その眼差しは凍てつく刃*冷たい婚約者にウンザリしてます*

音爽(ネソウ)

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珍獣ベネット2

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珍獣の乱入に一同は面食らう、ロードリック様は口を半開きで固まってる。

「ん?なによまた来てたの邪魔女ウザーイ!お義兄様ぁ西のサロンへ移動しましょう?お母さまったら酷いのよ、公爵令嬢のわたしに既製服で我慢しろって言うのぉ!」
ロードリック様の腕をぐいぐい引っ張り連れ去ろうとしてます。

この重い空気が読めないなんて豪胆な方です、悪い意味で。

「ベネット!どういう席か理解しての狼藉だろうな!?ただでは済まさんぞ!」
ビリビリと空気が揺れるような怒鳴り声でした。

穏やかな紳士のデンゼル様が魔王のような形相です、ちょっとビックリしました。
そんな顔もされるんですね?

「お義父様、破棄の相談だったのでしょ?理解してますよぉ婚約破棄したんでしょう?だったら邪魔女はほんとに要らないですよね、さっさと帰れば良いんですよ!これでお義兄様と私が結婚できるのよねぇ。あぁでもぉ王子にも求婚されちゃってたわ。やぁーん!ベネット選べなーい!やんやん♪困るぅ」

なにを言ってんだコイツ……?

侯爵家側は茫然です、バカの思考に追いつけません。
ロードリック様は固まったままです、ヘタレですか?いつもの動じない極寒キャラはどうしたんです?

時が動いたのは機転をきかせたアイスブラド家の執事のお陰でした。
護衛を呼んで珍獣ベネットを無理矢理退室させました、牢屋にでも入れて飼って欲しいですね。


***

珍獣ベネットのせいで一旦話し合いは中断ということになりました。
忌々しい……物事はサクサクと解決したいものです。

怒りをあらわにしたいところですが、わたしはクールダウンします。
感情のまま突っ走り、焦っても良いことはないですから。

我が家の庭園の四阿でハーブティ―を飲んで気を静めています。
「いかがですか?頭痛にも効果があるんですよ」
「ええ、ありがとう。飲みやすいわ」
侍女のルルは私の癒しです、見目も可愛くて大好きですよ。

「あぁルルがお嫁にくれば良いのに!貴族の男なんて俺様ばかりで嫌いよ!」
「まぁ、お嬢様。生まれた性別を間違えたんですね」

ほんとそれな!
矜持ばかりで空っぽの男と結婚するなんて虫唾が走るわ!
三日後の話し合いは絶対に婚約破棄をしなければ。

「ベネットがロードリックと婚姻すれば良いのよ」
血縁ではない兄妹なのだから法律上なにも問題はないだろう。

ただ、貴族の結婚は利がなければ結ばれない。
「ベネットの家は没落貴族だから難しいかしら?」

表向きアイスブラド家の後妻におさまったバネッサ様は、チャダル伯爵家の妻だった。
当主同士が親友という間柄で、伯爵が儚くなった後に保護したのが真相。

とうぜん愛はない。
デンゼル様は先妻の故シンシア様に生涯の愛を誓っている。
バネッサ様は淑やかな方で、居候として身を弁えているようだけど卑屈になりすぎ。

ただベネット嬢は勘違いした暴走娘になっている。
あの家はだいじょうぶだろうか。
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