完結 お貴族様、彼方の家の非常識など知りません。

音爽(ネソウ)

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使えない役所

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1週間後にせまる法改正にエミリアは縋る、なんとかそれまでに逃げ切ろうとアンブラ家への返事をノラリクラリと先延ばしにしている。でもそれも限界だ。


店先で頭を抱えていると近頃常連になった客がニコニコしながらこう言った。
「ならば俺と結婚しちゃえば良いよ」
「なんですって?なにを考えているのフレディ!」
「悪い話じゃないと思うけど?なんなら3年間手を出さず白い結婚で離婚でもいいさ」
「で、でも……悪いわ」

彼女は返答に困ってどうしたものかと悩んでいる、相手の人生を軽く考えて”白い結婚”などと選択出来ずにいる。
「3年て長いわよ、フレディ」
「良いよ別に、それに気が変わって本当に夫婦になるかもしれないだろう?」
「まあ!なんて事いうの!」

彼女は顔を真っ赤にして抗議する、その反応を見たフレディは嬉しそうに微笑み「満更でもないじゃないか」と言う。
「どうする?嫌いなお貴族様に娶られるか、それとも俺と結婚しちゃうか」
「うう~どうしよう……」



結局、この提案に乗り意を決し婚姻届けを出しに行く、だが、ここが抜けているとかここの綴りがと難癖をつけてくる役所だ。こんな所にもアンブラ家の魔の手が入っていた金を握らせ受付ないようにと根回し済みなのだ。

「とにかく、この書類は受理できません」
「どうしてよ!完璧な書類のはずだわ!」
「……ここの箇所がダメです、書き直して二重線が引かれているでしょう?」
「そんなもの印鑑で」
ダメなものはダメだとけんもほろろな態度で職員は書類を突き返して来た。



「ぐぬ~どうあっても認めないつもりなんだわ!悔しい!」
彼女は苛立ち紛れにカフェで出されたハムエッグにぐさりとフォークを突き立てた。それからムシャムシャと咀嚼してパンを齧る。

「まぁまぁ、書類を書き直せばいいんだよ。今度こそ完璧にね」
「そうだけど……でも何か作為を感じたわ、やっぱりアンブラが関与しているとしか」
「ふむ……」

フレディは何事か考えパンを千切る、食べるわけでもなくただ細かくしているのだ。それを見たエミリアは「鳩にでもあげるの?」と首を傾げる。




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