頭が花畑の女と言われたので、その通り花畑に住むことにしました。

音爽(ネソウ)

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負け戦

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――イースレッド側、帝国沖合。



先手必勝とばかりに強行軍を派遣した直後の事である。
開戦中とあり王族と官僚たちは大艦内の大会議室で地図を広げ戦況を確認していた。

惨劇は悲鳴を上げる暇もなかった。
協議に参加していたレーネは、突然降って来た矢雨に成す術もなく打たれた。


壁には穿たれた無数の矢、尻餅をついた兄の横でレーネは目を見開き像のようにかたまっていた。
明らかにレーネ中心に放たれた矢が、彼女の頬に不自然な矢傷を残した。

両頬に深く付いた十字傷と頭頂部の頭皮が削られていた。
ジワジワ流れた血が徐々に彼女を赤く染めていく、決して致命傷ではないが女性としての命は消えたようなものだ。

完治したとて顔には惨い傷跡が残る、しかも河童ハゲ不可避である。

「あ$!ぎゃっ@ずばえれほああああぺげ§Πωやぎぇお!」
言葉にならない悲鳴を上げてレーネは気を失った。



傷を負った妹を軍の医療室へ送った兄は、会議室の惨状を見回す。

「この矢は我が軍のものではないか!どういうことだ、謀反者がいるというのか!?」
レーネの兄ルードが壁からに矢を引き抜いて怒りの声をあげた。


「お待ちください、先ほどの攻撃は空間から突然放たれたように見えます、その証拠に窓は開かれてもおらず破壊もされておりません」

「な!まさかこれがハウラナとかいう王女の能力なのか!?クソッ魔法国めわけのわからん攻撃を!艦隊をあずけた将軍はなにをやっているのだ!まさか最新の船を使いこなせんのか!」

「おそれながら王太子殿下。大船は暗礁に乗り上げる危険があります、いくら破壊力がある砲撃であっても届かなければ威嚇にしかなりません……」


ルードが目を剥いて、進言した官僚を睨む。

「心血を注いで造船した大艦が役に立たないだと!いくら投資したと思っている!」
「あ、あくまで海戦用の船であります、陸に向けての砲弾は開発が追い付きませんでした」

その言葉に歯噛みするルード、対ゼベールにと向かわせた艦隊が無能だと聞いて怒りに震えた。
その時、大人しくしていた王が口を開いた。

「だから言ったであろうが……ふへへ、帝国と魔法国に勝てるわけがないのだ……我が国の強みは攻撃にあらず。防衛特化の大艦隊なのだ。我が国は各国に船を売り利益を上げてきたが、それだけなのだ。」

「ならばもっと開発を!」

「さきに官僚が言ったろう技術が追い付かんと……金と資材とて無限ではない、まだわからんのかルード……偵察が失敗に終わった時、我が国に未来はなかった終わったのだ、余が攻撃を許したのはただの虚勢と悪あがきだ。余がなぜ居城から出たと思う?あそこにいても籠城戦になるだけだからだ……ふははは……っ余は愛した海と船を棺に選び死ぬ覚悟をしたまでよ」


父王の言葉を聞いたルードはとうとう頽れた。

そのタイミングでゼベールに派遣した艦隊が全滅したと報告が届く。
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