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ド変態なロードリックの笑顔に怯えて、今度はアイリスがおかしくなっていた。
げっそりやつれた愛娘の様子に母ソルニエは気が気ではなかった。
「……はぁやはり馬があわないのかしら?」
なんとかロードリックを鍛錬して男に磨きを掛けさせたかった母心が、良くない方向にいっていることを危惧した。
先日招いた晩餐の席で、彼の挙動不審ぶりを目の当たりにして不安が募ったのだ。
「ねぇ、あなた。共同事業は両家にとって大切なのは理解していてよ。でも、アイリスの幸せを台無しにするほどの対価は得られるの?」
甚だ疑問だとソルニエは訴えた。
鬼隊長モードから淑女モードの我妻は淑やかで美しいと惚れ惚れしつつ侯爵は応える。
「うむ、確かにな……。緊張からかは知らんがアレの態度は気持ち悪い、物凄く!」
変態丸出しの笑い方は思い出しても気味が悪いと顔を顰めた。
貴族の婚姻は概ね政略ではあるが、相性というものがある。生涯を共にする伴侶がアレでは娘が哀れ過ぎると考えた。
「今一度デンゼルと相談してみよと思う、良い方へ譲歩できるよう動いてみるよ」
愛する妻の手を取りもう少し時間をくれと請う。
「あの子は16歳です、婚期を逃すようなことがあれば……わかってますね?アンリオ」
突如、鬼隊長の顔を覗かせる妻に青くなる夫は「早急に場を設けます!」と良い返事をかえした。
***
ソルニエによる愛の脅しから僅か2日で相談の場は設けられた。
「ずいぶん急だな、どうかしたのかい?近頃は食事も共にするほど距離が縮まったと息子から聞いていたがね」
「ロードリックからそんな報告を?いやいや……そんなバカな」
違うのかとデンゼルは首を傾ぐ。
「はぁ、良い方へ解釈しているようだがとんでもないぞ。娘はすっかり令息に怯えている、やつれてしまって可哀そうだ」
侯爵から真反対な言葉を聞いたデンゼル公爵は顔色を悪くした。
「……バカ息子の勝手な解釈だったのか」そう言って長い溜息を漏らす。
「恐らくだが我妻に食事を誘われたのを上手くいっていると勘違いしたのだろうな。あの日の晩餐の様子をキミに見せたいよ、まるで変態な……気持ち悪い笑顔に一家でドン引きしたぞ」
「へ、変態……」
それを聞いたデンゼルは頭を抱えた、そういえば近頃は侍従達が「坊ちゃんの様子がおかしい」と噂していたのを思い出した。
時折、鏡に向かって気色の悪い笑みを浮かべて「ぐへぐへ」笑うと……。
「アンリオ、すまない。我が子可愛さに保留などとしたばかりに、貴殿の息女の気持ちを蔑ろにしてしまった」
「わかってくれたらそれで良い、遺恨なく解消で良いかね?」
了解したと力なくデンゼル公爵は同意した。
共同事業については、これまで通り変わらず続けるという念書を互い交わしこの日は解散した。
「婚約快勝ですか?」すっとぼけた息子の頭をぺチンと叩き公爵は言う。
「違う解消だ、アイリス嬢を解放してあげなさい。お前には合わないのだ」
「そんな!俺は彼女を愛しているんですよ!」
言い募る息子にデンゼルは諭すように語る。
「相性というものはどうしようもない、彼女はすっかりお前に怯えてやつれているのだ可哀そうだろう?愛があるなら諦めるのも彼女のためだ。これは決定だ覆らん!」
父の無慈悲な言葉にロードリックは頽れてしまう。
「いやだ……いやだいやだ!解消したら彼女は違う男と婚姻するということでしょう!?そんなこと許されない!耐えられない!いやだ!いやだ!いやだー!」
ロードリックは喚き散らしながら父の書斎から飛び出した。
公爵は慌てて追いかけるも愚息は素早く馬を駆り侯爵邸へ向かってしまう。
「愚か者が……」
公は執事を呼ぶと大急ぎで先触れを出させた。
げっそりやつれた愛娘の様子に母ソルニエは気が気ではなかった。
「……はぁやはり馬があわないのかしら?」
なんとかロードリックを鍛錬して男に磨きを掛けさせたかった母心が、良くない方向にいっていることを危惧した。
先日招いた晩餐の席で、彼の挙動不審ぶりを目の当たりにして不安が募ったのだ。
「ねぇ、あなた。共同事業は両家にとって大切なのは理解していてよ。でも、アイリスの幸せを台無しにするほどの対価は得られるの?」
甚だ疑問だとソルニエは訴えた。
鬼隊長モードから淑女モードの我妻は淑やかで美しいと惚れ惚れしつつ侯爵は応える。
「うむ、確かにな……。緊張からかは知らんがアレの態度は気持ち悪い、物凄く!」
変態丸出しの笑い方は思い出しても気味が悪いと顔を顰めた。
貴族の婚姻は概ね政略ではあるが、相性というものがある。生涯を共にする伴侶がアレでは娘が哀れ過ぎると考えた。
「今一度デンゼルと相談してみよと思う、良い方へ譲歩できるよう動いてみるよ」
愛する妻の手を取りもう少し時間をくれと請う。
「あの子は16歳です、婚期を逃すようなことがあれば……わかってますね?アンリオ」
突如、鬼隊長の顔を覗かせる妻に青くなる夫は「早急に場を設けます!」と良い返事をかえした。
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ソルニエによる愛の脅しから僅か2日で相談の場は設けられた。
「ずいぶん急だな、どうかしたのかい?近頃は食事も共にするほど距離が縮まったと息子から聞いていたがね」
「ロードリックからそんな報告を?いやいや……そんなバカな」
違うのかとデンゼルは首を傾ぐ。
「はぁ、良い方へ解釈しているようだがとんでもないぞ。娘はすっかり令息に怯えている、やつれてしまって可哀そうだ」
侯爵から真反対な言葉を聞いたデンゼル公爵は顔色を悪くした。
「……バカ息子の勝手な解釈だったのか」そう言って長い溜息を漏らす。
「恐らくだが我妻に食事を誘われたのを上手くいっていると勘違いしたのだろうな。あの日の晩餐の様子をキミに見せたいよ、まるで変態な……気持ち悪い笑顔に一家でドン引きしたぞ」
「へ、変態……」
それを聞いたデンゼルは頭を抱えた、そういえば近頃は侍従達が「坊ちゃんの様子がおかしい」と噂していたのを思い出した。
時折、鏡に向かって気色の悪い笑みを浮かべて「ぐへぐへ」笑うと……。
「アンリオ、すまない。我が子可愛さに保留などとしたばかりに、貴殿の息女の気持ちを蔑ろにしてしまった」
「わかってくれたらそれで良い、遺恨なく解消で良いかね?」
了解したと力なくデンゼル公爵は同意した。
共同事業については、これまで通り変わらず続けるという念書を互い交わしこの日は解散した。
「婚約快勝ですか?」すっとぼけた息子の頭をぺチンと叩き公爵は言う。
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「そんな!俺は彼女を愛しているんですよ!」
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「相性というものはどうしようもない、彼女はすっかりお前に怯えてやつれているのだ可哀そうだろう?愛があるなら諦めるのも彼女のためだ。これは決定だ覆らん!」
父の無慈悲な言葉にロードリックは頽れてしまう。
「いやだ……いやだいやだ!解消したら彼女は違う男と婚姻するということでしょう!?そんなこと許されない!耐えられない!いやだ!いやだ!いやだー!」
ロードリックは喚き散らしながら父の書斎から飛び出した。
公爵は慌てて追いかけるも愚息は素早く馬を駆り侯爵邸へ向かってしまう。
「愚か者が……」
公は執事を呼ぶと大急ぎで先触れを出させた。
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