その眼差しは凍てつく刃*冷たい婚約者にウンザリしてます*

音爽(ネソウ)

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幼少期はちょっと不愛想な子、という印象だった。
話かければポツリポツリ返事はする、機嫌が悪くてもちゃんと頷いてくれた。

誕生日には「庭に咲いてた」と一輪の花をくれたわ。

私の婚約者の名はロードリック・アイスブラド公爵令息。

変わってしまったのはいつなのか……。
テーブルを挟んだ向こう側で冷たい眼差しの無表情の彼がいる。話しかけても無反応、止む無く口を噤みお茶に夢中なフリをすれば睨んでくる始末。

いったい私にどうしろと?
態度で分かれと言われても微動だにしない相手では何も読めない、見えない。
まるでハシビロコウだわ、あ、なんか似てる。目つき悪いとこが。

ちょっと笑いそうになり、扇で顔を隠せば「ゴホン」と不機嫌な咳払いがした。

いまこの茶席は氷河期かと思うほど寒い。
心が凍てつくわ。
だけど反面笑いたくなるのはなんでかしら?葬儀とかの笑っちゃいけない場面の心境よ。

1時間後、執事と侍女が「おさげします」と言い茶器類を撤去して茶会はお開きになった。
私は扇の陰で音なき溜息を吐く。

肩が凝ってガチガチだわ、早く屋敷に帰りましょう。
退席の旨を伝えお暇する私、すると無言で彼がずいっと横に立って腕を曲げた。
ぶっちゃけ一人で馬車まで歩きたい……。


しぶしぶ手を添えて歩き出す、早く帰りたいのにロードリック様は庭園を大回りして停車場へエスコートしている。
なんなの?嫌がらせか!?そーなのか!
ドチクショー!肩が痛いぜ!

淑女らしからぬ愚痴を脳内で吐いていたら嫌な声が聞こえてきました。

「ただいまー!お義兄様はどこ!?またあの女がきてんでしょ!邪魔!」
彼の義妹のベネット様の声です。
ベネット嬢は内縁の奥様の連れ子で、1年前から公爵邸に住んでいます。

内縁なのは複雑な事情があるとだけ……。


「きゃーお義兄様!ただいまぁー!」
はしたないキンキン声で彼の義妹が小走りでやってきて、ロードリック様に抱き着いたの。
天真爛漫な妹という演技がモロ見えです。

「おかえりベネ、伯爵家でお茶会じゃなかったのかい?」
「つまらないから早めに切り上げましたの!はやく義兄様に会いたくてぇ」
彼を見上げお目目をパチパチ高速で瞬きしています、凄い技です、狂気を感じます。

そんなベネット嬢をとても優しい笑みで見ています、私に対してと真逆の顔です。
結構な衝撃がきました、やっぱり私は嫌われてますね。

ガッカリです……。

心が痛いです、心臓になにかが刺さったようでした。
この婚約は間違いなんでしょうか。
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