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その後、城に連れ戻されたキアラ王子だったが、再び暴れられては困ると一旦投獄されることになった。幽閉とは違いその扱いは酷いものだった。
窓もない地下牢獄はとうぜん光も届きはしない、唯一ある灯は古い油に灯した小さな火だけだ。

「うぅ……気が滅入る母上……助けて」
いまの彼はアレシアの事より自分の身の回りを気にしている、なんと儚い愛だろうか。彼は日がな一日、母の愛を求めてぐずるだけの小僧に成り下がった。

父親に一喝されたことが余程懲りたのか、王の名を呼ぶことはない。ゲンコツを食らった頭はまだ腫れあがっている。

「チキショーこんなに強く叩くなんて……グスン、バカになったらどうしてくれる」
「元より大馬鹿だろうが、愚弟キアラよ」
「なんだと!」

石床に寝そべってグズっていた彼はガバリと起き上がって声のした方を睨みつける。まだそんな気概が残っていたとは呆れるとクラウディオ第一王子は嘆息した。
「くそ!笑いものにきたのか腹黒クラウめ!アレシアを返せ盗人が!」
「やれやれ、まだそんな世迷言を言うか。お前は王子ですら無くなったのだぞ、投獄されたのがその証拠よ」
「なんだって!?出鱈目を言うな!母上がそのようなことを黙認するわけない!」

そこでクラウディオは「母から預かっている」と言い正妃専用の印璽付きの手紙を差し出した。
「間違いなく母のものだろう、受け取れ」
「母上!やはり俺のことを思って!」
彼は奪うように手紙を受けとると内容を一字一句漏らさぬように食い入るように見た。すると期待に高揚していた表情が見る見る曇る。

「どうした?お前を開放すると書いてあるのか?」
「……嘘だ……俺が城から追い出され市井に下れと……嫌だ!どうして!」
「はっ、甘い事だな母上は、いいか、お前は謀反を起こしたも同然なのだ。命があるだけ有難いと思えよ」
「何故だ!どうして俺が謀反人になるのだ!」

そこで、クラウディオは長い溜息を吐き馬鹿でもわかるよう懇切丁寧に教えてやる。
「私は王太子に選ばれた、時期王となる。その妃となるアレシア嬢に横恋慕を起こし、あのように騒ぎ立てた。まるで”自分こそが王に相応しい”と言わんばかりにだ」
「そんな!そんな……兄上が王太子に選ばれたなんて」

愕然とするキアラは譫言のように「嘘だ、嘘だ」と何度も呟く。バカはバカなりに国を背負う意思があったのか何を根拠に”自分が選ばれる”と勘違いしたのだろう。王と王妃の愛情を捻じ曲げて解釈したのだろうか。



それからほどなくしてキアラは身一つで城を追い出された、しばらくは門の外でグズグズしていたが門兵に「いい加減にしろ」と威嚇され泣きながら去っていった。

「うぅ、母上……あれから一度も会えなかった、どうして?俺は何か間違えたのか?」











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