頭が花畑の女と言われたので、その通り花畑に住むことにしました。

音爽(ネソウ)

文字の大きさ
上 下
8 / 32

いざ花畑へ

しおりを挟む
「今回の術は魔力を多く使うから、出入り口は小さめにしなきゃ」
ブツブツと独り言をいう主に、ミーニャは頭を傾げてキョトリとしていた。


手伝うことは何もないと言われたので、お茶の用意をすることにした。
ミーニャは亜空間ボックスをまさぐり、切らしてしまった茶葉はないかと手を伸ばす。


すると手の平に三角形のようなものが乗った、というか乗って来た。
「ナンデショウカ?」


黄色い何かがわからないミーニャは取り合えずテーブルへ置いた。
再びまさぐると今度は丸くて軽い何かが乗る。

「???????」
「どうしたのミーニャ?ん、甘い香りがするわね」


ハウラナはミーニャの陰になっていたテーブルの上を覗いて驚嘆の声をあげた。

「まぁ!チーズケーキとシュークリーム!大好物よ!」
「ラナサマ、アナカラデテキマシタ。チャバガナイデス」

ミーニャは茶葉を探したようだが、意図せず違うものが出てきて困惑中だった。


人の頭くらいの亜空間の穴を指してミーニャが困っていた。

「あぁ、なるほど。バタック料理長が悪戯したのね!私がご飯をくすねてるのがばれちゃった!」
フフフと面白うそうに笑う主に釣られてミーニャもぎこちなく笑う。


人形のミーニャには食べられないが、美味しいものだという事を理解した。

「ラナサマ、アマイガスキ」
「そうよ、一緒に食べられたら楽しいのに……、うーん、これは迅速に貴女を改良せねばならないわね!」
「????」



「まぁそれはさて置き、お茶を向こう側で楽しもうと思うの!トレイに乗せて持っていきましょ」
「カシコマリマシタ」


一見なんの変哲もない壁をハウラナは躊躇いなく突進した。
「ラナサマ!?」
「だいじょうぶ、見てて!」

壁に溶け込むようにハウラナは通り抜けて姿を消した。ミーニャは壁に主は食われたと思って大騒ぎする。



「ラナサマ!ラナサマ!コワイデス、ラナサマ!」
「はいはい、ここですよー!」

にゅっと壁から腕だけが出てきて、ミーニャへ向けてコッチおいでと手招きしてくる。
ミーニャはおずおずと壁際に立ってハウラナの腕らしきを掴んだ。


「ア!?」
ミーニャも壁をすり抜け、驚いた拍子に転げそうになったがハウラナが抱きしめて止めた。


「私の花畑へようこそ!」
「ラナサマノ、ハナバタケ……スゴイデス。カベノナカニ、ニワガアリマス。リカイデキマセン」

「だよね、ごめんね。私の空間魔法なの、後宮と外を繋げてみたのよ。ここはね私が育てて管理してきたゼベール国の花園なの、素敵でしょ?許可した者しか入れないから安全よ」


「キレイデス、スゴイデス、リカイデキナイデス!」
「あははっ」


ハウラナの花園は季節関係なく様々な花が咲き乱れていた。
チェリーブロッサムが咲き乱れる下には、コスモスが揺れている。

人形のミーニャでなくても理解不能な景色だった。

「アオイハナ、ワタシトオナジイロ」
「そうね、ネモフィラというの。絨毯のように広がって凄いでしょ!」

「スゴイ、ネモフィラ。ウツクシイデス」






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

虐げられた令嬢、ペネロペの場合

キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。 幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。 父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。 まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。 可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。 1話完結のショートショートです。 虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい…… という願望から生まれたお話です。 ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。 R15は念のため。

チート魔法の魔導書

フルーツパフェ
ファンタジー
 魔導士が魔法の研究成果を書き残した書物、魔導書――そこに書かれる専属魔法は驚異的な能力を発揮し、《所有者(ホルダー)》に莫大な地位と財産を保証した。  ダクライア公国のグラーデン騎士学校に通うラスタ=オキシマは騎士科の中で最高の魔力を持ちながら、《所有者》でないために卒業後の進路も定まらない日々を送る。  そんなラスタはある日、三年前に他界した祖父の家で『チート魔法の魔導書』と題された書物を発見する。自らを異世界の出身と語っていた風変わりな祖父が書き残した魔法とは何なのか? 半信半疑で書物を持ち帰るラスタだが、彼を待ち受けていたのは・・・・・・

前世では伝説の魔法使いと呼ばれていた子爵令嬢です。今度こそのんびり恋に生きようと思っていたら、魔王が復活して世界が混沌に包まれてしまいました

柚木ゆず
ファンタジー
 ――次の人生では恋をしたい!!――  前世でわたしは10歳から100歳になるまでずっと魔法の研究と開発に夢中になっていて、他のことは一切なにもしなかった。  100歳になってようやくソレに気付いて、ちょっと後悔をし始めて――。『他の人はどんな人生を過ごしてきたのかしら?』と思い妹に会いに行って話を聞いているうちに、わたしも『恋』をしたくなったの。  だから転生魔法を作ってクリスチアーヌという子爵令嬢に生まれ変わって第2の人生を始め、やがて好きな人ができて、なんとその人と婚約をできるようになったのでした。  ――妹は婚約と結婚をしてから更に人生が薔薇色になったって言っていた。薔薇色の日々って、どんなものなのかしら――。  婚約を交わしたわたしはワクワクしていた、のだけれど……。そんな時突然『魔王』が復活して、この世が混沌に包まれてしまったのでした……。 ((魔王なんかがいたら、落ち着いて過ごせないじゃないのよ! 邪魔をする者は、誰であろうと許さない。大好きな人と薔薇色の日々を過ごすために、これからアンタを討ちにいくわ……!!))

お爺様の贈り物

豆狸
ファンタジー
お爺様、素晴らしい贈り物を本当にありがとうございました。

側妃に追放された王太子

基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」 正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。 そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。 王の代理が側妃など異例の出来事だ。 「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」 王太子は息を吐いた。 「それが国のためなら」 貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。 無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。

絞首刑まっしぐらの『醜い悪役令嬢』が『美しい聖女』と呼ばれるようになるまでの24時間

夕景あき
ファンタジー
ガリガリに痩せて肌も髪もボロボロの『醜い悪役令嬢』と呼ばれたオリビアは、ある日婚約者であるトムス王子と義妹のアイラの会話を聞いてしまう。義妹はオリビアが放火犯だとトムス王子に訴え、トムス王子はそれを信じオリビアを明日の卒業パーティーで断罪して婚約破棄するという。 卒業パーティーまで、残り時間は24時間!! 果たしてオリビアは放火犯の冤罪で断罪され絞首刑となる運命から、逃れることが出来るのか!?

隣国は魔法世界

各務みづほ
ファンタジー
【魔法なんてあり得ないーー理系女子ライサ、魔法世界へ行く】 隣接する二つの国、科学技術の発達した国と、魔法使いの住む国。 この相反する二つの世界は、古来より敵対し、戦争を繰り返し、そして領土を分断した後に現在休戦していた。 科学世界メルレーン王国の少女ライサは、人々の間で禁断とされているこの境界の壁を越え、隣国の魔法世界オスフォード王国に足を踏み入れる。 それは再び始まる戦乱の幕開けであった。 ⚫︎恋愛要素ありの王国ファンタジーです。科学vs魔法。三部構成で、第一部は冒険編から始まります。 ⚫︎異世界ですが転生、転移ではありません。 ⚫︎挿絵のあるお話に◆をつけています。 ⚫︎外伝「隣国は科学世界 ー隣国は魔法世界 another storyー」もよろしくお願いいたします。

聖女なんて御免です

章槻雅希
ファンタジー
「聖女様」 「聖女ではありません! 回復術師ですわ!!」 辺境の地ではそんな会話が繰り返されている。治癒・回復術師のアルセリナは聖女と呼ばれるたびに否定し訂正する。そう、何度も何十度も何百度も何千度も。 聖女断罪ものを読んでて思いついた小ネタ。 軽度のざまぁというか、自業自得の没落があります。 『小説家になろう』様・『Pixiv』様に重複投稿。

処理中です...