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フレディの考え
しおりを挟む「よぉ、フレデリク。久しぶり」
「ああ、悪い兄貴。急に呼び出して」
頭が上がらないらしい兄に頭を掻いて挨拶する、その兄は上等な服を着こみ人目を気にしている。そんなだからフレディは敢えて薄汚いローブを被せてやる。
「おい、これは洗っているのだろうな?なんか臭いが……」
「贅沢言うなよ、それよりも」
「ああ、そうだった。これを渡しておく、父上は呆れていたぞ」
「うん、済まない。もうちょっとだけだからさ」
再び頭を掻いた彼は申し訳なさそうに頭垂れる、なにか秘密があるようだ。法改正まであと二日だ、それまで持ちそうもないと判断してそれを使おうとしている。
「上手くやれよ、彼女のためにも」
「ああ、そうするさ」
二人は拳を当て合い「じゃあな」と言い合って別れた、兄の方はちょっとばかり振り向いて「しょうのないヤツめ」と肩を竦めた。
***
「え、これを私に?どうして……」
怪訝な顔でひとつのブローチを眺めている、その品は古びていたが上等な品だとわかる。銀製で縁には青い小さな石がびっしりと着いていた。
「悪いけど受け取れない、とても高価なものでしょう?目利きはできるつもりよ」
「そう言わず!預かってくれるだけでも良いから付けてくれないか?」
「え~」
どうしてもと拝み倒すので仕方なく付けることにした。
「どうかな?あまり似合わないと思うけど」
「似合う似合わないの問題じゃないんだ!付けることに意味があるんだ!」
「へぇ……そうなんだ」
訝しむ彼女だが何か重大な意味があるというならば付けて歩こうと思った。胸に輝くブローチを確認した彼は満足そうに頷いている。
「いいかい、どこに行くにも必ず付けているんだ。きっと君を護ってくれるからね」
「え、うん。わかったわ」
それから数日、フレディは店に顔を出さなくなった。どうしてだろうと首を傾ぐエミリアである。
「なんの買い物もしなくとも足繁く通ってきてたのに……つまんない」
彼女はショーウインドウを掃除しながらブツクサと呟いていた。埃が隅に溜まっていてそれを掻き出そうとやっきになった。
カララン、と来客を報せる音がした。「いらっしゃいませ」と顔を上げれば招かれざる客が来ていた。
「……なんの御用かしら」
「何とはご挨拶だな、小娘よ」
アンブラ卿の背後には見知らに青年がニヤニヤしながらこちらを見ている。とても嫌な予感がした。
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