17 / 18
16
しおりを挟む「ドリアードめ!大人しく捕縛されるが良い、そして役に立つのだ。私の手駒としてな!ハハハハッ!」
そう宣うアンセル王子は恋人であるシャリー・ロズランドを呼び寄せ「これで全て大丈夫だ」と言って侍らせた。
「ふふ、お姉ちゃん。良い恰好だわ、いつも私を見下していた同一人物とは思えないわ」
柊の檻に入れられたかのようなサラジーヌの状態を、嘲け笑う妹は憎たらしい顔をする。
「あぁ、どうして人族はこうも無知なのだろう」
サラジーヌは嘆くように頭を横に振ると体を緑色に輝かせた、その姿は神々しく、そこに居合わせた者に魅せ付ける。
「お、お姉ちゃん……今さら足掻いたところで」
「足掻く?何を言っているのかしら、脳内花畑の貴女のいう事は理解できないわ」
「んな!失礼ね、私は」
妹が何か言い訳をする前に、彼女は再び光り輝くと柊の檻にその手を翳し墨色に変色させて破壊した。瞬く間に炭化したそれは粉塵となり消えてしまう。
「どうお?柊の命を奪ってあげたわ、吸い上げたと言う感じかしら見るも無残ね。可哀そうに」
塵を掃うサラジーヌを見た王子は信じられないものを見たとばかりの瞠目して震える。
「そんなバカな!柊の葉はドリアードの唯一の弱点で……触れれば弱体化してしまうと」
「あら、そんな古い伝承を信じていたの?私の先祖がそんな欠点をいつまでも放置するわけがないわ。人間が地に蔓延る以前から命を繋いで生きているのよ、克服するに決まっているじゃない」
不敵に笑うサラジーヌは自慢の蔦鞭を大きく膨らませると威嚇してみせた。それは大木のように太く、長く、無数の棘を生やしている。
「ひ、ひぃ!化物が!」
腰を抜かして喚き散らす王子は最後のプライドを見せて「エメリアンがどうなっても良いのか!」と脅してきた。それを聞いた彼女は蔦を大蛇のように戸愚呂を巻くとクスリと笑う。
「な、何が可笑しい!私の意一つでエメリアンは命を狩られるのだぞ!わかっているのか!」
「ふう……良く吠えること、煩くて敵わないわ。ねぇエメリ?」
「え?」
すると戸愚呂が巻かれた箇所がゆっくりと開くとエメリが微笑みながら出てきて「あぁ、外は素晴らしいな」と言った。サラジーヌはとうの昔に彼の行方を探り、地下牢に閉じ込められていた所を救っていたのだ。
「な、な……なんで!どうしてお前がそこにいる!」
「わからないの?おバカさん。土さえあれば私はどこにでも根を張って状況を把握できるのよ」
彼女はそう言うと愛しそうにエメリに柔らかな蔦で擦り寄った。
「ふふ、擽ったいよサラ、とても嬉しいけれどね」
「愛しているわエメリ、こんな私は怖い?」
「いいや、益々惚れたね。ボクの恋人はパーフェクト過ぎる」
333
お気に入りに追加
291
あなたにおすすめの小説

無実の罪で聖女を追放した、王太子と国民のその後
柚木ゆず
恋愛
※6月30日本編完結いたしました。7月1日より番外編を投稿させていただきます。
聖女の祈りによって1000年以上豊作が続き、豊穣の国と呼ばれているザネラスエアル。そんなザネラスエアルは突如不作に襲われ、王太子グスターヴや国民たちは現聖女ビアンカが祈りを怠けたせいだと憤慨します。
ビアンカは否定したものの訴えが聞き入れられることはなく、聖女の資格剥奪と国外への追放が決定。彼女はまるで見世物のように大勢の前で連行され、国民から沢山の暴言と石をぶつけられながら、隣国に追放されてしまいました。
そうしてその後ザネラスエアルでは新たな聖女が誕生し、グスターヴや国民たちは『これで豊作が戻ってくる!』と喜んでいました。
ですが、これからやって来るのはそういったものではなく――

私を捨てた元婚約者が、一年後にプロポーズをしてきました
柚木ゆず
恋愛
魅力を全く感じなくなった。運命の人ではなかった。お前と一緒にいる価値はない。
かつて一目惚れをした婚約者のクリステルに飽き、理不尽に関係を絶った伯爵令息・クロード。
それから1年後。そんな彼は再びクリステルの前に現れ、「あれは勘違いだった」「僕達は運命の赤い糸で繋がってたんだ」「結婚してくれ」と言い出したのでした。

婚約者と妹が運命的な恋をしたそうなので、お望み通り2人で過ごせるように別れることにしました
柚木ゆず
恋愛
※4月3日、本編完結いたしました。4月5日(恐らく夕方ごろ)より、番外編の投稿を始めさせていただきます。
「ヴィクトリア。君との婚約を白紙にしたい」
「おねぇちゃん。実はオスカーさんの運命の人だった、妹のメリッサです……っ」
私の婚約者オスカーは真に愛すべき人を見つけたそうなので、妹のメリッサと結婚できるように婚約を解消してあげることにしました。
そうして2人は呆れる私の前でイチャイチャしたあと、同棲を宣言。幸せな毎日になると喜びながら、仲良く去っていきました。
でも――。そんな毎日になるとは、思わない。
2人はとある理由で、いずれ婚約を解消することになる。
私は破局を確信しながら、元婚約者と妹が乗る馬車を眺めたのでした。

他の人を好きになったあなたを、私は愛することができません
天宮有
恋愛
公爵令嬢の私シーラの婚約者レヴォク第二王子が、伯爵令嬢ソフィーを好きになった。
第三王子ゼロアから聞いていたけど、私はレヴォクを信じてしまった。
その結果レヴォクに協力した国王に冤罪をかけられて、私は婚約破棄と国外追放を言い渡されてしまう。
追放された私は他国に行き、数日後ゼロアと再会する。
ゼロアは私を追放した国王を嫌い、国を捨てたようだ。
私はゼロアと新しい生活を送って――元婚約者レヴォクは、後悔することとなる。

お姉様。ずっと隠していたことをお伝えしますね ~私は不幸ではなく幸せですよ~
柚木ゆず
恋愛
今日は私が、ラファオール伯爵家に嫁ぐ日。ついにハーオット子爵邸を出られる時が訪れましたので、これまで隠していたことをお伝えします。
お姉様たちは私を苦しめるために、私が苦手にしていたクロード様と政略結婚をさせましたよね?
ですがそれは大きな間違いで、私はずっとクロード様のことが――

家が没落した時私を見放した幼馴染が今更すり寄ってきた
今川幸乃
恋愛
名門貴族ターナー公爵家のベティには、アレクという幼馴染がいた。
二人は互いに「将来結婚したい」と言うほどの仲良しだったが、ある時ターナー家は陰謀により潰されてしまう。
ベティはアレクに助けを求めたが「罪人とは仲良く出来ない」とあしらわれてしまった。
その後大貴族スコット家の養女になったベティはようやく幸せな暮らしを手に入れた。
が、彼女の前に再びアレクが現れる。
どうやらアレクには困りごとがあるらしかったが…

わたし、何度も忠告しましたよね?
柚木ゆず
恋愛
ザユテイワ侯爵令嬢ミシェル様と、その取り巻きのおふたりへ。わたしはこれまで何をされてもやり返すことはなく、その代わりに何度も苦言を呈してきましたよね?
……残念です。
貴方がたに優しくする時間は、もうお仕舞です。
※申し訳ございません。体調不良によりお返事をできる余裕がなくなっておりまして、日曜日ごろ(24日ごろ)まで感想欄を閉じさせていただきます。

お前なんかに会いにくることは二度とない。そう言って去った元婚約者が、1年後に泣き付いてきました
柚木ゆず
恋愛
侯爵令嬢のファスティーヌ様が自分に好意を抱いていたと知り、即座に私との婚約を解消した伯爵令息のガエル様。
そんなガエル様は「お前なんかに会いに来ることは2度とない」と仰り去っていったのですが、それから1年後。ある日突然、私を訪ねてきました。
しかも、なにやら必死ですね。ファスティーヌ様と、何かあったのでしょうか……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる