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「い、いらっしゃいませ~!珍しい菓子パンにございます、アンパン、ジャムパン。総菜パンもございます~」
彼女は早速と異世界”日本”から仕入れたパンを売る事にした。もちろん、いきなり店を構える余裕などない。彼女アンジェルは歩き売りをしているのだ。駅弁を売る恰好はオーバンのアイデアである。


道行く人々は物珍し気に見つめるが直ぐに踵を返してしまう、これには困り果てるアンジェルだ。
「やはり珍しいだけではダメなのね……難しいわ」
首を傾げ思案していると声を掛ける者がいた。

「何をやってんだ、ぜんぜんなってない」
「え?……あぁ!オーバン様!」
彼女は顔を綻ばせて彼の元に行く、そして「面白い売り方ですね」と笑う。オーバンは頭を抱えて間違ってはいないがそれではダメだと言った。異世界からわざわざ転移してきたオーバンは心配そうに彼女を見つめる。
菓子パンを売るという目の付け所は良いが、それではダメだろうと言う。


「え、どうしてでしょう。わかりません」
「あーなんというか、宣伝が足りない。何を売っているのかサッパリだよ、声も小さくて聞き取れない」
「そうなんですか?困ったわ、あまり大きな声ははしたないから」
「……なるほどな、お嬢様育ちが邪魔をするんか」

オーバンは何か黄色い筒のようなものを出してこう言った。
「これを口にあてて言ってみな」
「これは?」
「拡声器だ、簡易なものだがないよりマシだろう?」

アンジェルは不思議な黄色い物体をしげしげと見つめて「やってみます」と言って口をつけて話してみる。
<いらっしゃいませ~珍しい菓子パンにございます、アンパン、ジャムパン。総菜パンもございます~>

「わ!ビックリしました!自分の声が2~3倍くらいになりましたよ!」
「そりゃあ良かった、この調子で頑張りな。それから試食品を作ったほうが良い、味がわからんと売れないだろう」
「なるほど!わかりました」

それから試食品を配るとちらほら客が立ち止まるようになった。ただならばいくらでもと言うガメつさを利用する。
「な、なんだいこれは!食ったことがない!」
「ふふ、一個銅貨2枚です。如何?」
「うん、買った!三個くれ」
「おい、こっちは五個買うぞ!」

急に客が増えて驚いたアンジェルだが、「気合入れろ」とオーバンに言われてしゃんとする。
「あ、ありがとうございます!チョコパンも美味しいですよ~」











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