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始めて我儘を突っぱねられた王女はブチ切れて、猫かぶりを捨て去り叫ぶ。
「この分からず屋!クソ頑固野郎!大人しくリリジュアと結婚しやがれ!誘拐してでもねぇ!」
「な……カ、カレドナ!?」
儚げ美少女のはずの妹が悪鬼のような顔をして過激に咆えるのを目の当たりして狼狽する、王子は溺愛していた妹が化物のように見えた。王子が泥団子なら王女は美しい絹で包んだ腐臭漂う毒林檎というところだろうか。
「アンタがさぁ、もうちょっとマシな脳みそを持っていたらリリジュアと婚約破棄なんてしてなかったのよ!たかが噂を鵜呑みにしちゃってバッカみたい!あんなの私が広めたガセなのよ!側近か密偵を使って探らせればすぐに嘘八百だと分かったでしょうに!ほんと使えない愚鈍!だから見た目だけの金箔泥団子なんて揶揄されんのよ!この愚図!」
「え、泥団子……わ、私が泥……え、ええ?」
「金●じゃなくて泥団子が股間にぶら下がった役立たずだって言ってんのよぉ!無能が!」
「む、無能……可憐な妹が●玉などと口にするなんて」
王家において蝶よ花よと愛でられてきた愛らしい妹姫は、兄王子テスタシモンの自慢だった。実はとんでもない阿婆擦れだと漸く知り目が覚めた。そして、城内にて悪事を働いていたのは妹だと知る、猛省した王子はリリジュアに頭を下げて今一度婚約をと思い直した。
「リリ……キミが意に添わない結婚をするのならば私は泥を被ろうではないか」
当のリリジュアにしてみれば厄介千万な申し出である。
王子が動いたのはカレドナの予想外ではあったが、思惑通りになった。
自ら早馬を駆り公爵邸に出向いたテスタシモンは門を叩き声高に宣う「今一度、彼女との縁を」と。
だが、王子が期待した反応は公爵からは得られなかった。
「今更なにようですかな?勘違い甚だしい、長子であるだけで王太子筆頭だっただけだ……我がカルスフットの後ろ盾があったからこそな。今の殿下にはなんの価値もない」
「そんな!そんなバカな」
「馬鹿は貴殿だ、無能の其方は飾りの王になるしかなかったのだぞ」
「無能……え、私が?卿まで妹と同じことを言うなんて」
身分だけで持て囃され優遇されていただけの王子、カルスフット公爵は無能王子を後ろから御そうと企んでいた。だからこその縁談であったし、王太子が決定した今テスタシモンにはなんの使い道もない。
「お帰り願おうか、うちは今大変忙しいのだよ。大国インパジオの輿入れが正式に決定しましたからな。娘とて異国の王太子妃になるべく学ぶことが多い。たかが小国の王子では歯が立たない相手に婚約取り消しを咆えて何ができます?」
「う、でも、そそれは……だってリリジュアが国交の犠牲になるのは忍びないと」
でもでもだってとシツコイ王子が斜め上の理由を言いだしたので公爵は呆れた。
「はぁ、娘は自ら喜んで嫁に行くのですよ。なんですかな、その人身御供のような言いようはなんて無礼なんだ。まるで私が無理強いでもしたかのような発言。看過できませんな」
「うぇ!?だってそんな……渋々と受けた婚姻の申し出だったと妹が」
「またも腹黒な王女に唆されのですな、いい加減自分で考えることを覚え給え。これ以上の問答は無意味だ。護衛兵よ王子を門扉までご案内して差しあげろ」
「待って!待ってくれ……あぁ!話の途中なのに」
両肩を担ぎ上げられた王子は門の外へと追いやられて、いくら叫んでも門が開くことはなかった。
「この分からず屋!クソ頑固野郎!大人しくリリジュアと結婚しやがれ!誘拐してでもねぇ!」
「な……カ、カレドナ!?」
儚げ美少女のはずの妹が悪鬼のような顔をして過激に咆えるのを目の当たりして狼狽する、王子は溺愛していた妹が化物のように見えた。王子が泥団子なら王女は美しい絹で包んだ腐臭漂う毒林檎というところだろうか。
「アンタがさぁ、もうちょっとマシな脳みそを持っていたらリリジュアと婚約破棄なんてしてなかったのよ!たかが噂を鵜呑みにしちゃってバッカみたい!あんなの私が広めたガセなのよ!側近か密偵を使って探らせればすぐに嘘八百だと分かったでしょうに!ほんと使えない愚鈍!だから見た目だけの金箔泥団子なんて揶揄されんのよ!この愚図!」
「え、泥団子……わ、私が泥……え、ええ?」
「金●じゃなくて泥団子が股間にぶら下がった役立たずだって言ってんのよぉ!無能が!」
「む、無能……可憐な妹が●玉などと口にするなんて」
王家において蝶よ花よと愛でられてきた愛らしい妹姫は、兄王子テスタシモンの自慢だった。実はとんでもない阿婆擦れだと漸く知り目が覚めた。そして、城内にて悪事を働いていたのは妹だと知る、猛省した王子はリリジュアに頭を下げて今一度婚約をと思い直した。
「リリ……キミが意に添わない結婚をするのならば私は泥を被ろうではないか」
当のリリジュアにしてみれば厄介千万な申し出である。
王子が動いたのはカレドナの予想外ではあったが、思惑通りになった。
自ら早馬を駆り公爵邸に出向いたテスタシモンは門を叩き声高に宣う「今一度、彼女との縁を」と。
だが、王子が期待した反応は公爵からは得られなかった。
「今更なにようですかな?勘違い甚だしい、長子であるだけで王太子筆頭だっただけだ……我がカルスフットの後ろ盾があったからこそな。今の殿下にはなんの価値もない」
「そんな!そんなバカな」
「馬鹿は貴殿だ、無能の其方は飾りの王になるしかなかったのだぞ」
「無能……え、私が?卿まで妹と同じことを言うなんて」
身分だけで持て囃され優遇されていただけの王子、カルスフット公爵は無能王子を後ろから御そうと企んでいた。だからこその縁談であったし、王太子が決定した今テスタシモンにはなんの使い道もない。
「お帰り願おうか、うちは今大変忙しいのだよ。大国インパジオの輿入れが正式に決定しましたからな。娘とて異国の王太子妃になるべく学ぶことが多い。たかが小国の王子では歯が立たない相手に婚約取り消しを咆えて何ができます?」
「う、でも、そそれは……だってリリジュアが国交の犠牲になるのは忍びないと」
でもでもだってとシツコイ王子が斜め上の理由を言いだしたので公爵は呆れた。
「はぁ、娘は自ら喜んで嫁に行くのですよ。なんですかな、その人身御供のような言いようはなんて無礼なんだ。まるで私が無理強いでもしたかのような発言。看過できませんな」
「うぇ!?だってそんな……渋々と受けた婚姻の申し出だったと妹が」
「またも腹黒な王女に唆されのですな、いい加減自分で考えることを覚え給え。これ以上の問答は無意味だ。護衛兵よ王子を門扉までご案内して差しあげろ」
「待って!待ってくれ……あぁ!話の途中なのに」
両肩を担ぎ上げられた王子は門の外へと追いやられて、いくら叫んでも門が開くことはなかった。
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