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甘い香りと棘
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グエンドローに到着したばかりのクラーラことララは、ギルドに入り依頼を選んでいたところだ。目ぼしいものはゴブリン退治だったが彼女は耳を削ぐことが出来ない。
「うう~困りました……なんとか触らずに削ぐことは出来ないかしら」
到着したばかりの彼女ではパーティを組んでくれる人がいない、組むということは信頼関係が前提になる。
「ひとりで出来ることは……えーと果樹園の雑草取り、掃除と薬草採取か」
止む無く果樹園の雑草取りを引き受けることにした、金に余裕はあるが何かしていないと気が済まないのだ。
彼女の目的は世界を見て周ることだ、地図にバツをつけて「まだまだ道のりは長いわ」とため息を吐く。
ギルドから出て果樹園を目指す彼女は腹ごしらえに何か食べようと考えた。急ぐ用件でもない。
「えっと、屋台はいろいろありますねぇ、さすがガウドより大きな街です」
メインストリートには色とりどりのノボリ旗を掲げた屋台が並んでいる、肉はもちろんだが見たことがない料理が目立つ。そのひとつに甘い香りが漂う店が目を引く。
「あ、あのおこれはなんですか?」
「あら、いらっしゃい!これはクポムだよ薄い生地に蜂蜜をかけたり、好みでフルーツを包んだものさ」
「なるほど、では蜂蜜と林檎をお願いします」
はいよ、と元気に応えるお姉さんが早速と生地を焼き始めた。なんともいえない甘い香りがしてきて食欲を掻き立てる。
「はい、どうぞ。熱いから気を付けて」
「あ、ありがとうどざいます」
ハフハフと頬張れば林檎のシャキシャキした食感がした、半生な状態がまた良い。とろりとした蜂蜜がキャラメリゼしていてたまらない。
「ああ、美味しかったぁ!また買いにこなくては」
何通りもある食べ方に、しばらくはグエンドローに滞在しなくてはと彼女は思った。南国のフルーツがとても気になる。
「ごめんください、ギルドからやってきました」
果樹園の主人はのそりとやってきて「ああ、依頼を受けたのか」と呑気そうに笑った。早速と依頼の草取りをはじめようと張り切るのだが、まずはジュースでも飲めと差し出される。
「うちのはとっても美味いんだ、ほれ遠慮せず」
「いいんですか?……ありがとうございます」
果樹園の摘果したクズ桃だったがとても甘く驚く、どうしてこんなに甘いのか。
「ああ、理由はあれだ、うちの品種は保存が利く加工用だからな、少し堅いが甘いんだ」
「なるほど!素晴らしいです」
喉を潤したララはお礼を述べると雑草取りを始める、よくよく見ると針山のような雑草がみっしりと茂っている。
「悪いなぁ、それが厄介もんでな棘がついててギルドに依頼してもあまりきてくれん」
「ああ、そうなんですね」
理由を聞いた彼女はトゲトゲの雑草を調べる、するとなにやら蠢いているではないか。なんと魔植物だったのだ。人が近づくと蔦のようなもので攻撃してきた。
「うっ、とっても厄介というのがわかりました。弱点は……氷ですね」
茂みの頭に<弱点 氷>と認めた彼女はひと際大きな株に狙いを定めて氷礫を放ってみた。するとガサガサと嫌がる素振りを見せたではないか。
「うん、やはりね。これは引っこ抜くだけじゃ退治は無理です」
さらに彼女は氷魔法を駆使して一気に凍らせてしまった。トゲトゲの名もなき草は丸ごと凍り、風魔法で溶かせばあっという間に枯れた。
「ご主人、終わりましたよ」
「え!?ええええ?嘘だろう嬢ちゃんひとりで!」
現場に駆け付けた主は信じられないものを見て「ひえええ!」と叫んだ。あれほど厄介だった棘雑草がシナシナに干乾びていた。
「いやぁ、驚いた!ありがとう嬢ちゃん!」
「いいえ、どういたしまして」
「うう~困りました……なんとか触らずに削ぐことは出来ないかしら」
到着したばかりの彼女ではパーティを組んでくれる人がいない、組むということは信頼関係が前提になる。
「ひとりで出来ることは……えーと果樹園の雑草取り、掃除と薬草採取か」
止む無く果樹園の雑草取りを引き受けることにした、金に余裕はあるが何かしていないと気が済まないのだ。
彼女の目的は世界を見て周ることだ、地図にバツをつけて「まだまだ道のりは長いわ」とため息を吐く。
ギルドから出て果樹園を目指す彼女は腹ごしらえに何か食べようと考えた。急ぐ用件でもない。
「えっと、屋台はいろいろありますねぇ、さすがガウドより大きな街です」
メインストリートには色とりどりのノボリ旗を掲げた屋台が並んでいる、肉はもちろんだが見たことがない料理が目立つ。そのひとつに甘い香りが漂う店が目を引く。
「あ、あのおこれはなんですか?」
「あら、いらっしゃい!これはクポムだよ薄い生地に蜂蜜をかけたり、好みでフルーツを包んだものさ」
「なるほど、では蜂蜜と林檎をお願いします」
はいよ、と元気に応えるお姉さんが早速と生地を焼き始めた。なんともいえない甘い香りがしてきて食欲を掻き立てる。
「はい、どうぞ。熱いから気を付けて」
「あ、ありがとうどざいます」
ハフハフと頬張れば林檎のシャキシャキした食感がした、半生な状態がまた良い。とろりとした蜂蜜がキャラメリゼしていてたまらない。
「ああ、美味しかったぁ!また買いにこなくては」
何通りもある食べ方に、しばらくはグエンドローに滞在しなくてはと彼女は思った。南国のフルーツがとても気になる。
「ごめんください、ギルドからやってきました」
果樹園の主人はのそりとやってきて「ああ、依頼を受けたのか」と呑気そうに笑った。早速と依頼の草取りをはじめようと張り切るのだが、まずはジュースでも飲めと差し出される。
「うちのはとっても美味いんだ、ほれ遠慮せず」
「いいんですか?……ありがとうございます」
果樹園の摘果したクズ桃だったがとても甘く驚く、どうしてこんなに甘いのか。
「ああ、理由はあれだ、うちの品種は保存が利く加工用だからな、少し堅いが甘いんだ」
「なるほど!素晴らしいです」
喉を潤したララはお礼を述べると雑草取りを始める、よくよく見ると針山のような雑草がみっしりと茂っている。
「悪いなぁ、それが厄介もんでな棘がついててギルドに依頼してもあまりきてくれん」
「ああ、そうなんですね」
理由を聞いた彼女はトゲトゲの雑草を調べる、するとなにやら蠢いているではないか。なんと魔植物だったのだ。人が近づくと蔦のようなもので攻撃してきた。
「うっ、とっても厄介というのがわかりました。弱点は……氷ですね」
茂みの頭に<弱点 氷>と認めた彼女はひと際大きな株に狙いを定めて氷礫を放ってみた。するとガサガサと嫌がる素振りを見せたではないか。
「うん、やはりね。これは引っこ抜くだけじゃ退治は無理です」
さらに彼女は氷魔法を駆使して一気に凍らせてしまった。トゲトゲの名もなき草は丸ごと凍り、風魔法で溶かせばあっという間に枯れた。
「ご主人、終わりましたよ」
「え!?ええええ?嘘だろう嬢ちゃんひとりで!」
現場に駆け付けた主は信じられないものを見て「ひえええ!」と叫んだ。あれほど厄介だった棘雑草がシナシナに干乾びていた。
「いやぁ、驚いた!ありがとう嬢ちゃん!」
「いいえ、どういたしまして」
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