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しおりを挟む言葉が通じる相手を見つけたアンジェルはブワリと涙を流して「良かった~」と言った。そして、これまでの経緯を一気に捲し立てる。
「おいおい、わかったから落ち着け?な?」
「は、はいそうですね、グスン」
往来で時代錯誤な恰好の女子が泣き喚いているものだから視線が痛い。とりあえず店に入れと男性は言う。
水と簡単な食事を摂らせることにした男性は大場聡と名乗った、真名はオーバン・メランセルというらしい。彼女と同様に光る石によって異世界に来たのだと言う。
「よ、宜しいのですか?私はあまり金子を持ち合わせてなくて……あ、名前はアンジェル・エイシャント、いいえ、たただのアンジェルとお呼びください」
「はいよ、よろしくアンジェル。まぁ飯を食いなって、話はそれからだ」
どうしてこうなったか再び経緯を話したアンジェルは腹が満たされ眠くなる、時系列からいえば夜中になるのだから仕方ないだろう。時差ぼけのようなものだ。
「光る石てのは恐らく転移石だ、まぁなんて言うか商売の神が宿るという石として小人に重宝されてるんだ」
「転移石ですか?フワァ……エホンッ失礼!」
「あぁ、ピッコラ族に伝わる石なんだ、どういうわけか異世界に通じてるんだヤツらはこっちには来れないけどな」
「え?どういうこと」
聞けば転移石は街から街へ移動するだけで異世界に繋がっているわけではないらしい。ピッコラ族にしか利用するこは出来ないはずだが、稀にこのように異世界と繋がるようだ。
「光る石、表に隠しておいたんだがなぁ、もう使わないし朽ちてくれれば幸いと思ってた」
オーバンはやはり同じように転移してきたらしい、もう戻るつもりはないと彼は言った。彼は18歳の時に飛ばされて苦労したんだと言う。ちなみに今は25歳である。
「え、どうしてですか?便利じゃないですか」
「便利……まぁそうなんだろうけど、俺はこっちの世界が気に入ってるからな」
「うーん、よくわからないけど、使用できる人間は限られていると?」
「そういうことだな、神か何か知らないが気に入られたってことだろう」
「へ、へぇ、そうなんですね」
アンジェルは難しい顔をして、「これは神の思し召しなのなら利用しない手はないわ」と言う。
「なに考えてるんだ?悪巧みかい」
「いいえ、商売のことですよ!今の私には何もないのです。ですが行き来が出来るというなら使わない手はないでしょう?」
「へぇ?聞かせて貰おうじゃないか」
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