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胡蝶の歌姫
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最優秀に選ばれた者はお抱えの歌手に選ばれ「胡蝶の歌姫」の称号を賜る、幸福が飛んでくるという有難い花言葉からそのように名付けられた。
「いよいよね、メル!」
「え、ええ。緊張してしまうわ」
誰もが王の発表を心待ちにしており、一挙手一投足が注目されている。それを知ってか知らずか王は悠然と構えてそこにいた。
「では、まずは総評価を述べる……どの歌姫も見事であった。心揺さぶる歌声、漲る力強さどれをとってもその栄光に相応しいと思える。だが、残念ながらその誉に就くことが出来るのはただひとりである」
王は一旦言葉を閉じて目を伏せた、誰もが固唾を飲み見守る。あまりに勿体ぶるものだから少々苛立ちを覚えるほどだ。
「んもう!はっきりおっしゃいな!」
「しっ……不敬ですよ」
ロメルダは苛立ってつい感情的になってつい口が荒くなっていた。誰もが思う事だったが敢えて口にせずにいた。付添人のカルロは彼女のご機嫌取りに必死の様子だ。
「数多いる中で最も輝いていたのは……メルチェラ、メルチェラ・リーヴァ嬢を推奨する、胡蝶の歌姫は彼女のものとする」
その言葉とともに周囲の熱が湧いていった、当人はポカンとしておりその温度差はますばかりだ。無関係の者たちままでも「素晴らしい」「流石です」などと褒め千切る。
「凄いわ、貴方最高だわよ!メル~!」
「そうだよ、どうしてそんなに縮困っているの!ボクらの歌姫!」
「え、歌姫って……え、あれ?」
いまだに場の雰囲気に飲まれている彼女は背や肩を叩かれて茫然としてそこにいる。見兼ねた城の文官がそこへやってきて「どうぞこちらへ」とその手をとった。
「え……と、行ってきます?」
「うん、いってらしゃい!我が胡蝶の歌姫!」
ふわふわとした足取りであったが、確かにその足取りの先には王の姿があった。満面の笑みを称える彼の雄々しい姿である。
「おめでとう、胡蝶の歌姫よ」
「あ、ありがとうございます。拝命、身に余る光栄にございます」
***
「メルが胡蝶……嘘だ、そんな馬鹿な」
人々の波が彼女のいたところへと移動を始めてカルロはただそれに翻弄されていた。紛れもない事実にただ彼は茫然としていた。
「どうして!私の名は呼ばれてないの!ねぇどうして!?」
「……あ、ロメルダ嬢、ははっどうしてだろう、なんでこんな事に」
まるで無関心な他人事のようにしか返すことが出来ないでいるカルロに、頭に血が上った令嬢はビンタで持って現実へ戻した。
「いたっ!なにを」
「なにをですって!冗談では済まされない事よ、やはりあの時の判断は間違っていたのだわ!」
楽曲さえ変えていなけければ、自分が順当に選ばれていたのだとロメルダはそう言い募るだった。それを言われたカルロは「ならば何故、あの時に反論をしなかった、何故にその通りであると肯定したのだ」と反論した。
「ええい!煩いわよこの能無しめ!二度と私の前に姿を見せないで」
「ひぎゃぁああ!?」
彼女はヒステリックに叫ぶと扇を横殴りにして男の頬を掠めた、深くはないものの怪我を負ったカルロは悲鳴を上げる。
「ひ、ひどい……どうしてこんなことに」
痛む右頬を抑え込み項垂れたカルロ、その先には拍手喝采を浴びて衆目を集めるかつての婚約者の姿が映る。彼女は誉にも奢らずそこにいた。私などが受けるには身が重いと彼女は低姿勢のままなのだ。
「ああ……メル、キミはそうか、そういう人だった……いつだって遠慮深く慎ましい」
彼は憑き物がとれたかのように目を輝かせて彼女の元へ歩き出した。
「いよいよね、メル!」
「え、ええ。緊張してしまうわ」
誰もが王の発表を心待ちにしており、一挙手一投足が注目されている。それを知ってか知らずか王は悠然と構えてそこにいた。
「では、まずは総評価を述べる……どの歌姫も見事であった。心揺さぶる歌声、漲る力強さどれをとってもその栄光に相応しいと思える。だが、残念ながらその誉に就くことが出来るのはただひとりである」
王は一旦言葉を閉じて目を伏せた、誰もが固唾を飲み見守る。あまりに勿体ぶるものだから少々苛立ちを覚えるほどだ。
「んもう!はっきりおっしゃいな!」
「しっ……不敬ですよ」
ロメルダは苛立ってつい感情的になってつい口が荒くなっていた。誰もが思う事だったが敢えて口にせずにいた。付添人のカルロは彼女のご機嫌取りに必死の様子だ。
「数多いる中で最も輝いていたのは……メルチェラ、メルチェラ・リーヴァ嬢を推奨する、胡蝶の歌姫は彼女のものとする」
その言葉とともに周囲の熱が湧いていった、当人はポカンとしておりその温度差はますばかりだ。無関係の者たちままでも「素晴らしい」「流石です」などと褒め千切る。
「凄いわ、貴方最高だわよ!メル~!」
「そうだよ、どうしてそんなに縮困っているの!ボクらの歌姫!」
「え、歌姫って……え、あれ?」
いまだに場の雰囲気に飲まれている彼女は背や肩を叩かれて茫然としてそこにいる。見兼ねた城の文官がそこへやってきて「どうぞこちらへ」とその手をとった。
「え……と、行ってきます?」
「うん、いってらしゃい!我が胡蝶の歌姫!」
ふわふわとした足取りであったが、確かにその足取りの先には王の姿があった。満面の笑みを称える彼の雄々しい姿である。
「おめでとう、胡蝶の歌姫よ」
「あ、ありがとうございます。拝命、身に余る光栄にございます」
***
「メルが胡蝶……嘘だ、そんな馬鹿な」
人々の波が彼女のいたところへと移動を始めてカルロはただそれに翻弄されていた。紛れもない事実にただ彼は茫然としていた。
「どうして!私の名は呼ばれてないの!ねぇどうして!?」
「……あ、ロメルダ嬢、ははっどうしてだろう、なんでこんな事に」
まるで無関心な他人事のようにしか返すことが出来ないでいるカルロに、頭に血が上った令嬢はビンタで持って現実へ戻した。
「いたっ!なにを」
「なにをですって!冗談では済まされない事よ、やはりあの時の判断は間違っていたのだわ!」
楽曲さえ変えていなけければ、自分が順当に選ばれていたのだとロメルダはそう言い募るだった。それを言われたカルロは「ならば何故、あの時に反論をしなかった、何故にその通りであると肯定したのだ」と反論した。
「ええい!煩いわよこの能無しめ!二度と私の前に姿を見せないで」
「ひぎゃぁああ!?」
彼女はヒステリックに叫ぶと扇を横殴りにして男の頬を掠めた、深くはないものの怪我を負ったカルロは悲鳴を上げる。
「ひ、ひどい……どうしてこんなことに」
痛む右頬を抑え込み項垂れたカルロ、その先には拍手喝采を浴びて衆目を集めるかつての婚約者の姿が映る。彼女は誉にも奢らずそこにいた。私などが受けるには身が重いと彼女は低姿勢のままなのだ。
「ああ……メル、キミはそうか、そういう人だった……いつだって遠慮深く慎ましい」
彼は憑き物がとれたかのように目を輝かせて彼女の元へ歩き出した。
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