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大帝国バイエンスベルヘン

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大帝国バイエンスベルヘンは各国から側室となる姫君を呼び寄せた。大概は人質として召還するためである。年季は最長5年でそれを過ぎれば国元へ返される。そんなだから年齢はバラバラであり最年少の娘はわずか8歳だ。

そこで良からぬ噂が立つ、『皇太子はロリコンだ』と……

「冗談ではない!私はそのような趣味は持ち合わせていないぞ!」
「まぁまぁ、マテイ様。人の噂など75日と言いますから」
「そんなに待てるか!」

プリプリと怒る皇太子は各国から集められた妃殿下たちの写真に目を通す。その中にひと際美しい姿を発見した。
「こ、この女性は」
「ああ、アペキャール国の姫君ですね、予定では第二側室になる方です」
すると銀髪を振り乱した皇太子は「この人を正妃に迎える」と宣ったのだ。

いきなりの指名に面食らう側近バスチアンであったが正妃を選ばずにいたこともあり一つ返事で「おめでとうございます、すぐに対処いたします」と答えた。



選ばれた正妃クロエファニー・アペキャールは良い顔をしなかった、それは皇太子が恐ろしい相貌であると聞いていたからだ。実際会ってみると瓜実の顔は酷く冷たい印象で”氷の貴公子”と呼ばれるに相応しいと思ってしまう。体躯も大きく逞しい為どこか厳つさも感じる。

終始無表情でジッと見つめてくることが苦手だと彼女は思った。だが、それは『美しい』と見惚れているだけなのだが如何せん緊張から言葉が足りず、視線でもって相手を威嚇してしまうのだ。

「は、初めまして……クロエファニー・アペキャールと申します」
「違う!其方は我が国に嫁いだのだ、バイエンスベルヘンと名乗るが良い!わかったか!」
「ひぃ!申し訳ございません!」


さっそくと威嚇してしまった皇太子は「しまった!」と言った。
「いつものように大臣らを睨むようにやってしまった!ああああ!悪い癖がぁ!」
自らの手で頭をゴチゴチと殴り「この大馬鹿野郎が!」と己を罵る、呆れるバスチアンはどうしようもないなと肩を竦める。



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