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その後 アビー
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醜聞と借金まみれになった男爵家は夜会での惨劇からほどなくして没落した。
返済のために爵位を売り、それでも払いきれなかった借金にいまでも苦しんでいる。
平民となることを嫌った妻は離縁して実家へ戻り、やらかした娘のアビーは娼館に売られそうになったが変態で有名な伯爵家へ妾として召し上げられた。
「アビー、だれが二足歩行を許した。メス豚らしく4足で歩け!」
ドSの伯爵は黒い鞭をアビーの背や太腿にバシバシッと当てて怒鳴る。
「ふぐぐぅ……」
猿轡を噛まされた状態のアビーは泣き声さえ上げられずにくぐもった声を漏らす。
「どうした豚、鼻を鳴らすぐらいできるだろ?」
再び叩かれたアビーはビチャビチャに涙を流して「フゴフゴブーブー」と啼く。
「いいぞ、やればできるじゃないか」
伯爵はそう言ってアビーの猿轡を緩めて、ご褒美のトウモロコシを転がして与えた。
アビーは恨めし気に伯爵をチラリと盗み見てから1日ぶりのご飯に齧りついた。
泣きながら食べるものだから「ブゴブゴ」と声が出た、咀嚼する様はほんとうに豚のようだった。
救いなのは変態でドSの伯爵が見目麗しい若者だということだ。
彼はまだ20代の青年だが愛人を何人も囲っている。
実は妾をいたぶるのは愛する正妻の為だった、愛してやまない妻へ「キミ以外の女は全部家畜以下だ」と言って躾の様子を見せていたのだ。
「ふふ、貴方。アビーはまだまだ泣き足りないようよ。だってこの私を睨むのだもの」
家畜小屋の外から見物していた正妻が声をかける。
「おお、そうか!それはいけないな、躾が甘かったようだ。ほらアビー!豚のお前には衣服は要らないよな?」
「ぶごごぉぉ!?」
襤褸切れ同然だったソレを剥ぎ取られて、あられもない姿にされたアビーは下着をつけることも許されない。
「ぶごおお!」
羞恥と怒りに荒打ったアビーは抵抗しようと藻掻いたが蹴り飛ばされて壁際にぶつかった。
「まぁ醜いこと、碌に餌を与えてないのにダルンダルンの腹と大きな尻ね」
「ふん、大方使用人に媚を売ってたかっているんだろう?」
「いやだわ、でもそれくらいは許してやりましょうか。死なれたら面倒だものね」
「そうだねボクの女王様、豚同士仲良くすればいいさ」
伯爵は美しい顔を冷徹に歪めて、アビーを二度三度と殴ってから小屋から出ていった。
しっかりと南京錠をされた家畜小屋にはアビーだけがポツンと放置された。
ビリビリに裂かれた服と藁をかき集めて、身が冷えるのを防いだ。
気が強い彼女はいまだに心が折れない、いつかきっと立場を逆転させてやると唇を噛んだ。
そんな奇跡など起きないまま、彼女は家畜小屋で飼い殺しにされる。
そのうちに使用人の誰かの子を身ごもって出産した、すぐに子を奪い取られて再び孤独になったアビー。
「安心しろ、子には罪はないからな。ちゃんとした施設に預けた。」
どうして、そこまでアビーは憎まれなければならないのかと伯爵に目で問う。
「なんだ気が付いてなかったのか?俺の妹は貴様のせいで破談になりいまだに独り身なんだぞ!お前がちょっかいをかけた男、ハワード・リンゼルトに裏切られたせいでな!」
真実をやっと知ったアビーは滂沱に涙を流して後悔した。
なにもかも遅いその後悔と懺悔は、虚しく藁の束に落ちて吸い込まれていく。
「ぶぐううぅぅう!ぶぎゃぁああ!」
Fin
返済のために爵位を売り、それでも払いきれなかった借金にいまでも苦しんでいる。
平民となることを嫌った妻は離縁して実家へ戻り、やらかした娘のアビーは娼館に売られそうになったが変態で有名な伯爵家へ妾として召し上げられた。
「アビー、だれが二足歩行を許した。メス豚らしく4足で歩け!」
ドSの伯爵は黒い鞭をアビーの背や太腿にバシバシッと当てて怒鳴る。
「ふぐぐぅ……」
猿轡を噛まされた状態のアビーは泣き声さえ上げられずにくぐもった声を漏らす。
「どうした豚、鼻を鳴らすぐらいできるだろ?」
再び叩かれたアビーはビチャビチャに涙を流して「フゴフゴブーブー」と啼く。
「いいぞ、やればできるじゃないか」
伯爵はそう言ってアビーの猿轡を緩めて、ご褒美のトウモロコシを転がして与えた。
アビーは恨めし気に伯爵をチラリと盗み見てから1日ぶりのご飯に齧りついた。
泣きながら食べるものだから「ブゴブゴ」と声が出た、咀嚼する様はほんとうに豚のようだった。
救いなのは変態でドSの伯爵が見目麗しい若者だということだ。
彼はまだ20代の青年だが愛人を何人も囲っている。
実は妾をいたぶるのは愛する正妻の為だった、愛してやまない妻へ「キミ以外の女は全部家畜以下だ」と言って躾の様子を見せていたのだ。
「ふふ、貴方。アビーはまだまだ泣き足りないようよ。だってこの私を睨むのだもの」
家畜小屋の外から見物していた正妻が声をかける。
「おお、そうか!それはいけないな、躾が甘かったようだ。ほらアビー!豚のお前には衣服は要らないよな?」
「ぶごごぉぉ!?」
襤褸切れ同然だったソレを剥ぎ取られて、あられもない姿にされたアビーは下着をつけることも許されない。
「ぶごおお!」
羞恥と怒りに荒打ったアビーは抵抗しようと藻掻いたが蹴り飛ばされて壁際にぶつかった。
「まぁ醜いこと、碌に餌を与えてないのにダルンダルンの腹と大きな尻ね」
「ふん、大方使用人に媚を売ってたかっているんだろう?」
「いやだわ、でもそれくらいは許してやりましょうか。死なれたら面倒だものね」
「そうだねボクの女王様、豚同士仲良くすればいいさ」
伯爵は美しい顔を冷徹に歪めて、アビーを二度三度と殴ってから小屋から出ていった。
しっかりと南京錠をされた家畜小屋にはアビーだけがポツンと放置された。
ビリビリに裂かれた服と藁をかき集めて、身が冷えるのを防いだ。
気が強い彼女はいまだに心が折れない、いつかきっと立場を逆転させてやると唇を噛んだ。
そんな奇跡など起きないまま、彼女は家畜小屋で飼い殺しにされる。
そのうちに使用人の誰かの子を身ごもって出産した、すぐに子を奪い取られて再び孤独になったアビー。
「安心しろ、子には罪はないからな。ちゃんとした施設に預けた。」
どうして、そこまでアビーは憎まれなければならないのかと伯爵に目で問う。
「なんだ気が付いてなかったのか?俺の妹は貴様のせいで破談になりいまだに独り身なんだぞ!お前がちょっかいをかけた男、ハワード・リンゼルトに裏切られたせいでな!」
真実をやっと知ったアビーは滂沱に涙を流して後悔した。
なにもかも遅いその後悔と懺悔は、虚しく藁の束に落ちて吸い込まれていく。
「ぶぐううぅぅう!ぶぎゃぁああ!」
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