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遊学篇
Wでぇと!?
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休園日を利用してアイリスとスカーレットは王都の商店街へ向かった。
街は貴族街と平民街に分かれている、とうぜん貴族街は良いお値段の店ばかりだ。
「たしかに貴族街の洋品店は洗練されたものが置いてるけど、平民街も捨てたもんじゃないのよ?」
スカーレットは不慣れなアイリスの手を取って街を案内している。
「わぁ!華やかね、素敵な街だわ!」
「ふふ、収穫祭が近いせいね。王都外から人が押し寄せる時期だから商店も気合いれてるのよ」
スカーレットの言う通り、店の看板はオレンジと緑で統一されており、星型とハート型のバルーンが街道に飾られている。オレンジと緑はカボチャを表しているとスカーレットが説明する。
「カボチャ!ほくほくして美味しいわよね」
「私はお芋のほうが好きだわ、あと栗!」
ついつい食い気のほうへ傾いてしまう二人の乙女であった。
「ねぇアイリス来て欲しい所があるの」
スカーレットがアイリスの手を引いてとあるカフェへ連れて行った。
すると優しい相貌の男性がカフェの入口付近に佇んでいて、こちらへ手を振る。
「マイキー!」
「やぁスカーレット、今日も綺麗だね」
アイリスを放置してふたりは親し気に微笑み合い抱擁する。周囲に♡が無数に飛び散る。
「……私お邪魔よね」
アイリスはそろそろと後退して離れていく、すると背になにかと接触して止まった。
「あ、ごめんなさい?」
背後に人がいたことに驚き振り向きざまに謝罪するアイリス。だがその人物を見上げて硬直した。
「で、殿下……なんで平民街に!?」
「キミの叔母様が護衛してくれってね、ヒャッハー達には休暇をあげたよ」
「そんな勝手な……大体護衛が要るのは殿下でしょう?」
「ごめんね、どうしても君と街を歩きたくてね。それにリィの腕っぷしなら護衛は要らないよね?」
セイン王子の自由っぷりは健在のようだとアイリスは頭を抱える。
馬車を呼ぶから帰れと王子を叱るアイリス、嫌だとゴネる王子。
「いい加減に我儘はやめてください!あなたの従者は無能かしら?」
「怒らないでリィ、ここでは私の素性を知るひとはほとんどいないから、ね?」
「なにが「ね」ですか!」
だからそういう事じゃないとアイリスは説く。
「リィ?どうしたの……え。セインミュルド殿下!?」
スカーレットと連れの男性が駆け寄ってきた。
「あ、いえ、偶然きてたみたいで。アハハハ……」
アイリスが死んだ目で乾いた笑い声をあげた。なにか察したスカーレットは釣られて笑う。
「えっとこちらはマイキー、私の婚約者よ。リィに紹介したくて呼んでいたの」
「初めましてマイキー・ルイプレスです。ショッピングの邪魔をしてごめんね」
マイキーという男性は申し訳なさそうに頭を掻き頭を下げた。
「いいえ、こちらこそ初めまして、私はアイリス・ブルフィールドです。スカーレットに婚約者がいたなんて驚きましたわ」
チロリとスカーレットを見れば舌をだしてはにかんでいた。
「レットったら、恋人自慢がしたかったのね?悪い子!」
「えへ、ごめんなさい。自慢の彼よ、素敵でしょ?」
マイキーの腕に絡まり、幸せそうに微笑む彼女を咎められずアイリスは「まったく!」と言って苦笑いする。
「それじゃあWデートということで、カフェでお茶しましょう!」
「だ!?なにそれ!私は遠慮するわよ、二人で楽しんでちょ…」
「嬉しいな、よろしくね」
強引に割って入ったセイン王子はアイリスの抗議を塞いでしまった。
アイリスは微笑んだが目が笑っておらず、人目を盗んで王子の足をヒールで思い切り踏んだ。
くぐもった声が聞こえたが、ガン無視してカフェへ入店するアイリスである。
***
「……痛い」
「まぁ大変!お帰りになったほうが良いですわ!今すぐ!秒で!」
「いや、だいじょうぶ!足より心が痛くなるからここにいる!絶対いる!」
「なんでだよ!」
意味不明なやり取りをする王子とアイリスの様子にスカーレットたちは首を傾げる。
「仲良しね、東の島国の娯楽だという夫婦漫才ってやつかしら?」
「へぇ物知りだねレットは、ボクらもやる?」
スカーレットとマイキーがイチャラブして、またも♡を飛ばしてきた。
「夫婦ってなに!?全身全霊で赤の他人ですが?」
「そうだよ、まだ婚約申請段階だよねハニー」
ハニーって誰が!?とアイリスは猛抗議したが皆聞いてなかった。
アイリスは腹立たし気にクリームラテをズゴゴゴゴゴと啜る、生クリームが詰まったようだ。
「リィ、キミを愛しむと言ったでしょ忘れちゃったの?酷いな」
「な!ななななななな!」
「ナが多いね、バナナケーキでも頼もうか」
こんなところで何をいいだすのかとアイリスは真っ赤になって王子を睨む。
スカーレットに助けを請おうとしたが、彼女らは自分達の世界に行ってしまい戻ってきそうもない。
「狼狽えるリィは可愛いなぁ」
「あ”っ?」
「ご、ごごごごごめんなさい……」
調子にのった王子だが報復を恐れた彼はあっさり降参する。
「ゴが多いわね、ゴマプリンでも頼みましょうか」
街は貴族街と平民街に分かれている、とうぜん貴族街は良いお値段の店ばかりだ。
「たしかに貴族街の洋品店は洗練されたものが置いてるけど、平民街も捨てたもんじゃないのよ?」
スカーレットは不慣れなアイリスの手を取って街を案内している。
「わぁ!華やかね、素敵な街だわ!」
「ふふ、収穫祭が近いせいね。王都外から人が押し寄せる時期だから商店も気合いれてるのよ」
スカーレットの言う通り、店の看板はオレンジと緑で統一されており、星型とハート型のバルーンが街道に飾られている。オレンジと緑はカボチャを表しているとスカーレットが説明する。
「カボチャ!ほくほくして美味しいわよね」
「私はお芋のほうが好きだわ、あと栗!」
ついつい食い気のほうへ傾いてしまう二人の乙女であった。
「ねぇアイリス来て欲しい所があるの」
スカーレットがアイリスの手を引いてとあるカフェへ連れて行った。
すると優しい相貌の男性がカフェの入口付近に佇んでいて、こちらへ手を振る。
「マイキー!」
「やぁスカーレット、今日も綺麗だね」
アイリスを放置してふたりは親し気に微笑み合い抱擁する。周囲に♡が無数に飛び散る。
「……私お邪魔よね」
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「あ、ごめんなさい?」
背後に人がいたことに驚き振り向きざまに謝罪するアイリス。だがその人物を見上げて硬直した。
「で、殿下……なんで平民街に!?」
「キミの叔母様が護衛してくれってね、ヒャッハー達には休暇をあげたよ」
「そんな勝手な……大体護衛が要るのは殿下でしょう?」
「ごめんね、どうしても君と街を歩きたくてね。それにリィの腕っぷしなら護衛は要らないよね?」
セイン王子の自由っぷりは健在のようだとアイリスは頭を抱える。
馬車を呼ぶから帰れと王子を叱るアイリス、嫌だとゴネる王子。
「いい加減に我儘はやめてください!あなたの従者は無能かしら?」
「怒らないでリィ、ここでは私の素性を知るひとはほとんどいないから、ね?」
「なにが「ね」ですか!」
だからそういう事じゃないとアイリスは説く。
「リィ?どうしたの……え。セインミュルド殿下!?」
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「あ、いえ、偶然きてたみたいで。アハハハ……」
アイリスが死んだ目で乾いた笑い声をあげた。なにか察したスカーレットは釣られて笑う。
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チロリとスカーレットを見れば舌をだしてはにかんでいた。
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マイキーの腕に絡まり、幸せそうに微笑む彼女を咎められずアイリスは「まったく!」と言って苦笑いする。
「それじゃあWデートということで、カフェでお茶しましょう!」
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強引に割って入ったセイン王子はアイリスの抗議を塞いでしまった。
アイリスは微笑んだが目が笑っておらず、人目を盗んで王子の足をヒールで思い切り踏んだ。
くぐもった声が聞こえたが、ガン無視してカフェへ入店するアイリスである。
***
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「なんでだよ!」
意味不明なやり取りをする王子とアイリスの様子にスカーレットたちは首を傾げる。
「仲良しね、東の島国の娯楽だという夫婦漫才ってやつかしら?」
「へぇ物知りだねレットは、ボクらもやる?」
スカーレットとマイキーがイチャラブして、またも♡を飛ばしてきた。
「夫婦ってなに!?全身全霊で赤の他人ですが?」
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ハニーって誰が!?とアイリスは猛抗議したが皆聞いてなかった。
アイリスは腹立たし気にクリームラテをズゴゴゴゴゴと啜る、生クリームが詰まったようだ。
「リィ、キミを愛しむと言ったでしょ忘れちゃったの?酷いな」
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こんなところで何をいいだすのかとアイリスは真っ赤になって王子を睨む。
スカーレットに助けを請おうとしたが、彼女らは自分達の世界に行ってしまい戻ってきそうもない。
「狼狽えるリィは可愛いなぁ」
「あ”っ?」
「ご、ごごごごごめんなさい……」
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