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新天地篇
攫われたドリュアス1
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某国の事情を他所に僕らドリアード族はきままに旅を続けている。
ラミンの愉快な下僕から時折連絡がくるので凡そは知っている、連絡手段は下僕提供の通信魔道具だ。
雑音が気になるがまぁまぁ便利だと思う。人間もやるじゃないか。
あの国は想像より急激に衰退しているようだ、罪ない子供などはそれとなく保護してやるように下僕へ頼んでおいた。
【ドリュアス様は人が好過ぎる】と通信先から諌言されたが、国民全員が腐ってるわけでもないし夢見悪いだろ。
全てを救うわけじゃない、偽善だというならそれでも構わないさ。
それはそうと魔物森を抜けて崖上に出たわけだが。
急勾配の崖をどう下りるか議論した結果、「滑り台で滑走」という少々過激なものになった。
ボクが蔦を使って蛇行した滑り台を造った。転移したほうが早いが楽しい方を選んだよ。
上りは転移一択だけど。
「頑丈な俺が試験かねて滑るっす!」失敗しても平気そうなアクティが一番に下りていく。
滑らかというわけにはいかず、多少尻がやられたとジェスチャーで伝えてきた。
「えーと……女子は気を付けて?」
ボクはそう助言してラミンとエリマを見送ることに、マホガニーが彼女らの腰回りにシーツを巻いてあげていた。
うん、それなら悲惨なことにはならないだろう。
微かな悲鳴を残し滑走していく。
半身をミノムシ状態にして下りた彼女らは無事のようだ、ラミンが面白かったと飛び跳ねている。
マホガニーがボクを抱っこした状態で下りると聞かないので、やむなく二人一緒にシーツを巻いた。
「お前、過保護はいつやめるんだ?」
「先代との約束ですから、それに主を護るのは当然の行為です」
ダメだこいつ。
大きなため息を吐きボクはがっちりホールドされて滑走した、パイプ状に伸ばした蔦滑り台を緩やかに下りる。
思ったより快適だった、時折背後から「うげっ!いだっ!」という声が聞こえたが知らんふりしとこう。
先に下りたアクティのズボンに大穴が空いていたので、急拵えで代わりを作ってやった。
「乾燥繊維じゃないから着心地は保証しないぞ」
「ありがとうございます、十分っす!坊ちゃんはなんでもできるんすね!」
なんでもってわけじゃ……。
まあいいや。
マホガニーが物欲しそうにこっちを見てたが、お前が真緑ツヤツヤの短パンを穿いたら爆笑ものになる止めとけ。
全員が無事に下りたところでボクの懐からグルドが顔をだした。ちゃっかりしている。
下りた先は足場が悪くゴツゴツの岩だらけ。
それぞれ散って状況の把握にあたる、豊かな河川の水は滔々と流れホタルのような光珠が無数に浮いていた。
幻想的な光景にボクはうっとり眺める。
やっぱり入りたいな、根っこをこっそり伸ばして流れを楽しむ。
まるでミント水に浸かるような爽やかさの後に、膨大なエネルギーがボクの身体へ浸透しようとしてきた。
慌てて根を引っ込める、なるほどマホガニーが止めるわけだ。
魔力酔いのような眩暈がきた、頭をフルフルして気を保つ。
「あはは、危ない危ない。でも面白い感覚だな」
「ふぅ……旅と言うより冒険になっているな」隣国ナザルリーフに入るには下僕達と合流せねばならない。
急いても仕方ないと思うんだ。通話の回答では3日後だったし。
眩暈が収まったところで盗賊達の根城探しを相談しようと皆に声をかけようとした時、こちらが動くより早くお客がやって来たよ。
絵に描いたようなソイツらの風貌は、見事な悪人顔だった。
先遣らしいソイツらは5人。じりじりとボクの周囲に距離を詰めてきた。
さて、盗賊と遊ぼうか。
ラミンの愉快な下僕から時折連絡がくるので凡そは知っている、連絡手段は下僕提供の通信魔道具だ。
雑音が気になるがまぁまぁ便利だと思う。人間もやるじゃないか。
あの国は想像より急激に衰退しているようだ、罪ない子供などはそれとなく保護してやるように下僕へ頼んでおいた。
【ドリュアス様は人が好過ぎる】と通信先から諌言されたが、国民全員が腐ってるわけでもないし夢見悪いだろ。
全てを救うわけじゃない、偽善だというならそれでも構わないさ。
それはそうと魔物森を抜けて崖上に出たわけだが。
急勾配の崖をどう下りるか議論した結果、「滑り台で滑走」という少々過激なものになった。
ボクが蔦を使って蛇行した滑り台を造った。転移したほうが早いが楽しい方を選んだよ。
上りは転移一択だけど。
「頑丈な俺が試験かねて滑るっす!」失敗しても平気そうなアクティが一番に下りていく。
滑らかというわけにはいかず、多少尻がやられたとジェスチャーで伝えてきた。
「えーと……女子は気を付けて?」
ボクはそう助言してラミンとエリマを見送ることに、マホガニーが彼女らの腰回りにシーツを巻いてあげていた。
うん、それなら悲惨なことにはならないだろう。
微かな悲鳴を残し滑走していく。
半身をミノムシ状態にして下りた彼女らは無事のようだ、ラミンが面白かったと飛び跳ねている。
マホガニーがボクを抱っこした状態で下りると聞かないので、やむなく二人一緒にシーツを巻いた。
「お前、過保護はいつやめるんだ?」
「先代との約束ですから、それに主を護るのは当然の行為です」
ダメだこいつ。
大きなため息を吐きボクはがっちりホールドされて滑走した、パイプ状に伸ばした蔦滑り台を緩やかに下りる。
思ったより快適だった、時折背後から「うげっ!いだっ!」という声が聞こえたが知らんふりしとこう。
先に下りたアクティのズボンに大穴が空いていたので、急拵えで代わりを作ってやった。
「乾燥繊維じゃないから着心地は保証しないぞ」
「ありがとうございます、十分っす!坊ちゃんはなんでもできるんすね!」
なんでもってわけじゃ……。
まあいいや。
マホガニーが物欲しそうにこっちを見てたが、お前が真緑ツヤツヤの短パンを穿いたら爆笑ものになる止めとけ。
全員が無事に下りたところでボクの懐からグルドが顔をだした。ちゃっかりしている。
下りた先は足場が悪くゴツゴツの岩だらけ。
それぞれ散って状況の把握にあたる、豊かな河川の水は滔々と流れホタルのような光珠が無数に浮いていた。
幻想的な光景にボクはうっとり眺める。
やっぱり入りたいな、根っこをこっそり伸ばして流れを楽しむ。
まるでミント水に浸かるような爽やかさの後に、膨大なエネルギーがボクの身体へ浸透しようとしてきた。
慌てて根を引っ込める、なるほどマホガニーが止めるわけだ。
魔力酔いのような眩暈がきた、頭をフルフルして気を保つ。
「あはは、危ない危ない。でも面白い感覚だな」
「ふぅ……旅と言うより冒険になっているな」隣国ナザルリーフに入るには下僕達と合流せねばならない。
急いても仕方ないと思うんだ。通話の回答では3日後だったし。
眩暈が収まったところで盗賊達の根城探しを相談しようと皆に声をかけようとした時、こちらが動くより早くお客がやって来たよ。
絵に描いたようなソイツらの風貌は、見事な悪人顔だった。
先遣らしいソイツらは5人。じりじりとボクの周囲に距離を詰めてきた。
さて、盗賊と遊ぼうか。
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