5 / 14
5
しおりを挟む「い、いらっしゃいませ~!珍しい菓子パンにございます、アンパン、ジャムパン。総菜パンもございます~」
彼女は早速と異世界”日本”から仕入れたパンを売る事にした。もちろん、いきなり店を構える余裕などない。彼女アンジェルは歩き売りをしているのだ。駅弁を売る恰好はオーバンのアイデアである。
道行く人々は物珍し気に見つめるが直ぐに踵を返してしまう、これには困り果てるアンジェルだ。
「やはり珍しいだけではダメなのね……難しいわ」
首を傾げ思案していると声を掛ける者がいた。
「何をやってんだ、ぜんぜんなってない」
「え?……あぁ!オーバン様!」
彼女は顔を綻ばせて彼の元に行く、そして「面白い売り方ですね」と笑う。オーバンは頭を抱えて間違ってはいないがそれではダメだと言った。異世界からわざわざ転移してきたオーバンは心配そうに彼女を見つめる。
菓子パンを売るという目の付け所は良いが、それではダメだろうと言う。
「え、どうしてでしょう。わかりません」
「あーなんというか、宣伝が足りない。何を売っているのかサッパリだよ、声も小さくて聞き取れない」
「そうなんですか?困ったわ、あまり大きな声ははしたないから」
「……なるほどな、お嬢様育ちが邪魔をするんか」
オーバンは何か黄色い筒のようなものを出してこう言った。
「これを口にあてて言ってみな」
「これは?」
「拡声器だ、簡易なものだがないよりマシだろう?」
アンジェルは不思議な黄色い物体をしげしげと見つめて「やってみます」と言って口をつけて話してみる。
<いらっしゃいませ~珍しい菓子パンにございます、アンパン、ジャムパン。総菜パンもございます~>
「わ!ビックリしました!自分の声が2~3倍くらいになりましたよ!」
「そりゃあ良かった、この調子で頑張りな。それから試食品を作ったほうが良い、味がわからんと売れないだろう」
「なるほど!わかりました」
それから試食品を配るとちらほら客が立ち止まるようになった。ただならばいくらでもと言うガメつさを利用する。
「な、なんだいこれは!食ったことがない!」
「ふふ、一個銅貨2枚です。如何?」
「うん、買った!三個くれ」
「おい、こっちは五個買うぞ!」
急に客が増えて驚いたアンジェルだが、「気合入れろ」とオーバンに言われてしゃんとする。
「あ、ありがとうございます!チョコパンも美味しいですよ~」
174
お気に入りに追加
202
あなたにおすすめの小説
婚約破棄騒動の裏で僕らはのんびりと愛を育む。ありがたいことに出世しました。
うめまつ
恋愛
婚約破棄をした一粒種の皇太子と男爵令嬢がご成婚。皇太子ご夫妻となられた。陛下の采配に下々は大人しく従うだけ。特に側近の一人とは言え、雑用係の僕なんかね。でもまさか皇太子ご夫妻を真似て婚約破棄が流行るなんて。………僕らは巻き込まれたくないなぁ。え?君も婚約破棄してみたい?ちょっと待ってよ!
※会話のみです。コメディ感やテンポの良さなど何もありません。でもこういう地味なイチャイチャを見たくなりました。
魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌
招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」
毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。
彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。
そして…。
王族に婚約破棄させたらそりゃそうなるよね? ……って話
ノ木瀬 優
恋愛
ぽっと出のヒロインが王族に婚約破棄させたらこうなるんじゃないかなって話を書いてみました。
完全に勢いで書いた話ですので、お気軽に読んで頂けたらなと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる