13 / 14
13
しおりを挟むその後、城に連れ戻されたキアラ王子だったが、再び暴れられては困ると一旦投獄されることになった。幽閉とは違いその扱いは酷いものだった。
窓もない地下牢獄はとうぜん光も届きはしない、唯一ある灯は古い油に灯した小さな火だけだ。
「うぅ……気が滅入る母上……助けて」
いまの彼はアレシアの事より自分の身の回りを気にしている、なんと儚い愛だろうか。彼は日がな一日、母の愛を求めてぐずるだけの小僧に成り下がった。
父親に一喝されたことが余程懲りたのか、王の名を呼ぶことはない。ゲンコツを食らった頭はまだ腫れあがっている。
「チキショーこんなに強く叩くなんて……グスン、バカになったらどうしてくれる」
「元より大馬鹿だろうが、愚弟キアラよ」
「なんだと!」
石床に寝そべってグズっていた彼はガバリと起き上がって声のした方を睨みつける。まだそんな気概が残っていたとは呆れるとクラウディオ第一王子は嘆息した。
「くそ!笑いものにきたのか腹黒クラウめ!アレシアを返せ盗人が!」
「やれやれ、まだそんな世迷言を言うか。お前は王子ですら無くなったのだぞ、投獄されたのがその証拠よ」
「なんだって!?出鱈目を言うな!母上がそのようなことを黙認するわけない!」
そこでクラウディオは「母から預かっている」と言い正妃専用の印璽付きの手紙を差し出した。
「間違いなく母のものだろう、受け取れ」
「母上!やはり俺のことを思って!」
彼は奪うように手紙を受けとると内容を一字一句漏らさぬように食い入るように見た。すると期待に高揚していた表情が見る見る曇る。
「どうした?お前を開放すると書いてあるのか?」
「……嘘だ……俺が城から追い出され市井に下れと……嫌だ!どうして!」
「はっ、甘い事だな母上は、いいか、お前は謀反を起こしたも同然なのだ。命があるだけ有難いと思えよ」
「何故だ!どうして俺が謀反人になるのだ!」
そこで、クラウディオは長い溜息を吐き馬鹿でもわかるよう懇切丁寧に教えてやる。
「私は王太子に選ばれた、時期王となる。その妃となるアレシア嬢に横恋慕を起こし、あのように騒ぎ立てた。まるで”自分こそが王に相応しい”と言わんばかりにだ」
「そんな!そんな……兄上が王太子に選ばれたなんて」
愕然とするキアラは譫言のように「嘘だ、嘘だ」と何度も呟く。バカはバカなりに国を背負う意思があったのか何を根拠に”自分が選ばれる”と勘違いしたのだろう。王と王妃の愛情を捻じ曲げて解釈したのだろうか。
それからほどなくしてキアラは身一つで城を追い出された、しばらくは門の外でグズグズしていたが門兵に「いい加減にしろ」と威嚇され泣きながら去っていった。
「うぅ、母上……あれから一度も会えなかった、どうして?俺は何か間違えたのか?」
317
お気に入りに追加
329
あなたにおすすめの小説
ジルの身の丈
ひづき
恋愛
ジルは貴族の屋敷で働く下女だ。
身の程、相応、身の丈といった言葉を常に考えている真面目なジル。
ある日同僚が旦那様と不倫して、奥様が突然死。
同僚が後妻に収まった途端、突然解雇され、ジルは途方に暮れた。
そこに現れたのは亡くなった奥様の弟君で───
※悩んだ末取り敢えず恋愛カテゴリに入れましたが、恋愛色は薄めです。
気絶した婚約者を置き去りにする男の踏み台になんてならない!
ひづき
恋愛
ヒロインにタックルされて気絶した。しかも婚約者は気絶した私を放置してヒロインと共に去りやがった。
え、コイツらを幸せにする為に私が悪役令嬢!?やってられるか!!
それより気絶した私を運んでくれた恩人は誰だろう?
【完結】記憶喪失になってから、あなたの本当の気持ちを知りました
Rohdea
恋愛
誰かが、自分を呼ぶ声で目が覚めた。
必死に“私”を呼んでいたのは見知らぬ男性だった。
──目を覚まして気付く。
私は誰なの? ここはどこ。 あなたは誰?
“私”は馬車に轢かれそうになり頭を打って気絶し、起きたら記憶喪失になっていた。
こうして私……リリアはこれまでの記憶を失くしてしまった。
だけど、なぜか目覚めた時に傍らで私を必死に呼んでいた男性──ロベルトが私の元に毎日のようにやって来る。
彼はただの幼馴染らしいのに、なんで!?
そんな彼に私はどんどん惹かれていくのだけど……
覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―
Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。
【完結】婚約破棄された私が惨めだと笑われている?馬鹿にされているのは本当に私ですか?
なか
恋愛
「俺は愛する人を見つけた、だからお前とは婚約破棄する!」
ソフィア・クラリスの婚約者である
デイモンドが大勢の貴族達の前で宣言すると
周囲の雰囲気は大笑いに包まれた
彼を賞賛する声と共に
「みろ、お前の惨めな姿を馬鹿にされているぞ!!」
周囲の反応に喜んだデイモンドだったが
対するソフィアは彼に1つだけ忠告をした
「あなたはもう少し考えて人の話を聞くべきだと思います」
彼女の言葉の意味を
彼はその時は分からないままであった
お気に入りして頂けると嬉しいです
何より読んでくださる事に感謝を!
【完結】『私に譲って?』そういうお姉様はそれで幸せなのかしら?譲って差し上げてたら、私は幸せになったので良いのですけれど!
まりぃべる
恋愛
二歳年上のお姉様。病弱なのですって。それでいつも『私に譲って?』と言ってきます。
私が持っているものは、素敵に見えるのかしら?初めはものすごく嫌でしたけれど…だんだん面倒になってきたのです。
今度は婚約者まで!?
まぁ、私はいいですけれどね。だってそのおかげで…!
☆★
27話で終わりです。
書き上げてありますので、随時更新していきます。読んでもらえると嬉しいです。
見直しているつもりなのですが、たまにミスします…。寛大な心で読んでいただきありがたいです。
教えて下さった方ありがとうございます。
私の婚約者を狙ってる令嬢から男をとっかえひっかえしてる売女と罵られました
ゆの
恋愛
「ユーリ様!!そこの女は色んな男をとっかえひっかえしてる売女ですのよ!!騙されないでくださいましっ!!」
国王の誕生日を祝う盛大なパーティの最中に、私の婚約者を狙ってる令嬢に思いっきり罵られました。
なにやら証拠があるようで…?
※投稿前に何度か読み直し、確認してはいるのですが誤字脱字がある場合がございます。その時は優しく教えて頂けると助かります(´˘`*)
※勢いで書き始めましたが。完結まで書き終えてあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる