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言いたい事
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ブルフィールド家での話し合い当日。
私アイリスは、これまでの仕返しとばかりに無表情で対応している。
もちろんロードリック様はいつものように表情筋が死んだ顔です。
お互い様よね。
無礼な手紙の「いいたい事」を是非聞かせて?
張り詰めた空気に耐えかねたウィルフレッド兄様が口を開く。
「えーとロディの気持ちがはっきりしないままで終わってたよね、今後どうしたいのか聞かせて欲しい」
「……」
また無言で私を睨んで来た、いつまでそれが通ずると?
「ロードリック様、いい加減にしてくださいませ。時間を割いて両家が揃う機会を無駄にするおつもり?」
「……」
益々苛立ったので目を眇めややきつめに彼を見つめます。
いいえ、睨みつけました。淑女の嗜みなどコイツには無用なのです。
すると信じられないものを見たかのように瞠目したかと思えば……。
ロードリックは乱暴に立ち上がって叫んだのです。椅子が吹っ飛びました。
「お、俺はぁ!わ、私は破棄したくない!です!あの日、一目で恋に落ちてきょ、今日までずっと身を焦がす思いを抱いてきたんです!アイリス嬢は天使のようでした、いいえ!天使です。小柄で愛くるしい顔、仕草どれをとっても甘い綿菓子のようです!近年では美しさにも磨きがかかり眩しすぎて正面から見ると理性が吹っ飛びそうです!彼女の理想である寡黙でクールな男になりたくて必死でした!相応しい男になるために鍛錬し容姿も磨いてきました!生涯アイリス嬢だけを愛します!私から唯一の愛を奪わないでください!」
は……い?
いっきに捲し立てたロードリックの様に、全員が虚を突かれて動けません。
呆気にとられ彼の顔をついガン見してしまい、彼の目とバチリと合ってしまいます。
「……リィ、俺を……捨てないで」
顔を真っ赤にして哀願するロードリックの顔は、初めて会った時の無垢な少年のそれでした。
愛称で呼ばれたのは何年ぶりかしら?
「ロードリック様……あなた……お顔が」
夜会では氷の貴公子と、婦女子のみなさんに言われて近寄りがたい存在の人。
私の前でもそうだった。
青みがかった黒髪、瓜実の顔に切れ長の目は深い青、つんと尖った綺麗な鼻筋。
口端を上げて、嘲るような笑みは人を凍らせるよう。
それが貴方だったでしょう?
いま目の前にいるのは誰?
捨てられた子猫が眼を潤ませてミャーミャー鳴いてるようだわ。
いつも吊り上がった目は妖狐みたいだったはずよ。
「なんで、なんで今更そんな甘い顔を私に向けるの?」
「リィ……これが俺の素なんだよ、理想に遠くてごめん」
ロードリックが駆け寄り私の前で跪きました、「愛してます」そう言って手をとります。
彼が手に唇を落とそうとした時……
耳を劈く大音が玄関ホールから響きました、まるで爆破されたかのような。
2度目の爆音の後、あの耳障りな声が聞こえてきます。
「お義兄さまぁぁぁぁ!無事ですかぁぁぁ!?お迎えにきましたぁ!早くドレスを買いに参りましょう!」
「うわぁ」
とその場にいた全員が声を揃えて言いました。
私アイリスは、これまでの仕返しとばかりに無表情で対応している。
もちろんロードリック様はいつものように表情筋が死んだ顔です。
お互い様よね。
無礼な手紙の「いいたい事」を是非聞かせて?
張り詰めた空気に耐えかねたウィルフレッド兄様が口を開く。
「えーとロディの気持ちがはっきりしないままで終わってたよね、今後どうしたいのか聞かせて欲しい」
「……」
また無言で私を睨んで来た、いつまでそれが通ずると?
「ロードリック様、いい加減にしてくださいませ。時間を割いて両家が揃う機会を無駄にするおつもり?」
「……」
益々苛立ったので目を眇めややきつめに彼を見つめます。
いいえ、睨みつけました。淑女の嗜みなどコイツには無用なのです。
すると信じられないものを見たかのように瞠目したかと思えば……。
ロードリックは乱暴に立ち上がって叫んだのです。椅子が吹っ飛びました。
「お、俺はぁ!わ、私は破棄したくない!です!あの日、一目で恋に落ちてきょ、今日までずっと身を焦がす思いを抱いてきたんです!アイリス嬢は天使のようでした、いいえ!天使です。小柄で愛くるしい顔、仕草どれをとっても甘い綿菓子のようです!近年では美しさにも磨きがかかり眩しすぎて正面から見ると理性が吹っ飛びそうです!彼女の理想である寡黙でクールな男になりたくて必死でした!相応しい男になるために鍛錬し容姿も磨いてきました!生涯アイリス嬢だけを愛します!私から唯一の愛を奪わないでください!」
は……い?
いっきに捲し立てたロードリックの様に、全員が虚を突かれて動けません。
呆気にとられ彼の顔をついガン見してしまい、彼の目とバチリと合ってしまいます。
「……リィ、俺を……捨てないで」
顔を真っ赤にして哀願するロードリックの顔は、初めて会った時の無垢な少年のそれでした。
愛称で呼ばれたのは何年ぶりかしら?
「ロードリック様……あなた……お顔が」
夜会では氷の貴公子と、婦女子のみなさんに言われて近寄りがたい存在の人。
私の前でもそうだった。
青みがかった黒髪、瓜実の顔に切れ長の目は深い青、つんと尖った綺麗な鼻筋。
口端を上げて、嘲るような笑みは人を凍らせるよう。
それが貴方だったでしょう?
いま目の前にいるのは誰?
捨てられた子猫が眼を潤ませてミャーミャー鳴いてるようだわ。
いつも吊り上がった目は妖狐みたいだったはずよ。
「なんで、なんで今更そんな甘い顔を私に向けるの?」
「リィ……これが俺の素なんだよ、理想に遠くてごめん」
ロードリックが駆け寄り私の前で跪きました、「愛してます」そう言って手をとります。
彼が手に唇を落とそうとした時……
耳を劈く大音が玄関ホールから響きました、まるで爆破されたかのような。
2度目の爆音の後、あの耳障りな声が聞こえてきます。
「お義兄さまぁぁぁぁ!無事ですかぁぁぁ!?お迎えにきましたぁ!早くドレスを買いに参りましょう!」
「うわぁ」
とその場にいた全員が声を揃えて言いました。
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