完結 妹を愛していると言った貴方、本気ですか?気持ちが悪い!

音爽(ネソウ)

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冤罪

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訳の分からないままクラーラは縛り上げられ地下深い牢獄に入れられた。
床は石畳で筵さえない、冷え冷えとした底から体温を奪われる。震える身体を抱きしめて「どうしてこうなったの」と恐れた。

「ああ、あの男には悪魔が住んでいるのだわ。でなければこんな所業を思いつくはずがないもの」
常軌を逸した態度を振り返り彼女はゾッとした、見た目もどこか怪しくて目が爛々としていたと思うのだ。いまさらに気が付いたところで何も出来やしないと唇を噛む。

どうしたものかと考えを巡らせていると上階から降りてくる足音に気が付く。
コツコツと降りてくるそれはどこか軽やかで、とてもではないが牢獄には不似合いだと彼女は思った。
「あ……」
「あらぁ、御機嫌ようお姉様!ふふふ、惨めねぇ薄汚れてまるで野ネズミみたいよ?」
「メイベル……何しに来たの」

彼女は警戒して背後に後退った、だが狭い牢獄はすぐに壁にぶち当たる。悔しさと惨めさが襲ってきた。普段から相性が悪い妹がやってきたのは不幸だと思った。
「ふふふふ、特に要はないわ。ただ惨めな姿を拝んでおこうと思ったのぉ」
「……どういう事よ」
「だって、お父様とお母様がおっしゃったのよ。あんたは用済みだって、愚かな姉様に代わって私が婚約者になるよう手配なさったわ。王子殿下は御心が広いわ、だって命を狙った姉様ひとりを処分するだけで御赦しくださったのよ」

それを聞いたクラーラは猛反論した。
「なによそれは!命なんて狙った覚えはないわ!いったいどういうこと!」
「どういうことも、それが真実なのよ。大胆よねぇ茶会で毒入りの茶を淹れて、それが露見したら大暴れしたんですって?」

あんまりな罪の捏造に驚愕してクラーラは絶叫した。
「私はそんな事をしていないわ!どうして嘘を吐くの!」
「嘘か真かはどうでも良いの、王族が是と言ったらそのようになるのだわ。頭悪いわぁ」
「そ、そんなバカな!」
ケラケラと嗤う妹は面白可笑しそうに顔を歪めてクラーラを見下していた。

「とにかくもう決まったことなの、アンタは毒杯を賜って処刑されるのよ。良かったわね首を撥ねられずに済むのよこれほどの恩赦はないわ」
「なにが恩赦よ!巫山戯ないでちょうだい!王子に合わせて!いいえ陛下に」
するとメイベルは呆れた様子で「ばっかじゃない?」と肩を竦める。

「両陛下も賛成なさっているのよ、どう足掻いても罪は消えないわ」
「そんな」
絶望的な彼女の言葉に打ち拉がれる、罪も何も一切身に覚えがないことで処刑されると聞いたクラーラは滂沱に涙を流す。
やがてメイベルは惨めな姉の姿を見ることに飽きたのか、高笑いしながら去っていった。



「酷い……どうして、こんな事になるなんて」
いつしか涙も枯れていまは虚しさで一杯だった、あんなに優しかった両陛下までも彼女の死罪を望んでいると言う。そして、茫然自失な彼女の下に髪結いの女が訪れて「御仕度を」といって髪を梳いてくれる。

死期は近いのだとそれだけで悟った。


「では、クラーラ・ウィンチカムよ。毒杯を取りその命で責務を果たすのだ」
「……」
王はただそれだけ言って玉座に座った、その隣では王妃がいて更にその脇には己に冤罪を掛けた張本人トマス・オルフォードがニタニタとほくそ笑んで立っていた。彼の横には王女ベリンダが侍っていてやはり微笑んでいるのが見えた。

何もかもが嫌になった彼女は毒杯に手をやって一気にそれを傾ける。

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