完結 お貴族様、彼方の家の非常識など知りません。

音爽(ネソウ)

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劣情と後悔

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ジリジリと寄って来る二人に思わず後退していくエミリアだ。カツンと背後の棚にぶつかった。雑貨類の棚でケトルとコップが並んでいる。

すると青年の方が出入り口の施錠をしているのに気付く、開店直後の店内にはまだ従業員も来ていない。これは拙いと彼女は青褪めた。
「な、にを」
「何をだって?知れたことだ婚前交渉と行こうじゃないか」

青年の方がカツカツと歩いてきて舌なめずりをしてきた、早朝ということもありすっかり油断していた。彼女はガタタと音を立てて後方の在庫室へ行こうとした。だが、敵もそういう行動に出るとわかっていて直ぐに立ち塞がる。

「ダメだよ悪足掻きはね、腹をくくりなよすぐに良くなるから、俺だってお前みたいなガリペタなんて嫌だが仕方ないだろう?」
「ひぃ!気持ち悪い!出て行ってよ!」

気持ち悪いと言われたドミニクは傷ついた顔をする、見目だけは自信はあった彼は矜持を傷つけられたのだ。
「父上、ほんとうにしなきゃダメ?俺は傷ついたよ……」
「なにを言っているんだ!早くしろ、人の目がある店内だから効果があるんだろう!」
「うへぇ……萎えちゃう」

中々行動に出ない息子に苛立ったアンブラ卿は彼女の両手を縛り上げようと協力した。抵抗するエミリアに顔を引っ掛かれたアンブラ卿は「この娘!」と激高した。パシンと彼女の頬を殴りつける。

「この人でなし!死ね!死んじゃえ!」
「は、どうとでも叫べ」

胸元を開けさせドミニクをその気にさせようと手を伸ばす。その時、とあるブローチの存在に気が付いた。それにはとある紋章が刻まれていた。貴族ならば良く知ったものだ。

「あ、……王家の紋章!?どうしてこのような物が下町の商家に」
途端にガクブルと震え出した卿はその場にへたり込んだ、父親の急激な変化に戸惑いを隠せないドミニクはどうしたんだとエミリアの胸元を覗いた。

「拙いぞドミニク……わしらは破滅する!」
「え?何を大袈裟な……」

その時、ブローチから眩い光が発せられた、何が何だかわからないエミリアは眩しさに目を瞑る。そして、暫くしてから目をゆっくり開くと信じ難い光景を目にする。

「え……フレディ、いつの間に来たの?」
「やあ、エミリア。怪我はないかい?怖がらせて悪かったよ」
そこには騎士服を着た立派な青年然として彼が立っていた。

「王子……フレデリク王子!ああああ!もう御終いだ!」





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