その眼差しは凍てつく刃*冷たい婚約者にウンザリしてます*

音爽(ネソウ)

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ロードリックと書いてバカと読む

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部屋の主は山盛りになった屑籠を見て溜息を吐いた。


何枚便箋を無駄にしただろうか、取り繕った言葉は軽すぎるし、本気の思いはベッタリと重すぎる。
伝えたいことが纏まらない、そう呟いて項垂れていたら背後から笑う声がした。

「カッコつけすぎたツケが回ってきたんだよ、馬鹿だな」
「……ウルサイですよ殿下」

「俺にウルサイって不敬な奴め、ほれ美味い酒持ってきたぞ。付き合え」
「また陛下の秘蔵品くすねてきたのか?」
俺は毎度呆れて幼馴染の悪さに付き合ってきた、だが今夜は勘弁して欲しい。

「あと三日しか猶予がないんだ!酒飲んでる暇はない!」
「今更だろう、諦めろ諦めろ」
呑気に他人事だし知らねぇよという態度の王子を睨む。

「いやだ!俺のアイリスが他の男と結婚して、あんなこんなするなど耐えられない!出会った6歳から愛してきたんだ!12年分の愛だぞ、捨てられない!」
「ずいぶんと熟成した愛だなぁ、ドロドロじゃないか?飲みたくないな」

俺の愛はすっきりさっぱり一途な味だ!
差し出されたグラスをグイっと飲み干す、喉が焼ける濃い味がした。

「わかんないねぇ、お前メチャクチャお喋りなくせに令嬢の前だとだんまりなんだって?二重人格かよ」
王子がくつくつと笑ってバカにする。

「ア、アイリスが言ったんだ。寡黙でクールな男が理想だって……」
忠実にそう振る舞ってきただけなのに……いつの間にか関係が冷えていた。

「おまえ極端すぎ!解釈が間違ってる!寡黙な男ってのは陛下みたいなイケオジだぞ?」
「父親の自慢かよ……陛下か。たしかに的確に指示して余計な事は言わないな」
「そーだろ?そーいうことだよ!」

俺はそれでも納得いかない。
陛下ってクールか?王妃様がいるとデレデレじゃないか?
良くわからない、アイリスの理想の男って黙ってクールに佇んでれば良いわけじゃないのか?


話し合いの場で怒っていたアイリスの言葉を反芻する。
『声をかけてくれなかったわ!』
普通に返事して良かったのか?気安く名を呼ぶなんてカッコ悪くないのか?

『微笑みすら見たことが無いわ!』
アイリスは俺に笑って欲しかったのか?
あの可愛い顔を見たらニヤニヤしてしまうから、顔の筋肉を酷使して我慢してたのに……。


「ひょっとしてクールとは冷たい態度で無表情で喋らない男の事ではないのか?」
「……おまえ……バカだったのか」

だってアイリスを思っている時の俺の顔ときたら、ダラしなくてみっともないんだ!
恥ずかしいじゃないか!
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