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しおりを挟む医者は静養を勧めたが頑なに拒否をするカトリーヌであった、延命するより好きに生きたいと彼女は思った。
「よろしいのですか、延命措置をするくらいはできます」
「いいえ、必要ないわ。私には時間がないのですもの。そうでしょう?」
例え延命したとしてそれが何になるのだと彼女は思うのだ、余命が数カ月ほど生きながらえたとして後悔が残っては元もこうもない。彼女は強く拒否をする。
ならばせめて週に一度だけでも点滴を打って欲しいと主治医は言った。さすがの彼女もそれを受け入れるしかない。
「ごめんなさい、我儘を言って」
「何をおっしゃいます、医者として無能な自分が情けない。ほんとうに申し訳ないことです」
「まぁ、ドクターを責めることなどしませんわ」
彼女は努めて健気に笑う、己の運命を受け入れているのだ。
それでも久しぶりに休暇をとり静養する事にしたカトリーヌは四阿にて本を読む、やがて疲れた彼女は鈍痛を感じ痛み止めを処方されて微睡んでいた。するとそこへ招かれざる客がやって来た。
「こんにちは、奥様。うふふっ」
「……どなた?」
せっかく微睡始めていたところに邪魔をされてとても不機嫌な声をあげてしまうカトリーヌだ。侍女らも緊張をしてその客に対応した。
「あらぁ余裕がないですこと!私ですわ、アンナ・パレナです。旦那様に愛されているアンナですわぁ」
「……それで、愛人の貴女が何ようだと言うのです。私は休暇中です」
カトリーヌは侍女達に目線で指示をして愛人を払うよう命じる、すかさず動いた侍女たちはあっと言う間にアンナを退ける。
「何をするのよ!私は何れこの屋敷の女主人になる者よ!それを…」
鼻息荒くそう捲し立てて抵抗する彼女だったがカトリーヌはもちろん、従者たちは相手にしなかった。
「愚かしいこと、貴族家の女主人になるなど卑しい者はなれなくてよ?」
「な、なんですって!?卑しいとはどういう事よ!」
「貴女、本当に主人の子を身籠ったのかしら?どうなの?」
「え……」
急に蒼くなった彼女は大きく膨れた腹を庇うように後退る。
「何を言いだすかと思えば……この子の父親はジャックで間違いないわ!」
「へぇ、そうなの?ねぇ貴女、男性不妊ってご存じかしら」
「な、なにを!」
あからさまな態度にカトリーヌは核心を得る。
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