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10 遅すぎた
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講堂から少し離れた庭園で、月明かりにふたつの影が浮かんだ。
夜風が吹いてザワザワと葉音が煩い。
「一体どういう魂胆なの?」
良くも悪くも、宴もたけなわとなった会場から攫われたナリレットは、目の前の人物を睨んだ。
掴まれた腕を弾き飛ばすように拒絶する。
袖をまくって見れば赤く手形が残っていて、ジンジンと不快な痛みにナリレットは顔を顰めた。
なのに、相手はとても傷がついたかのような表情だ。払われた手を悲しそうにみつめる。
乱暴なことをされた方はナリレットの方である。その勝手な様子に彼女の怒りが増して行く。
「なんとか言ったらどう、弁解もできないのかしら」
「……ご、ごめん。話をしたかっただけなんだ」
ナリレットはチラリと背後を確認する、いつの間にか護衛達が木陰に潜んで成り行きを見守っていた。
それを見て彼女は「ふぅ」と安堵の声を漏らして人物に向き合う。
「身分上の者への乱暴な言動は改めないのね。別に身分をどうこう主張はしたくはないけど、あなたの行動は目に余るし、結果、痛い目をみるのは貴方よ。覚悟してるのグラン」
「……あぁ」
彼女が許しても侯爵も世間も許さないと説くが、どこまで彼に響いたかわからない。
「それで?話とは何。早く戻りたいのだけど、きっとアリスターが心配しているわ」
動かないと約束を破った彼女は気が気ではない。
それを聞いたグランはグッと悔しそうに唇を噛んだが、ボソボソと用件を話し出した。
「いきなりですまない、俺はずっと……ずっとキミの事が好きで。どうしようもなくて、伝え方を間違えてばかりだった。」
「そう、知らなかった。でも聞きたくもない言葉だわ。小さな頃から意地悪されてばかりだったもの、良く言うわよね、苛めた方は忘れてしまうってね。大切にしてた髪飾りを壊されたあの日を生涯忘れないわ!」
ナリレットは後半の語気を強めて、グランに怒りをぶつけた。
子爵家から抗議するまで彼は謝ろうとしなかった、それが彼を許せない一因だった。
「ごめん、ほんとうにごめん。でも、でもキミの関心を向けさせるのに必死だった、だって誕生会のあの日からナーナはアリスターとばかり遊んでいただろう?髪飾りだってナーナが泣いて頼めばすぐ返すつもりだった、可愛いから構いたくて、こっちを俺だけを見ていて欲しかったんだ。それはいまでも変わらないしナーナが愛しい」
少し恨めしい言い方をするグランに『この人はどこまでも自己中心的なのだ』とナリレットは思う。
謝罪しながらも、ナリレットを非難する言葉を浴びせてくる彼に呆れていく。
「アリスターの家は子爵家の事業と大きく関わっているのよ、頻繁に顔を合わせるのは当たり前だわ。遊んでいたとはいえ相手は目上で上客だし接待の一部だったのよ、どうして理解しなかったの」
「す、少しくらい俺を見てくれても良かったじゃないか!寂しかったんだぞ」
「そう、私が悪いと言いたいのね?貴方と遊ばない私、意地悪されて予想通りに反応しない私。ぜんぶぜんぶ私が悪いと言いたいのね?……呆れた、傷つけらた私が好意を向けると思っていたの?バカにしないで!」
「ナーナ……お、俺は」
「気安く呼ばないで!なによその愛称呼びは、小さい頃から大嫌いだったわ!」
金切声のようなナリレットの拒絶の言葉がグランの心を大きく抉った。
夜風が吹いてザワザワと葉音が煩い。
「一体どういう魂胆なの?」
良くも悪くも、宴もたけなわとなった会場から攫われたナリレットは、目の前の人物を睨んだ。
掴まれた腕を弾き飛ばすように拒絶する。
袖をまくって見れば赤く手形が残っていて、ジンジンと不快な痛みにナリレットは顔を顰めた。
なのに、相手はとても傷がついたかのような表情だ。払われた手を悲しそうにみつめる。
乱暴なことをされた方はナリレットの方である。その勝手な様子に彼女の怒りが増して行く。
「なんとか言ったらどう、弁解もできないのかしら」
「……ご、ごめん。話をしたかっただけなんだ」
ナリレットはチラリと背後を確認する、いつの間にか護衛達が木陰に潜んで成り行きを見守っていた。
それを見て彼女は「ふぅ」と安堵の声を漏らして人物に向き合う。
「身分上の者への乱暴な言動は改めないのね。別に身分をどうこう主張はしたくはないけど、あなたの行動は目に余るし、結果、痛い目をみるのは貴方よ。覚悟してるのグラン」
「……あぁ」
彼女が許しても侯爵も世間も許さないと説くが、どこまで彼に響いたかわからない。
「それで?話とは何。早く戻りたいのだけど、きっとアリスターが心配しているわ」
動かないと約束を破った彼女は気が気ではない。
それを聞いたグランはグッと悔しそうに唇を噛んだが、ボソボソと用件を話し出した。
「いきなりですまない、俺はずっと……ずっとキミの事が好きで。どうしようもなくて、伝え方を間違えてばかりだった。」
「そう、知らなかった。でも聞きたくもない言葉だわ。小さな頃から意地悪されてばかりだったもの、良く言うわよね、苛めた方は忘れてしまうってね。大切にしてた髪飾りを壊されたあの日を生涯忘れないわ!」
ナリレットは後半の語気を強めて、グランに怒りをぶつけた。
子爵家から抗議するまで彼は謝ろうとしなかった、それが彼を許せない一因だった。
「ごめん、ほんとうにごめん。でも、でもキミの関心を向けさせるのに必死だった、だって誕生会のあの日からナーナはアリスターとばかり遊んでいただろう?髪飾りだってナーナが泣いて頼めばすぐ返すつもりだった、可愛いから構いたくて、こっちを俺だけを見ていて欲しかったんだ。それはいまでも変わらないしナーナが愛しい」
少し恨めしい言い方をするグランに『この人はどこまでも自己中心的なのだ』とナリレットは思う。
謝罪しながらも、ナリレットを非難する言葉を浴びせてくる彼に呆れていく。
「アリスターの家は子爵家の事業と大きく関わっているのよ、頻繁に顔を合わせるのは当たり前だわ。遊んでいたとはいえ相手は目上で上客だし接待の一部だったのよ、どうして理解しなかったの」
「す、少しくらい俺を見てくれても良かったじゃないか!寂しかったんだぞ」
「そう、私が悪いと言いたいのね?貴方と遊ばない私、意地悪されて予想通りに反応しない私。ぜんぶぜんぶ私が悪いと言いたいのね?……呆れた、傷つけらた私が好意を向けると思っていたの?バカにしないで!」
「ナーナ……お、俺は」
「気安く呼ばないで!なによその愛称呼びは、小さい頃から大嫌いだったわ!」
金切声のようなナリレットの拒絶の言葉がグランの心を大きく抉った。
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