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新天地篇
閑話 マホガニーの告白
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坐り心地が良いとは言えない荷馬車の移動。
王都を抜けた途端にガタガタの悪路になり、全員の身体が悲鳴を上げた。
耐えかねたボク達はフワフワの綿毛をみっちり袋に詰めて、急ごしらえのクッションを作った。
各々尻に敷いて過ごす、やっと痛みが引いて揺れにも慣れてきた。
回復薬を飲むよう渡したが「貴重なので最悪の事態まで我慢する」と彼等は言う。
そりゃまぁ、安定した場所じゃないと作り難いけどね。
「なかなかいいですね、揺れが緩和されます」
エリマは少々眠そうに綿毛クッションの感想を言う。
ラミンはすでに船を漕いでいて、夢の国へ旅立ったようだ。
それを見てボクは満足に微笑む、彼女らは我儘を言わないから少しお強請りして欲しい。
つい先ほど「お尻が限界です」と言ったのは嬉しかった。
いや、変な意味じゃなくて。
なにかを要求するという自我の芽は息吹いている。過去の彼女達なら痛みを耐えてじっとしてただけだろう。
メイドのお仕着せだけでなくドレスや靴を作ってあげよう。
女の子らしくお洒落に目覚めるかな?
そんな事を考えてるボクをチラチラ見ているマホガニー。
ボクの肩の上でグルドが突っ込む。
「そこのムッツリスケベ、言いたいことがあるなら言えばよかろう?」
「む、むっつり!?」
マホガニーが心外だと反論する。
ムッツリでなくオープンだ、というがそんな事聞きたくないよ!
「そうだよ、マホガニー。城から戻って以来ずっと様子がおかしいよ」
ボクの詰問に執事の目が泳いだ。
「……先代メリアーデ様のことでございます」
漸く覚悟を決めたようにマホガニーは口を開いた。
「あの方が無理をされて瘴気毒に蝕まれ弱っているのを黙認しておりました、救えたかもしれないのに。これは私の罪でございます。本来はこの旅に同行することさえ……」
淡々と続く彼の悔恨の言葉を止めたのは意外にもグルドだった。
「その懺悔はメリアーデ殿に失礼であるぞ!」
「グルド、貴様なにを!」
二人が睨み合った、うむ、今一緊張感がないけどね。
「マホガニー、母が黙っているよう頼んだのでしょ?ボクを護るためだったのは理解している。気に病むことは何一つないよ」
そういうボクにグルドが同調する。
「そうだ!すべては主が為の黙認、貴様が後悔の念を抱くのは甚だ遺憾である。そうであろう?貴様の発言はメリアーデ殿が命がけで成し遂げた偉業を侮辱するものだ!」
捲し立てたグルドの言葉にマホガニーが顔を歪めた。
「わ、私は二重に主を愚弄するところだったのだな、腹立たしいがグルドに感謝しよう」マホガニーが折れた。
グルドは「謝罪の言葉は気持ち悪い、胡桃でも寄越せ!」そう言ってプイと横を向いた。
おやおや、実は仲が良いのかな?
マホガニーに代りボクが胡桃を2個与えた、肩の上でで食べるのは止めてくれよ?
「坊ちゃん、今後もお仕えする事をお許しください」マホガニーが哀願する。
むっつりスケベで頭が固い執事に、ボクは悪戯な笑みを返す。
「そうだな、日々の美味しいお菓子を対価に生涯雇用してやろう」
にやりと笑ってやれば執事は尻尾を振り回す犬の如く嬉しそうだった。
なんだかやっと次代の当主として認められた気がしたよ。
王都を抜けた途端にガタガタの悪路になり、全員の身体が悲鳴を上げた。
耐えかねたボク達はフワフワの綿毛をみっちり袋に詰めて、急ごしらえのクッションを作った。
各々尻に敷いて過ごす、やっと痛みが引いて揺れにも慣れてきた。
回復薬を飲むよう渡したが「貴重なので最悪の事態まで我慢する」と彼等は言う。
そりゃまぁ、安定した場所じゃないと作り難いけどね。
「なかなかいいですね、揺れが緩和されます」
エリマは少々眠そうに綿毛クッションの感想を言う。
ラミンはすでに船を漕いでいて、夢の国へ旅立ったようだ。
それを見てボクは満足に微笑む、彼女らは我儘を言わないから少しお強請りして欲しい。
つい先ほど「お尻が限界です」と言ったのは嬉しかった。
いや、変な意味じゃなくて。
なにかを要求するという自我の芽は息吹いている。過去の彼女達なら痛みを耐えてじっとしてただけだろう。
メイドのお仕着せだけでなくドレスや靴を作ってあげよう。
女の子らしくお洒落に目覚めるかな?
そんな事を考えてるボクをチラチラ見ているマホガニー。
ボクの肩の上でグルドが突っ込む。
「そこのムッツリスケベ、言いたいことがあるなら言えばよかろう?」
「む、むっつり!?」
マホガニーが心外だと反論する。
ムッツリでなくオープンだ、というがそんな事聞きたくないよ!
「そうだよ、マホガニー。城から戻って以来ずっと様子がおかしいよ」
ボクの詰問に執事の目が泳いだ。
「……先代メリアーデ様のことでございます」
漸く覚悟を決めたようにマホガニーは口を開いた。
「あの方が無理をされて瘴気毒に蝕まれ弱っているのを黙認しておりました、救えたかもしれないのに。これは私の罪でございます。本来はこの旅に同行することさえ……」
淡々と続く彼の悔恨の言葉を止めたのは意外にもグルドだった。
「その懺悔はメリアーデ殿に失礼であるぞ!」
「グルド、貴様なにを!」
二人が睨み合った、うむ、今一緊張感がないけどね。
「マホガニー、母が黙っているよう頼んだのでしょ?ボクを護るためだったのは理解している。気に病むことは何一つないよ」
そういうボクにグルドが同調する。
「そうだ!すべては主が為の黙認、貴様が後悔の念を抱くのは甚だ遺憾である。そうであろう?貴様の発言はメリアーデ殿が命がけで成し遂げた偉業を侮辱するものだ!」
捲し立てたグルドの言葉にマホガニーが顔を歪めた。
「わ、私は二重に主を愚弄するところだったのだな、腹立たしいがグルドに感謝しよう」マホガニーが折れた。
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おやおや、実は仲が良いのかな?
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「坊ちゃん、今後もお仕えする事をお許しください」マホガニーが哀願する。
むっつりスケベで頭が固い執事に、ボクは悪戯な笑みを返す。
「そうだな、日々の美味しいお菓子を対価に生涯雇用してやろう」
にやりと笑ってやれば執事は尻尾を振り回す犬の如く嬉しそうだった。
なんだかやっと次代の当主として認められた気がしたよ。
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