完結 妹を愛していると言った貴方、本気ですか?気持ちが悪い!

音爽(ネソウ)

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やっと会えた!……けれど

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魔植物の退治に特化した少女がいると評判になり、やたらと依頼が殺到した、どうやら困っていたのは一か所だけではないらしい。
「わかりました引き受けます」
ララは少し休みたいと思ったがそうも言ってられない、果樹園からの依頼はひっきりなしにくるのだ。一日に5件は熟していたのでララは報酬でいっぱいになった。

「それでは行ってまいります」
「はい、宜しくね。でもお菓子の買い食いはほどほどに」
「はぁい」
ギルド員のお姉さんとも顔見知りになり軽口を叩く仲になっていた。いつも通りにクポムを買いに立ち寄るとガラの悪い連中がニタニタと笑い、彼女を待ち構えていた。

店のお姉さんも困っている様子だ、それはそうだろう店にやってくる客を威嚇して蹴散らしているのだから。
ふぅ、とため息を吐いてそこに望めば早速と絡まれた。
「よぉ嬢ちゃん、最近なにかと景気が良いらしいじゃないか」
「そうそう、俺達にもわけて欲しいよなぁ」
「分けるとはどういう意味でしょう?」

彼女はキッと睨みつけて応戦する構えをみせた、すると破落戸みたいな男が腕をとろうとした。だが、さっと後退して往なす、それを気に入らないと大声を上げて「やっちまえ!」と男たちは襲ってきた。
質の悪いことにギルド以外の場所で襲うということをやらかす、これは面倒なことだ。ギルド外でのトラブルはいっさい感知しないというルールを逆手にとっている。

「諦めなぁ嬢ちゃん!」
「そうですか」
仕方なく退治しようと魔法を展開した、弱点は全部と出たので炎で軽く炙ってあげようとした。ところが炙る前に男たちはバタバタと倒れてしまった。
「え?どうして……」

「やっと会えた!私のクラーラ!会いたかったぞ」
「な……」
大きな男がヒシと抱きしめてきた、あまりの事にパニックになる。新手の暴漢かと思った彼女は炎を全開にして抗う。だが、どうしたことか全く効果がないようだ。

「ふふ、擽ったいなぁ。でも駄目だぞそういう事をしたら」
「あ、ああああ!化物!」
本来は消し炭になるほどの威力を発揮して爆炎を起こしているのだが、相手は擽ったいと嗤う。しかも衣類さえ燃えないのだ、ララは戦意喪失してぐったりした。

「いったい何者なの……」

***

「……こんにちは、退治にきました」
「あ、ああ、有難いけど疲れてるのかい?」
果樹園の依頼者は彼女を見るなりそういった、すでに疲労困憊というありさまに見えていたからだ。

「お気遣いなく、現場はどこですか?」
それならばと案内されたが、後ろから付いてくる男を見るや「だれ?」と聞いて来た。「わかりません」とポツリという彼女は面倒そうに言った。

「では、始めますね」
彼女は氷魔法で棘雑草を攻撃した、それは一瞬のことだ。後は風魔法で溶かせば良い。
「ほう、見事なものだな!さすが私のクラーラだ」
「……いったいなんなのですか?私は貴方になにかしました?」



不審者を見るような目で睨まれたシェイドは瞠目する。自分のことを認識していないことに驚愕している。
「私がわからないのか?夢で何度もあっただろう?」
「夢?……あのへんな夢のことかしら、一輪の花がなんとかって」
「そう!その通りだよクラーラ!私は迎えに来た!」

彼はそういって何処からともなく一輪の黒い薔薇を捧げた、だが肝心のクラーラは嫌そうにしている。
「どうしてクラーラ?約束を果たしにきたのに、花嫁になってくれないのかい?」
悲し気な顔をする美男子に対して「花嫁とはなんの話です」と訝しい顔をした。たしかに迎えに行くとか言っていたが花嫁になるとは聞いていない。

「あ、そうか!迎えに行くとはいったが主語が抜けていたなハハハハッ!」
「……はははってそんな軽い、結婚はそんな簡単なものではありません!」
「そんなクラーラ!」

大袈裟に嘆く男は衝撃を受けて打ちひしがれる。

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