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最後の我儘
しおりを挟む彼はメリサに跪いて言った、この手を取って欲しいのだと――。
「どうか許して欲しい、すべては私の我儘なんだ。愛していますメリサ」
「あぁ、……そんな私などで良いのでしょうか?貴方は王子だというのに」
ついこの間まで下女だったメリサは気が動転して今にも倒れそうだった。一平民に過ぎなかった彼女がそうなっても可笑しくはない。
ドキドキして夢見心地な気分だがそれ以上に彼女は王族の一員になることを恐れた。
「お願いだよ、メリサに首ったけなんだ!私はどんな事があろうとキミを護るし離さない」
「ベルナルド様……どうしてそのように私を好きに?」
「理由なんてわからない、ただどうしようもなく魅かれるんだ!小鳥の囀りのような声、淡い髪の毛、そして翡翠のような瞳。どれをとっても素敵だ」
「まぁ、そこまで私のことを……私はなんて果報者なのでしょう」
思い人に想われる最上の喜びに感極まったメリサは大粒の涙を流した。心配そうに彼女を見つめるベルナルドは眉を下げて「どうしたの?」と顔を覗き込む。
「いいえ、私は幸せ過ぎて……だって叶わない恋が実ったのですもの」
「ああ!なんてことだ私達は両思いなのだね!」
王子は堪らず彼女に口づけした、驚いたメリサは最初は固まったがやがてゆっくりとそれを受け入れる。優しく触れる唇は深くなっていく。
後にお伽話のような王子の結婚話は市民の間で話題となり、吟遊詩人までもが歌い伝えるようになる。
「いつも大切にもっているね、そのキャンバスはなんだい?なにも描いてないけど」
「いいえ、そんなことはないわ。たくさん思い出があって描き切れないほどの奇跡がつまっているの!」
メリサは不思議そうに頭を傾ぐ王子にクスリと微笑むのだった。
完
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