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暗躍する者
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国境沿いの森林で葉を重ね隠蔽したテントから微かに人声が漏れる。
フードを目深に被り、認識疎外の魔道具を念入りに付けた人物。フォードである。
「成功していれば今頃……クソッ役立たずのアントンめ、昔のよしみで拾ってやろうと仲間にしたが、やはり劣等は劣等のままだった。ふん、期待した俺が悪いか」
襲撃の夜でさえアントンはなにもしていない、フォードに胡麻をするばかりで終わる。
ドリュアスの日課などを知らせた程度で、有能な執事とメイドの存在は一切伝えていない。
学生時代はバカがやれる仲間の一人として連れ歩いた。
当時のアントンは人身御供を受け入れたばかりで、国から褒章をたんまり貰っていた。
ようするに遊ぶ為の金蔓だった。頭が切れ仲間の中心だったフォードはアントンを重宝した、それを勘違いしたアントンは「無二の親友」と一方的に慕っていたのだ。
貧乏男爵の三男だったアントンの黄金時代だった。
フォードは昔の黒歴史を振り払うように頭をグルグル回す。
それから息を吐いて定時報告の為に魔道具を起動した。
通信魔道具から叱責の声が響てくる、隠密の身としては声を下げて欲しいとフォードは渋面になる。
【ガガガ……貴様にどれほど投資したと思う!二度目はないからな……ガガガガ】
「お叱りはごもっともでございます、ドリアードの主が小僧だと侮りました。お詫びに花を数本送らせます」
花とは「女性」の隠語である、通信相手は無類の女好きナザルリーフ国第二王子ドナシアンことバカ王子だ。
【ガガガ……ふん、暇潰しにはなろう……だが猶予はないぞ、つぎの通信は吉報だと期待してやる……花が散る前になんとかせよ……ガガガ】
好き放題にが鳴りつけて王子は通信を切った。
ドガンと不愉快な音がしたので通信魔道具を壊したようだ。
「くそボケ王子め!一台いくらすると思っている、どっちが利用されてるか理解してない阿呆め!」
ナザルリーフ国は魔道具と魔導士の派遣などで国益を得ている、だが穀物が採れにくい土壌なのだ。
食糧のほとんどは他国頼りで、それを良しとしない現国王。
ドナシアン王子は豊穣を齎すドリアードに目をつけた。
ナザルリーフ側は豊かな土壌を持つ隣国カリュアスが憎らしくて仕方ない。
馬鹿なりに考えた王子は、ドリアード族の招致成功を褒美に王太子の座を願いでた。
国王は愚息の申し出を渋々受け入れた、期待半分であるのは目に見えて明らかだった。
ドリアード族を飼い殺しにしてるカリュアス国ではあるが、穏便に取引できるわけがないとナザルリーフ王は見越していた。
精霊との契約は簡単なものではないのだから。
***
「連れ去るのが無理ならば追い出せば良い」
フォードは不敵に嗤った、「替え」を与えれば良いのだと次の企てに奔走する。
じつに商人らしい考えである。
転移魔道具を発動させてフォードはとある荒れ地に向かう。
山深いそこには、ある精霊が隠棲しているフォードが言う「替え」である。
テリトリーに踏み込んですぐに、手下の小さなチェノム達が土塊をぶつけてフォードに嫌がらせをしてきた。
泥や石礫を避けながら彼は突き進む。
酷い時には大岩が降ってきた、辛うじて直撃は避けたが僅かに掠め右腕を骨折した。
最奥へ着いた頃には泥だらけでドロの人形のようになり、体中についた擦過傷から血を流していた。
巨大な洞穴の奥から不機嫌な唸り声が聞こえてきた。
フォードは恐怖と痛みに震えたが後に引けないと覚悟をする。
フードを目深に被り、認識疎外の魔道具を念入りに付けた人物。フォードである。
「成功していれば今頃……クソッ役立たずのアントンめ、昔のよしみで拾ってやろうと仲間にしたが、やはり劣等は劣等のままだった。ふん、期待した俺が悪いか」
襲撃の夜でさえアントンはなにもしていない、フォードに胡麻をするばかりで終わる。
ドリュアスの日課などを知らせた程度で、有能な執事とメイドの存在は一切伝えていない。
学生時代はバカがやれる仲間の一人として連れ歩いた。
当時のアントンは人身御供を受け入れたばかりで、国から褒章をたんまり貰っていた。
ようするに遊ぶ為の金蔓だった。頭が切れ仲間の中心だったフォードはアントンを重宝した、それを勘違いしたアントンは「無二の親友」と一方的に慕っていたのだ。
貧乏男爵の三男だったアントンの黄金時代だった。
フォードは昔の黒歴史を振り払うように頭をグルグル回す。
それから息を吐いて定時報告の為に魔道具を起動した。
通信魔道具から叱責の声が響てくる、隠密の身としては声を下げて欲しいとフォードは渋面になる。
【ガガガ……貴様にどれほど投資したと思う!二度目はないからな……ガガガガ】
「お叱りはごもっともでございます、ドリアードの主が小僧だと侮りました。お詫びに花を数本送らせます」
花とは「女性」の隠語である、通信相手は無類の女好きナザルリーフ国第二王子ドナシアンことバカ王子だ。
【ガガガ……ふん、暇潰しにはなろう……だが猶予はないぞ、つぎの通信は吉報だと期待してやる……花が散る前になんとかせよ……ガガガ】
好き放題にが鳴りつけて王子は通信を切った。
ドガンと不愉快な音がしたので通信魔道具を壊したようだ。
「くそボケ王子め!一台いくらすると思っている、どっちが利用されてるか理解してない阿呆め!」
ナザルリーフ国は魔道具と魔導士の派遣などで国益を得ている、だが穀物が採れにくい土壌なのだ。
食糧のほとんどは他国頼りで、それを良しとしない現国王。
ドナシアン王子は豊穣を齎すドリアードに目をつけた。
ナザルリーフ側は豊かな土壌を持つ隣国カリュアスが憎らしくて仕方ない。
馬鹿なりに考えた王子は、ドリアード族の招致成功を褒美に王太子の座を願いでた。
国王は愚息の申し出を渋々受け入れた、期待半分であるのは目に見えて明らかだった。
ドリアード族を飼い殺しにしてるカリュアス国ではあるが、穏便に取引できるわけがないとナザルリーフ王は見越していた。
精霊との契約は簡単なものではないのだから。
***
「連れ去るのが無理ならば追い出せば良い」
フォードは不敵に嗤った、「替え」を与えれば良いのだと次の企てに奔走する。
じつに商人らしい考えである。
転移魔道具を発動させてフォードはとある荒れ地に向かう。
山深いそこには、ある精霊が隠棲しているフォードが言う「替え」である。
テリトリーに踏み込んですぐに、手下の小さなチェノム達が土塊をぶつけてフォードに嫌がらせをしてきた。
泥や石礫を避けながら彼は突き進む。
酷い時には大岩が降ってきた、辛うじて直撃は避けたが僅かに掠め右腕を骨折した。
最奥へ着いた頃には泥だらけでドロの人形のようになり、体中についた擦過傷から血を流していた。
巨大な洞穴の奥から不機嫌な唸り声が聞こえてきた。
フォードは恐怖と痛みに震えたが後に引けないと覚悟をする。
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