完結 妹を愛していると言った貴方、本気ですか?気持ちが悪い!

音爽(ネソウ)

文字の大きさ
上 下
12 / 32

甘い香りと棘

しおりを挟む
グエンドローに到着したばかりのクラーラことララは、ギルドに入り依頼を選んでいたところだ。目ぼしいものはゴブリン退治だったが彼女は耳を削ぐことが出来ない。
「うう~困りました……なんとか触らずに削ぐことは出来ないかしら」
到着したばかりの彼女ではパーティを組んでくれる人がいない、組むということは信頼関係が前提になる。

「ひとりで出来ることは……えーと果樹園の雑草取り、掃除と薬草採取か」
止む無く果樹園の雑草取りを引き受けることにした、金に余裕はあるが何かしていないと気が済まないのだ。
彼女の目的は世界を見て周ることだ、地図にバツをつけて「まだまだ道のりは長いわ」とため息を吐く。


ギルドから出て果樹園を目指す彼女は腹ごしらえに何か食べようと考えた。急ぐ用件でもない。
「えっと、屋台はいろいろありますねぇ、さすがガウドより大きな街です」
メインストリートには色とりどりのノボリ旗を掲げた屋台が並んでいる、肉はもちろんだが見たことがない料理が目立つ。そのひとつに甘い香りが漂う店が目を引く。

「あ、あのおこれはなんですか?」
「あら、いらっしゃい!これはクポムだよ薄い生地に蜂蜜をかけたり、好みでフルーツを包んだものさ」
「なるほど、では蜂蜜と林檎をお願いします」
はいよ、と元気に応えるお姉さんが早速と生地を焼き始めた。なんともいえない甘い香りがしてきて食欲を掻き立てる。

「はい、どうぞ。熱いから気を付けて」
「あ、ありがとうどざいます」
ハフハフと頬張れば林檎のシャキシャキした食感がした、半生な状態がまた良い。とろりとした蜂蜜がキャラメリゼしていてたまらない。

「ああ、美味しかったぁ!また買いにこなくては」
何通りもある食べ方に、しばらくはグエンドローに滞在しなくてはと彼女は思った。南国のフルーツがとても気になる。



「ごめんください、ギルドからやってきました」
果樹園の主人はのそりとやってきて「ああ、依頼を受けたのか」と呑気そうに笑った。早速と依頼の草取りをはじめようと張り切るのだが、まずはジュースでも飲めと差し出される。
「うちのはとっても美味いんだ、ほれ遠慮せず」
「いいんですか?……ありがとうございます」

果樹園の摘果したクズ桃だったがとても甘く驚く、どうしてこんなに甘いのか。
「ああ、理由はあれだ、うちの品種は保存が利く加工用だからな、少し堅いが甘いんだ」
「なるほど!素晴らしいです」
喉を潤したララはお礼を述べると雑草取りを始める、よくよく見ると針山のような雑草がみっしりと茂っている。

「悪いなぁ、それが厄介もんでな棘がついててギルドに依頼してもあまりきてくれん」
「ああ、そうなんですね」
理由を聞いた彼女はトゲトゲの雑草を調べる、するとなにやら蠢いているではないか。なんと魔植物だったのだ。人が近づくと蔦のようなもので攻撃してきた。

「うっ、とっても厄介というのがわかりました。弱点は……氷ですね」
茂みの頭に<弱点 氷>と認めた彼女はひと際大きな株に狙いを定めて氷礫を放ってみた。するとガサガサと嫌がる素振りを見せたではないか。
「うん、やはりね。これは引っこ抜くだけじゃ退治は無理です」
さらに彼女は氷魔法を駆使して一気に凍らせてしまった。トゲトゲの名もなき草は丸ごと凍り、風魔法で溶かせばあっという間に枯れた。

「ご主人、終わりましたよ」
「え!?ええええ?嘘だろう嬢ちゃんひとりで!」
現場に駆け付けた主は信じられないものを見て「ひえええ!」と叫んだ。あれほど厄介だった棘雑草がシナシナに干乾びていた。

「いやぁ、驚いた!ありがとう嬢ちゃん!」
「いいえ、どういたしまして」





しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

愛されていたのだと知りました。それは、あなたの愛をなくした時の事でした。

桗梛葉 (たなは)
恋愛
リリナシスと王太子ヴィルトスが婚約をしたのは、2人がまだ幼い頃だった。 それから、ずっと2人は一緒に過ごしていた。 一緒に駆け回って、悪戯をして、叱られる事もあったのに。 いつの間にか、そんな2人の関係は、ひどく冷たくなっていた。 変わってしまったのは、いつだろう。 分からないままリリナシスは、想いを反転させる禁忌薬に手を出してしまう。 ****************************************** こちらは、全19話(修正したら予定より6話伸びました🙏) 7/22~7/25の4日間は、1日2話の投稿予定です。以降は、1日1話になります。

断罪される一年前に時間を戻せたので、もう愛しません

天宮有
恋愛
侯爵令嬢の私ルリサは、元婚約者のゼノラス王子に断罪されて処刑が決まる。 私はゼノラスの命令を聞いていただけなのに、捨てられてしまったようだ。 処刑される前日、私は今まで試せなかった時間を戻す魔法を使う。 魔法は成功して一年前に戻ったから、私はゼノラスを許しません。

婚約破棄してくださって結構です

二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。 ※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています

【完結】真実の愛だと称賛され、二人は別れられなくなりました

紫崎 藍華
恋愛
ヘレンは婚約者のティルソンから、面白みのない女だと言われて婚約解消を告げられた。 ティルソンは幼馴染のカトリーナが本命だったのだ。 ティルソンとカトリーナの愛は真実の愛だと貴族たちは賞賛した。 貴族たちにとって二人が真実の愛を貫くのか、それとも破滅へ向かうのか、面白ければどちらでも良かった。

王宮で虐げられた令嬢は追放され、真実の愛を知る~あなた方はもう家族ではありません~

葵 すみれ
恋愛
「お姉さま、ずるい! どうしてお姉さまばっかり!」 男爵家の庶子であるセシールは、王女付きの侍女として選ばれる。 ところが、実際には王女や他の侍女たちに虐げられ、庭園の片隅で泣く毎日。 それでも家族のためだと耐えていたのに、何故か太り出して醜くなり、豚と罵られるように。 とうとう侍女の座を妹に奪われ、嘲笑われながら城を追い出されてしまう。 あんなに尽くした家族からも捨てられ、セシールは街をさまよう。 力尽きそうになったセシールの前に現れたのは、かつて一度だけ会った生意気な少年の成長した姿だった。 そして健康と美しさを取り戻したセシールのもとに、かつての家族の変わり果てた姿が…… ※小説家になろうにも掲載しています

【完結済】次こそは愛されるかもしれないと、期待した私が愚かでした。

こゆき
恋愛
リーゼッヒ王国、王太子アレン。 彼の婚約者として、清く正しく生きてきたヴィオラ・ライラック。 皆に祝福されたその婚約は、とてもとても幸せなものだった。 だが、学園にとあるご令嬢が転入してきたことにより、彼女の生活は一変してしまう。 何もしていないのに、『ヴィオラがそのご令嬢をいじめている』とみんなが言うのだ。 どれだけ違うと訴えても、誰も信じてはくれなかった。 絶望と悲しみにくれるヴィオラは、そのまま隣国の王太子──ハイル帝国の王太子、レオへと『同盟の証』という名の厄介払いとして嫁がされてしまう。 聡明な王子としてリーゼッヒ王国でも有名だったレオならば、己の無罪を信じてくれるかと期待したヴィオラだったが──…… ※在り来りなご都合主義設定です ※『悪役令嬢は自分磨きに忙しい!』の合間の息抜き小説です ※つまりは行き当たりばったり ※不定期掲載な上に雰囲気小説です。ご了承ください 4/1 HOT女性向け2位に入りました。ありがとうございます!

理不尽な理由で婚約者から断罪されることを知ったので、ささやかな抵抗をしてみた結果……。

水上
恋愛
バーンズ学園に通う伯爵令嬢である私、マリア・マクベインはある日、とあるトラブルに巻き込まれた。 その際、婚約者である伯爵令息スティーヴ・バークが、理不尽な理由で私のことを断罪するつもりだということを知った。 そこで、ささやかな抵抗をすることにしたのだけれど、その結果……。

【完結】旦那様、わたくし家出します。

さくらもち
恋愛
とある王国のとある上級貴族家の新妻は政略結婚をして早半年。 溜まりに溜まった不満がついに爆破し、家出を決行するお話です。 名前無し設定で書いて完結させましたが、続き希望を沢山頂きましたので名前を付けて文章を少し治してあります。 名前無しの時に読まれた方は良かったら最初から読んで見てください。 登場人物のサイドストーリー集を描きましたのでそちらも良かったら読んでみてください( ˊᵕˋ*) 第二王子が10年後王弟殿下になってからのストーリーも別で公開中

処理中です...