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しおりを挟む声高に「本物は妹のシャリーだ」と宣った王子を侮蔑の目で見据えるサラジーヌは、馬鹿馬鹿しくて付き合いきれないと判断した。
「そうですか、では破棄で結構。さようなら」
そう言って腰を折り出口に向かうサラジーヌだったが、王子は「待て!」と言って行く手を阻もうとする。王子の命令で動いた騎士たちがワラワラと彼女の前に立ち塞がった。
「騎士ども!その女を捕縛しろ、ドリアードの血を引く者と騙った大罪人である!」
その言葉に反応した騎士達は一斉にサラジーヌへ剣を向ける。皆の目は「間違ってなどいない敵はあの女」と語っていた。
「はぁ……やれやれ愚か者共が」
彼女は居住まいを正すと手を振り上げて、蔦をいくつも出し「ごめんあそばせ」と言って騎士団を往なした。不意を突かれた騎士達は、大きな蔦鞭を身体に受けて声を上げることも出来ずに失神した。
「な、なにぃ!?蔦が生えただと?信じられん……」
王子はその場にヘタリ込み「嘘だろ」と呟く、その技こそがドリアードのものだったのだから。それからギギギッと音が出そうな振り向き方でシャリーの方を見た。
「シャリー、お前……俺を謀ったのか?あれは伝承に聞くドリアードの大技だぞ、逆鱗に触れた時に出すという蔦鞭なんだぞ!」
「し、知りません!私は……そうよ、そうですアレは悪魔の所業です!姉は悪魔になったのだわ!」
「悪魔だと?……確かにあれは禍々しくも見えるが」
大きな蔦鞭は黒々としており、幾本もの蔦が蠢いている、良く見れば無数の棘までが生えていた。悪魔の所業だと言われれば「そうなのか」と納得してしまいそうだ。
「彼女は悪魔なのだな?どうなのだシャリー!」
「そうです!悪魔なのですわ!間違いございません!」
シャリーは金切声を上げてそう言い切った。
「はぁ、やれここまで無知で愚かとは……呆れましたよ。アホ王子、もう後には引けない。私の敵は王国です」
「アホだと!おのれ悪魔め悪態までつくとは赦し難し!」
アホ王子は腰に佩いた剣の柄に手をやると「たぁー!成敗してくれる」と叫んでサラジーヌへ切っ先を向ける。
だが、それは彼女の身体に食い込む前にアッサリと弾かれた。王子は剣は飛ばされたことも気づかずにマヌケにも空を斬る。そして「どうだ!悪魔め!」とやっている。
無駄な時間だったとサラジーヌは呟くと会場の壁を穿って去って行く。後に残ったのは大きな瓦礫の山と阿呆面をした王族と貴族の顔だけだった。
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