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「ふふ~ん、ふふふ~ん♪待っていてね、私の可愛い王子様ァ、ミアが慰めてあげるわ」
普段の行き過ぎた王子の愚行で勘違いをしたミア・レンティは「私こそが王子に相応しい」と思っている。それこそが飛んだ早とちりだというのに信じて疑わない。

「準男爵位とはいえ貴族の端くれだもの、王子に嫁いでも問題ないわよね?ふふん♪」
満面の笑みを浮かべて北の塔へやってきたミアは、王子の世話だという言い訳をして幽閉先の兵を黙らせた。そして、「王子様、ミアが来ましたよ」と嬉しそうに言うのだ。

「……あ”?なんだミアかよ、なんの用だ?」
「王子様の為にまたクッキーを焼いたんですぅ、とっても美味しく出来たんですよ」
「はぁ……そんなもの要らん、とっとと下がれ」

冷たくあしらうキアラだが、ミアは「きっと拗ねているだけ」と解釈した。
鉄格子の奥は豪奢な作りで王族を懲らしめる為とは言えない、ただ自由がないというだけだ。どうも、其処らへん甘いらしい。

彼はミアから視線を外し「うーん」と伸びをする、そしてソッポ向いて寝腐りだした。
「王子様、ミアはピアノはダメだけどお歌は自信があるのよぉ。今から歌いますねぇ」
「……」

間延びしたそれは聞くに堪えず王子は耳栓の魔法をかけて無視を決め込む、そうとは知らないミアは声が枯れるまで歌うのだ。




「なんだ?この調子はずれの酷い歌は」
「ああ、王子お気に入りだというメイドだろう。すげぇなここまで音程が外れてるとは」
護衛騎士らは肩を竦めて「早く終われ」と願うのだ。


***


「やはりこのままではいけないと思いますのよ」
王妃サブリナは愚息キアラの事を嘆いていた、彼女もまた王子の言動を勘違いしており「このままではミアと言う娘を妃にするのでは」と思っていた。

「うむ……それは良くないな、ミアとか言う娘は準男爵の娘だったか。はぁ、記憶に残らんほどにどうでも良い家なんだろう」
グラン王はしばし思案して「なんの功績だったか」と辿ったが全く覚えがない。

「仕方あるまい、あれはボンクラだ。出来の良いアレシア嬢を宛がったがそれは無駄のようだ」
「ええ、その通りですわ。さすればクラウディオ第一王子の婚約者としましょう。もともとその予定でしたもの」
「うむ」

実はキアラ王子の我儘で一目ぼれしたアレシアを「どうしても嫁にしたい!」と言ったのが発端だ。


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