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茶会への招待
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「あら、保留になってしまったの?それは残念というべきか……うう~ん」
メルチェラは学食の隅で昼食を共にしている友人ボーナに祭りでの事と婚約見直しの件で愚痴を吐いてしまった。彼女は食欲も湧かず皿の肉を細切れにしている。
「お父様は浮気ではないのだから様子を見るとだけ……悔しいわ」
「まあね、親の都合としてはそう簡単に白紙はできないと思うのよ。お相手の家も同意するなら別だけど」
「そう……そうなのよね、カルロの成績優秀な所を見込んで婿として迎えるという縁だから、彼は三男だから貴族で居続けるには貴族令嬢の婿になるか他家へ養子に出るしかないものあちらの親は必死よね」
面倒くさそうに愚痴を零し続けるメルチェラを気の毒にと言うボーナは首を傾げて提言した。
「ねえ、その優秀さが霧散しちゃったらカルロの婿養子の価値はなくなるわよね?」
「え!?あぁ……まぁそうなっちゃうのかな、彼の家は子爵だし富豪でもない取り柄は特にないわ」
「なーんだ、突破口があったじゃないクフフフッ」
ボーナは愉快そうに笑うが果たしてそう都合よく行くものかとメルチェラは苦笑した。
「他所の令嬢に心奪われて浮ついているのなら勉学が疎かになる可能性はあると思うの。恋は人を狂わすというわ、事実とても優しかった彼がメルを蔑ろにしているのだから」
「う、うん。……そっか運任せな所がアレだけど」
すっかり冷めたスープを一口飲んだ彼女は妙にしょっぱいと感じて顔を顰める。
気が重いまま学園で過ごしているメルチェラであったが、祭りから数日後にカルロの方から接触をしてきて驚く。愛嬌ある彼の笑顔が好きだったが、いまではヘラヘラとした日和見道化にしか見えなかった。
「やあ、次の茶会は是非我が家でと母上が乗り気でね!いつも通り土曜の午後に来てくれないか?」
「……貴方が招きたいわけではないようね」
彼女はチクリと嫌味を言ってやったがカルロは目線をズラして気まずそうに頭を掻いている。親に叱られて渋々と誘いに来たことを態度で肯定した。
「貴方側からの招待なのだから土壇場でキャンセルなどしたら……わかるわよね?あまり上位の家を侮らないで」
「わ、わかっているさ、なんだよ可愛げがないな」
「はあ?祭りでの事は許してないですからね!」
「う、ごめん。じゃ、じゃあ土曜日に……」
家格上の令嬢だという事を度々忘れる彼は、勉強以外はゴミ以下なのだと改めて知り大きくため息を吐くのだった。
*
そして約束の日。
予定通りにラメウラ子爵家に馬車で乗り付けるなり、メルチェラは嫌な予感を感じ取った。従者らが出迎えるのはいつもにことだったが、この日は子爵夫妻揃って彼女を出迎えに玄関前で待機したいたからだ。
「……あの、このまま引き返しても問題がないという考えは合っていまして?」
「も、申し訳ございません!うちの愚息が街へ出て行ってしまいました!小劇場にての演目がどうしても観たいからと」
「そうですの……父から聞いてますわよね。近頃は某伯爵令嬢に……歌姫に懸想されていると」
「は、はい!忠告は受けておりました。本人に説き猛省したはずでした。ですが、上辺だけのことだと……残念でなりません」
すっかり呆れた彼女は侍女を連れて「帰りましょう無駄足を踏んで疲れてしまったわ」と怒りの孕んだ言葉を発して馬車へ乗り込もうとした。
「お、お待ちを!このまま帰してはリーヴァ伯爵に面目がたちません!是非、茶だけでも!本日ご用意した菓子も特別なものでして」
「お黙りなさい、面目などとうに潰れてますでしょう。では、ごきげんよう」
無慈悲にもドアが閉じられ、ガラガラと帰路に向かう伯爵家の馬車が走り出すと後方から夫人の嘆く泣き声が聞こえて来た。だが、いまの彼女にはただの騒音にしか聞こえない。
メルチェラは学食の隅で昼食を共にしている友人ボーナに祭りでの事と婚約見直しの件で愚痴を吐いてしまった。彼女は食欲も湧かず皿の肉を細切れにしている。
「お父様は浮気ではないのだから様子を見るとだけ……悔しいわ」
「まあね、親の都合としてはそう簡単に白紙はできないと思うのよ。お相手の家も同意するなら別だけど」
「そう……そうなのよね、カルロの成績優秀な所を見込んで婿として迎えるという縁だから、彼は三男だから貴族で居続けるには貴族令嬢の婿になるか他家へ養子に出るしかないものあちらの親は必死よね」
面倒くさそうに愚痴を零し続けるメルチェラを気の毒にと言うボーナは首を傾げて提言した。
「ねえ、その優秀さが霧散しちゃったらカルロの婿養子の価値はなくなるわよね?」
「え!?あぁ……まぁそうなっちゃうのかな、彼の家は子爵だし富豪でもない取り柄は特にないわ」
「なーんだ、突破口があったじゃないクフフフッ」
ボーナは愉快そうに笑うが果たしてそう都合よく行くものかとメルチェラは苦笑した。
「他所の令嬢に心奪われて浮ついているのなら勉学が疎かになる可能性はあると思うの。恋は人を狂わすというわ、事実とても優しかった彼がメルを蔑ろにしているのだから」
「う、うん。……そっか運任せな所がアレだけど」
すっかり冷めたスープを一口飲んだ彼女は妙にしょっぱいと感じて顔を顰める。
気が重いまま学園で過ごしているメルチェラであったが、祭りから数日後にカルロの方から接触をしてきて驚く。愛嬌ある彼の笑顔が好きだったが、いまではヘラヘラとした日和見道化にしか見えなかった。
「やあ、次の茶会は是非我が家でと母上が乗り気でね!いつも通り土曜の午後に来てくれないか?」
「……貴方が招きたいわけではないようね」
彼女はチクリと嫌味を言ってやったがカルロは目線をズラして気まずそうに頭を掻いている。親に叱られて渋々と誘いに来たことを態度で肯定した。
「貴方側からの招待なのだから土壇場でキャンセルなどしたら……わかるわよね?あまり上位の家を侮らないで」
「わ、わかっているさ、なんだよ可愛げがないな」
「はあ?祭りでの事は許してないですからね!」
「う、ごめん。じゃ、じゃあ土曜日に……」
家格上の令嬢だという事を度々忘れる彼は、勉強以外はゴミ以下なのだと改めて知り大きくため息を吐くのだった。
*
そして約束の日。
予定通りにラメウラ子爵家に馬車で乗り付けるなり、メルチェラは嫌な予感を感じ取った。従者らが出迎えるのはいつもにことだったが、この日は子爵夫妻揃って彼女を出迎えに玄関前で待機したいたからだ。
「……あの、このまま引き返しても問題がないという考えは合っていまして?」
「も、申し訳ございません!うちの愚息が街へ出て行ってしまいました!小劇場にての演目がどうしても観たいからと」
「そうですの……父から聞いてますわよね。近頃は某伯爵令嬢に……歌姫に懸想されていると」
「は、はい!忠告は受けておりました。本人に説き猛省したはずでした。ですが、上辺だけのことだと……残念でなりません」
すっかり呆れた彼女は侍女を連れて「帰りましょう無駄足を踏んで疲れてしまったわ」と怒りの孕んだ言葉を発して馬車へ乗り込もうとした。
「お、お待ちを!このまま帰してはリーヴァ伯爵に面目がたちません!是非、茶だけでも!本日ご用意した菓子も特別なものでして」
「お黙りなさい、面目などとうに潰れてますでしょう。では、ごきげんよう」
無慈悲にもドアが閉じられ、ガラガラと帰路に向かう伯爵家の馬車が走り出すと後方から夫人の嘆く泣き声が聞こえて来た。だが、いまの彼女にはただの騒音にしか聞こえない。
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