完結 愛のない結婚ですが、何も問題ありません旦那様!

音爽(ネソウ)

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陰鬱な声

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「ねえ聞いた?幽霊が出るのですって!おぉ怖い!」
いつからか憂え悲しむ声が度々聞こえると屋敷で噂された。離れにある今は使われていない物見塔から時々聞こえるというものだ。



「すすり泣く様な声ですって?何かしらねぇ、古くなった塔が軋んでいるのではないかしら」
幽霊など信じていないシャルドリーヌは刺繍を刺しながらそう笑い飛ばした。しかし、青褪めた顔でメイド達が「ぜったい何かいるんです」と訴えたが「バカな」と相手にしない。

「もう~どうして信じないんですかぁ!」
「そうねぇ、だって考えてみて、人も獣も沢山いて沢山死ぬのよ?人が必ず霊となって彷徨うとしたらこの世は幽霊だらけだわ。それこそ数億、いいえ無量大数と数えきれないほどに膨れ上がるに違いないわ」
彼女はそう言ってケラケラと笑う。

メイド達は「それもそうか」と少し安堵の声を漏らす。だが、嘆き悲しむような声はその晩も聞こえてくるのだった。




そんな時、下男と下女が古くなった家具を離れの方に移動させることになった。戦々恐々としながらも家令の指示とあれば動かないわけにいかない。物見塔は離れに隣接しているのだ。

「たくよう、こんな時に命令しなくても……そう思わねぇ?」
「仕方ないよ、家令の旦那も幽霊なんて信じてないんだろうさ」

下女は肩を竦めて「ほら、そっちを持って」と古い戸棚を持ち上げた。ガタが来ているそれは上半分がスッポ抜ける。やれやれと唸りながら下男はそれぞれ分担して運ぼうと促す。

そして、やっと運び上げて離れを開ける。だが、どういうわけかドアが開いていたのだ。
互いを見つめる下男と下女、どうして使われていない離れのドアが開いているのだろうと首を傾げる。
「おい、まさか……幽霊が開けたんじゃ」
「バカだねぇ、幽霊がそんなことするかい!実体がない者がどうやって開けるのさ」

恐々していた下女は急に肝が据わったのか「バカらしい」と言って上半分になった戸棚を持ち上げるとズカズカと入って行った。
「お、おい!待てよ!置いてかないでくれよ~」
後に残された下男は情けない声をあげてその後を追う。家令の指示では二階の奥だと言う。

ヒイヒイ言いながら何とか二階に上がった下男は息を吐いて参ったなと言って戸棚を置いた。
ややあってから薄暗がりの中で下女の姿を探った、どうやら家具を置いて蹲っている。

「おい、どうした?腹でも痛いのか?」
微動だにしない彼女を不審に思い声を掛けて揺さぶった、ところがグラグラとしてそのまま倒れたのだ。彼女はなんと気絶していたのだ。

「えぇ!?なんでこんな所で気を失うんだよ!おい、起きろって!」
何度も声を掛けたが一向に起きない、仕方なく家具を置いて彼女を担ごうとした時だ。前方の一番昏い場所に信じられにものを目にする。

「ぎ、ぎゃ―――!本当に出たぁあああ!」








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