31 / 32
終戦
しおりを挟む
「あと10年後だったらどうなってたかしらね」
勝利したゼベール海域より、帝国側へ転移してきたハウラナが海原に停泊する船を眺めて言う。
大小合わせて50隻はある大艦隊は、時代が違えば脅威だったろう。
「あそこから砲弾が届くほどに改良されていたら……恐ろしいな」クレイブが眉を片方下げた。
「ええ、夜襲なんかされたら夢心地で天国へ逝けたわね」
呑気にブランデーを落とした紅茶を飲みながら、パウンドケーキを食むハウラナである。
「ラナサマ コウチャノオカワリハ イカガデスカ?」傀儡メイドのミーニャが声をかけた。
「ええ、ありがとう。次はレモンと蜂蜜でお願いね」
「カシコマリマシタ」
つい先ほどイースレッドから使者がやってきて、降参の旨を受け取ったところだ。
いまや、遠く待機している艦隊全体から白い旗が幾枚も掲げられ海風に煽られている。
「無駄な事をしたわね、最初から喧嘩を売らなければいいのに……ねぇ、おかしいわよね?」
ハウラナはケーキに入っていたレーズンとクルミの食感に頬を緩ませて言う。
「あ、ああそうだな」
どこか歯切れの悪いクレイブ。
「敗戦国としての矜持を見せたかったのだろう?一応軍国家だからな」
「はぁ~国民を戦の犠牲にするバカが頭では先が知れるわね、いっそ造船技術だけ残して国を消しちゃったほうが良くない?帝国で吸収しちゃってよ」
空恐ろしいことをいうハウラナに、クレイブは紅茶で咽った。
「ゲッホ!ば、バカ!国盗りはそんな簡単ではないぞ!同盟国たちから避難がくる、いくら帝国といえ独裁政権は嫌われる、世界大戦に発展したら面倒だろ」
「ちゃっちゃと3国を潰したクレイブがそれ言うの?」
「あれも向こうが仕掛けた戦争だったから、ちょっと暴れただけだ。小国だったから問題なかったが、今回は軍大国で懇意してる国も多い単純じゃないんだ。イースレッドの造船技術はそれほど価値が高い」
なんだツマラナイとハウラナはそっぽを向いた。
彼女はレーネに牙を剥かれたことに、かなり苛立っているのだ。
それと……
「白状なさいなクレイブ、あなたイースレッドの王族の脳みそに干渉したでしょ?」
「……」
無言で肯定したクレイブに、ハウラナは「やっぱり、可笑しいと思った」と肩を竦めた。
負けが決まっていた戦争をイースレッドから仕掛けたことに疑問を持っていたのだ。
帝国がまんまと戦艦を手に入れたことには言及しない。
「まぁいいわ、それなりに報復したから」
そう言ってハウラナは3杯目の紅茶を口にした。
勝利したゼベール海域より、帝国側へ転移してきたハウラナが海原に停泊する船を眺めて言う。
大小合わせて50隻はある大艦隊は、時代が違えば脅威だったろう。
「あそこから砲弾が届くほどに改良されていたら……恐ろしいな」クレイブが眉を片方下げた。
「ええ、夜襲なんかされたら夢心地で天国へ逝けたわね」
呑気にブランデーを落とした紅茶を飲みながら、パウンドケーキを食むハウラナである。
「ラナサマ コウチャノオカワリハ イカガデスカ?」傀儡メイドのミーニャが声をかけた。
「ええ、ありがとう。次はレモンと蜂蜜でお願いね」
「カシコマリマシタ」
つい先ほどイースレッドから使者がやってきて、降参の旨を受け取ったところだ。
いまや、遠く待機している艦隊全体から白い旗が幾枚も掲げられ海風に煽られている。
「無駄な事をしたわね、最初から喧嘩を売らなければいいのに……ねぇ、おかしいわよね?」
ハウラナはケーキに入っていたレーズンとクルミの食感に頬を緩ませて言う。
「あ、ああそうだな」
どこか歯切れの悪いクレイブ。
「敗戦国としての矜持を見せたかったのだろう?一応軍国家だからな」
「はぁ~国民を戦の犠牲にするバカが頭では先が知れるわね、いっそ造船技術だけ残して国を消しちゃったほうが良くない?帝国で吸収しちゃってよ」
空恐ろしいことをいうハウラナに、クレイブは紅茶で咽った。
「ゲッホ!ば、バカ!国盗りはそんな簡単ではないぞ!同盟国たちから避難がくる、いくら帝国といえ独裁政権は嫌われる、世界大戦に発展したら面倒だろ」
「ちゃっちゃと3国を潰したクレイブがそれ言うの?」
「あれも向こうが仕掛けた戦争だったから、ちょっと暴れただけだ。小国だったから問題なかったが、今回は軍大国で懇意してる国も多い単純じゃないんだ。イースレッドの造船技術はそれほど価値が高い」
なんだツマラナイとハウラナはそっぽを向いた。
彼女はレーネに牙を剥かれたことに、かなり苛立っているのだ。
それと……
「白状なさいなクレイブ、あなたイースレッドの王族の脳みそに干渉したでしょ?」
「……」
無言で肯定したクレイブに、ハウラナは「やっぱり、可笑しいと思った」と肩を竦めた。
負けが決まっていた戦争をイースレッドから仕掛けたことに疑問を持っていたのだ。
帝国がまんまと戦艦を手に入れたことには言及しない。
「まぁいいわ、それなりに報復したから」
そう言ってハウラナは3杯目の紅茶を口にした。
24
お気に入りに追加
156
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
虐げられた令嬢、ペネロペの場合
キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。
幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。
父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。
まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。
可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。
1話完結のショートショートです。
虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい……
という願望から生まれたお話です。
ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
R15は念のため。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
チート魔法の魔導書
フルーツパフェ
ファンタジー
魔導士が魔法の研究成果を書き残した書物、魔導書――そこに書かれる専属魔法は驚異的な能力を発揮し、《所有者(ホルダー)》に莫大な地位と財産を保証した。
ダクライア公国のグラーデン騎士学校に通うラスタ=オキシマは騎士科の中で最高の魔力を持ちながら、《所有者》でないために卒業後の進路も定まらない日々を送る。
そんなラスタはある日、三年前に他界した祖父の家で『チート魔法の魔導書』と題された書物を発見する。自らを異世界の出身と語っていた風変わりな祖父が書き残した魔法とは何なのか? 半信半疑で書物を持ち帰るラスタだが、彼を待ち受けていたのは・・・・・・
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
前世では伝説の魔法使いと呼ばれていた子爵令嬢です。今度こそのんびり恋に生きようと思っていたら、魔王が復活して世界が混沌に包まれてしまいました
柚木ゆず
ファンタジー
――次の人生では恋をしたい!!――
前世でわたしは10歳から100歳になるまでずっと魔法の研究と開発に夢中になっていて、他のことは一切なにもしなかった。
100歳になってようやくソレに気付いて、ちょっと後悔をし始めて――。『他の人はどんな人生を過ごしてきたのかしら?』と思い妹に会いに行って話を聞いているうちに、わたしも『恋』をしたくなったの。
だから転生魔法を作ってクリスチアーヌという子爵令嬢に生まれ変わって第2の人生を始め、やがて好きな人ができて、なんとその人と婚約をできるようになったのでした。
――妹は婚約と結婚をしてから更に人生が薔薇色になったって言っていた。薔薇色の日々って、どんなものなのかしら――。
婚約を交わしたわたしはワクワクしていた、のだけれど……。そんな時突然『魔王』が復活して、この世が混沌に包まれてしまったのでした……。
((魔王なんかがいたら、落ち着いて過ごせないじゃないのよ! 邪魔をする者は、誰であろうと許さない。大好きな人と薔薇色の日々を過ごすために、これからアンタを討ちにいくわ……!!))
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
側妃に追放された王太子
基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」
正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。
そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。
王の代理が側妃など異例の出来事だ。
「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」
王太子は息を吐いた。
「それが国のためなら」
貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。
無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
絞首刑まっしぐらの『醜い悪役令嬢』が『美しい聖女』と呼ばれるようになるまでの24時間
夕景あき
ファンタジー
ガリガリに痩せて肌も髪もボロボロの『醜い悪役令嬢』と呼ばれたオリビアは、ある日婚約者であるトムス王子と義妹のアイラの会話を聞いてしまう。義妹はオリビアが放火犯だとトムス王子に訴え、トムス王子はそれを信じオリビアを明日の卒業パーティーで断罪して婚約破棄するという。
卒業パーティーまで、残り時間は24時間!!
果たしてオリビアは放火犯の冤罪で断罪され絞首刑となる運命から、逃れることが出来るのか!?
隣国は魔法世界
各務みづほ
ファンタジー
【魔法なんてあり得ないーー理系女子ライサ、魔法世界へ行く】
隣接する二つの国、科学技術の発達した国と、魔法使いの住む国。
この相反する二つの世界は、古来より敵対し、戦争を繰り返し、そして領土を分断した後に現在休戦していた。
科学世界メルレーン王国の少女ライサは、人々の間で禁断とされているこの境界の壁を越え、隣国の魔法世界オスフォード王国に足を踏み入れる。
それは再び始まる戦乱の幕開けであった。
⚫︎恋愛要素ありの王国ファンタジーです。科学vs魔法。三部構成で、第一部は冒険編から始まります。
⚫︎異世界ですが転生、転移ではありません。
⚫︎挿絵のあるお話に◆をつけています。
⚫︎外伝「隣国は科学世界 ー隣国は魔法世界 another storyー」もよろしくお願いいたします。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
聖女なんて御免です
章槻雅希
ファンタジー
「聖女様」
「聖女ではありません! 回復術師ですわ!!」
辺境の地ではそんな会話が繰り返されている。治癒・回復術師のアルセリナは聖女と呼ばれるたびに否定し訂正する。そう、何度も何十度も何百度も何千度も。
聖女断罪ものを読んでて思いついた小ネタ。
軽度のざまぁというか、自業自得の没落があります。
『小説家になろう』様・『Pixiv』様に重複投稿。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる