2 / 6
使えない役所
しおりを挟む1週間後にせまる法改正にエミリアは縋る、なんとかそれまでに逃げ切ろうとアンブラ家への返事をノラリクラリと先延ばしにしている。でもそれも限界だ。
店先で頭を抱えていると近頃常連になった客がニコニコしながらこう言った。
「ならば俺と結婚しちゃえば良いよ」
「なんですって?なにを考えているのフレディ!」
「悪い話じゃないと思うけど?なんなら3年間手を出さず白い結婚で離婚でもいいさ」
「で、でも……悪いわ」
彼女は返答に困ってどうしたものかと悩んでいる、相手の人生を軽く考えて”白い結婚”などと選択出来ずにいる。
「3年て長いわよ、フレディ」
「良いよ別に、それに気が変わって本当に夫婦になるかもしれないだろう?」
「まあ!なんて事いうの!」
彼女は顔を真っ赤にして抗議する、その反応を見たフレディは嬉しそうに微笑み「満更でもないじゃないか」と言う。
「どうする?嫌いなお貴族様に娶られるか、それとも俺と結婚しちゃうか」
「うう~どうしよう……」
結局、この提案に乗り意を決し婚姻届けを出しに行く、だが、ここが抜けているとかここの綴りがと難癖をつけてくる役所だ。こんな所にもアンブラ家の魔の手が入っていた金を握らせ受付ないようにと根回し済みなのだ。
「とにかく、この書類は受理できません」
「どうしてよ!完璧な書類のはずだわ!」
「……ここの箇所がダメです、書き直して二重線が引かれているでしょう?」
「そんなもの印鑑で」
ダメなものはダメだとけんもほろろな態度で職員は書類を突き返して来た。
「ぐぬ~どうあっても認めないつもりなんだわ!悔しい!」
彼女は苛立ち紛れにカフェで出されたハムエッグにぐさりとフォークを突き立てた。それからムシャムシャと咀嚼してパンを齧る。
「まぁまぁ、書類を書き直せばいいんだよ。今度こそ完璧にね」
「そうだけど……でも何か作為を感じたわ、やっぱりアンブラが関与しているとしか」
「ふむ……」
フレディは何事か考えパンを千切る、食べるわけでもなくただ細かくしているのだ。それを見たエミリアは「鳩にでもあげるの?」と首を傾げる。
107
お気に入りに追加
114
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】理不尽な婚約破棄に母親が激怒しました
紫崎 藍華
恋愛
突如告げられた婚約破棄。
クリスタはバートラムに完全に愛想を尽かした。
だが彼女の母親が怒り、慰謝料請求をしろと言い出したのだ。
クリスタは仕方なく慰謝料請求をした。
それが泥沼の始まりだった。
覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―
Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】従姉妹と婚約者と叔父さんがグルになり私を当主の座から追放し婚約破棄されましたが密かに嬉しいのは内緒です!
ジャン・幸田
恋愛
私マリーは伯爵当主の臨時代理をしていたけど、欲に駆られた叔父さんが、娘を使い婚約者を奪い婚約破棄と伯爵家からの追放を決行した!
でも私はそれでよかったのよ! なぜなら・・・家を守るよりも彼との愛を選んだから。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
婚約破棄が国を亡ぼす~愚かな王太子たちはそれに気づかなかったようで~
みやび
恋愛
冤罪で婚約破棄などする国の先などたかが知れている。
全くの無実で婚約を破棄された公爵令嬢。
それをあざ笑う人々。
そんな国が亡びるまでほとんど時間は要らなかった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
かつて私のお母様に婚約破棄を突き付けた国王陛下が倅と婚約して後ろ盾になれと脅してきました
お好み焼き
恋愛
私のお母様は学生時代に婚約破棄されました。当時王太子だった現国王陛下にです。その国王陛下が「リザベリーナ嬢。余の倅と婚約して後ろ盾になれ。これは王命である」と私に圧をかけてきました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】私の馬鹿な妹~婚約破棄を叫ばれた令嬢ですが、どうも一味違うようですわ~
鏑木 うりこ
恋愛
エリーゼ・カタリナ公爵令嬢は6歳の頃からこの国の王太子レオールと婚約をしていた。
「エリーゼ・カタリナ!お前との婚約を破棄し、代わりに妹のカレッタ・カタリナと新たに婚約を結ぶ!」
そう宣言されるも、どうもこの婚約破棄劇、裏がありまして……。
☆ゆるっとゆるいショートになります( *´艸`)ぷくー
☆ご都合主義なので( *´艸`)ぷくーと笑ってもらえたら嬉しいなと思います。
☆勢いで書きました( *´艸`)ぷくー
☆8000字程度で終わりますので、日曜日の暇でも潰れたら幸いです( *´艸`)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる