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定期茶会での一幕である、いつもの調子でキアラ・ランブルート第二王子は彼女下げに忙しい。婚約者アレシア・ビスカルディ侯爵令嬢がいかにダメな人間だと知らしめないと気が済まないようだ。


「ミアはなんでも出来る素晴らしいメイドさ!行儀見習いで来た侍女なんて邪魔なだけさ」
「そうですか」
「この素晴らしいクッキーを見給え!彼女が焼いたものさ、アレシア、キミはクッキーは焼けるのかい?」
「いいえ、ですがシフォ…」
「はっ!やっぱりな、そうじゃないかと思った!やっぱりキミも頭空っぽで何も出来ないんだろう」
「……」

”シフォンケーキならば焼けます”と言いかけたアレシアはそれ以上言っても無駄だと思った。事あるごとに自慢のメイドを誉めそやし、アレシア下げに夢中だからだ。

彼は意識しているかはわからないが、彼女アレシアを下げることで悦に入り自信のなさを誤魔化しているように見受けられる。

「聞いているのかアレシア!彼女の素晴らしさはこんなものではないのだぞ!」
「うふふ、皇子殿下。どうかそれくらいで、そのように褒められては私は恥ずかしいですわ」
「ああなんて奥ゆかしいんだミア!驕ることのないその精神、素晴らしいじゃないか、アレシアお前も見習えよ」
「……」


***


「あんのクソ王子!言わせておけば好き勝手ほざきやがって!」
怒り心頭なのはアレシアの侍女ミュゼである、些か言動が荒れているが彼女も見習い侍女で伯爵令嬢である。

「まぁ、ミュゼったら言葉が乱暴すぎるわ、紅茶を淹れてあげるから落ち着いて?」
「ああ、アレシア様!なんて慈悲深いのでしょう、イタダキマス!」
「ふふ、どうぞ。レディ・グレイにしたわ」

それは彼女が焼いたシフォンケーキに良く会う紅茶だった、柑橘系の香りが鼻腔を擽る。
「ふわぁ……最高です~!この添えられたクリームとすごく合って美味しいです!」
「やだわ、大袈裟なんだから」

照れて笑うはにかみ屋なアレシアは真っ赤になって下を向く。
「あぁどうしてアレシア様の良さがわからないのか、王子の頭にはウンコでもつまっているのかしら?」
「ぶふっ!ミュゼお下品!」






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