ってはいるのだが」
彼はさっさと身支度をして、侍女を呼ばずに紅茶を淹れる準備にかかった。そのうよな事はさせたくないとメルチェラは言うが「まぁ良いから」と取り合わない。
「ほら、起きてごらんよ。良い香りだ」
「はい、わかりました……ふぅ」
薄絹を羽織りまるで真冬の妖精かのような装いおいでメルチェラは静かに彼の側へやってきた。顔は僅かに紅潮している。
「ふふ、羽が生えてないかな」
「揶揄わないで」
静かに彼女を抱き寄せて唇を奪うと満足そうに笑う。
「こんな調子では私は困ってしまうわ」
「どうして?まぁ私はそれもかまわないが、侍女らが対応に困るだろうな」
「……ほんとうに意地悪っ!」
「ふふふっごめんよ」
一息ついてから彼女は「まぁ1週間もすればなれしまうわ」と言う。それはつまらないと夫は肩を竦めるのだった。
もう少しだけは私の為に貞淑な妻でいて惜しいと願うのだ。
「もう少しねぇ……三日くらいで慣れてしまうかも」
「そんなぁ、初夜からの醍醐味が……」
「ウルサイ」
ふたりが目出度く結ばれたのは知り合って二年目の冬のこと。
第六王子ベルナディノ・ティガルバスは王族を返上し、臣下ティガルバス侯爵と成った。つまりリーヴァ伯爵家とは違う身分を賜り落ち付いたのだ。
「落ち着いたらリーヴァ家は従弟のメイヴィルが家督を継ぐわ。その辺のゴタゴタは仕方ないとして」
「うん、父君にはもうしわけない」
再び彼女を抱き寄せてほんのりと甘い気怠さを楽しむ夫なのである。
「愛しているよ、メル」
「……私も愛してるわ」
完
「全然ですわ、まったくもう」
にこやかに微笑む彼は半身を開けて起き上がる、拍子にメルチェラはサッと目を顰めて目を逸らした。調子が狂うといってソッポを向いている。
二人が出会って二度目の冬の朝の事である。
「そう怒らないでくれ、私の可愛い人」
「う……」
彼はひとふさ彼女の髪の毛を取ると口づけて「愛しさがこみ上げてくる」と言った。彼女に怒られると知りながらも何度も口にしているのだ。
「勘弁してくださいな……このようなことを」
「ああ、ごめんよ。キミが慣れるまではと思ってはいるのだが」
彼はさっさと身支度をして、侍女を呼ばずに紅茶を淹れる準備にかかった。そのうよな事はさせたくないとメルチェラは言うが「まぁ良いから」と取り合わない。
「ほら、起きてごらんよ。良い香りだ」
「はい、わかりました……ふぅ」
薄絹を羽織りまるで真冬の妖精かのような装いおいでメルチェラは静かに彼の側へやってきた。顔は僅かに紅潮している。
「ふふ、羽が生えてないかな」
「揶揄わないで」
静かに彼女を抱き寄せて唇を奪うと満足そうに笑う。
「こんな調子では私は困ってしまうわ」
「どうして?まぁ私はそれもかまわないが、侍女らが対応に困るだろうな」
「……ほんとうに意地悪っ!」
「ふふふっごめんよ」
一息ついてから彼女は「まぁ1週間もすればなれしまうわ」と言う。それはつまらないと夫は肩を竦めるのだった。
もう少しだけは私の為に貞淑な妻でいて惜しいと願うのだ。
「もう少しねぇ……三日くらいで慣れてしまうかも」
「そんなぁ、初夜からの醍醐味が……」
「ウルサイ」
ふたりが目出度く結ばれたのは知り合って二年目の冬のこと。
第六王子ベルナディノ・ティガルバスは王族を返上し、臣下ティガルバス侯爵と成った。つまりリーヴァ伯爵家とは違う身分を賜り落ち付いたのだ。
「落ち着いたらリーヴァ家は従弟のメイヴィルが家督を継ぐわ。その辺のゴタゴタは仕方ないとして」
「うん、父君にはもうしわけない」
再び彼女を抱き寄せてほんのりと甘い気怠さを楽しむ夫なのである。
「愛しているよ、メル」
「……私も愛してるわ」
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