完結 王子は貞操観念の無い妹君を溺愛してます

音爽(ネソウ)

文字の大きさ
上 下
3 / 18

2

しおりを挟む
カレドナ王女を溺愛しているテスタシモン王子は虚言を吐く文官の言葉を信じ込み、怒り任せに彼女の生家カルスフット公爵家へ自ら出向き婚約の破棄を宣言してしまう。

「リリジュア、キミの裏切りは許せない!婚約は白紙にさせていただく!」
わけがわからない彼女は理由を尋ねるが「自身の胸に聞け」と怒るばかりだ。妹の嘘には耳を貸すのに肝心の婚約者の言葉と態度を見ようとしない。
騒ぎを聞きつけたカルスフット当主が何事でしょうかと王子にご機嫌伺いをしたが、相手にされなかった。筆頭公爵であるカルスフットを蔑ろにしたのだ。

その後に王城にて、身に覚えがない醜聞が広がっていたことを知ったリリジュアはあまりの事に眩暈を起こして倒れた。「なんてこと……王子には優秀な側近と密偵が付いていたでしょうに」
下調べもせずに鵜呑みにした愚かな王子をリリジュアは残念に思う。
軽率な行動をしがちな王子ではあるが、リリジュアはそんな抜けた所さえ愛しく思い、妻となる自身が支え補助していこうと決意していた。彼女は心から至らない王子を愛していたのだ。だが、彼は端から信じようとしないのだと気が付いて心は一気に冷めた。



自室のベッドで塞ぎ込む彼女の元へ、密偵が報告に現れて告げる。
「リリジュア様、やはり噂の出処はカレドナ王女でした。姫は侍女と文官たちを買収してまで有りもしない醜聞をばら撒いたのでございます」
「そう……今更だわね」
後手に回ってしまったことに彼女は悔しがったが、今更申し開きをして誤解を解く気にもなれなかった。
「あぁ、シモン……お慕いしていました。ですが、自身で考えることもせず私を信じようとはしませんでしたね」
短絡で頑固なところがあるテスタシモン王子は、恐らく自身のの言葉など聞きはしないだろうと諦めたのだ。
だが、ことの真相は王に伝えるべきと考えた。

「頼みますよ、皆さん。これは王子の婚約者として最後の命令でお願いです」
「御意、真に遺憾でございますが承ります」


数日後、全てを把握したコアブルト国王は長く深いため息を漏らしてからテスタシモン王子とリリジュア令嬢の婚約破棄を許可した。これは決して王子の為ではない。元より長兄である理由と王妃の強い押しがあっての婚約だった、短慮が過ぎる思考と人を見る目が無いテスタシモンには期待していなかったのだから。

「王妃、お前の我儘はもう聞けぬ。有能であるリリジュアがいてこそ次期王の座にと仮指名していたのだからな」
「……はい、これ以上は何も申し上げません。息子可愛さに動いた私は愚かでした」
「それから、カレドナの愚行についても後に沙汰を出す」
「はい、あの子にも失望しましたわ。末娘だからと甘やかしが過ぎました、これは私の生涯背負う咎です」


これは正式な王太子指名発表の二週間前の出来事だった。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

継母と元婚約者が共謀して伯爵家を乗っ取ろうとしたようですが、正式に爵位を継げるのは私だけですよ?

田太 優
恋愛
父を亡くし、継母に虐げられ、婚約者からも捨てられた。 そんな私の唯一の希望は爵位を継げる年齢になること。 爵位を継いだら正当な権利として適切に対処する。 その結果がどういうものであれ、してきたことの責任を取らせなくてはならない。 ところが、事態は予想以上に大きな問題へと発展してしまう。

冤罪を受けたため、隣国へ亡命します

しろねこ。
恋愛
「お父様が投獄?!」 呼び出されたレナンとミューズは驚きに顔を真っ青にする。 「冤罪よ。でも事は一刻も争うわ。申し訳ないけど、今すぐ荷づくりをして頂戴。すぐにこの国を出るわ」 突如母から言われたのは生活を一変させる言葉だった。 友人、婚約者、国、屋敷、それまでの生活をすべて捨て、令嬢達は手を差し伸べてくれた隣国へと逃げる。 冤罪を晴らすため、奮闘していく。 同名主人公にて様々な話を書いています。 立場やシチュエーションを変えたりしていますが、他作品とリンクする場所も多々あります。 サブキャラについてはスピンオフ的に書いた話もあったりします。 変わった作風かと思いますが、楽しんで頂けたらと思います。 ハピエンが好きなので、最後は必ずそこに繋げます! 小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿中。

婚約破棄されたので、その場から逃げたら時間が巻き戻ったので聖女はもう間違えない

aihara
恋愛
私は聖女だった…聖女だったはずだった。   「偽聖女マリア!  貴様との婚約を破棄する!!」  目の前の婚約者である第二王子からそう宣言される  あまりの急な出来事にその場から逃げた私、マリア・フリージアだったが…  なぜかいつの間にか懐かしい実家の子爵家にいた…。    婚約破棄された、聖女の力を持つ子爵令嬢はもう間違えない…

妹に婚約者を奪われたので、田舎暮らしを始めます

tartan321
恋愛
最後の結末は?????? 本編は完結いたしました。お読み頂きましてありがとうございます。一度完結といたします。これからは、後日談を書いていきます。

侯爵令嬢が婚約破棄されて、祖父の傭兵団長が激怒した。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 侯爵令嬢が無双をする話です。

【完結】妹のせいで貧乏くじを引いてますが、幸せになります

恋愛
 妹が関わるとロクなことがないアリーシャ。そのため、学校生活も後ろ指をさされる生活。  せめて普通に許嫁と結婚を……と思っていたら、父の失態で祖父より年上の男爵と結婚させられることに。そして、許嫁はふわカワな妹を選ぶ始末。  普通に幸せになりたかっただけなのに、どうしてこんなことに……  唯一の味方は学友のシーナのみ。  アリーシャは幸せをつかめるのか。 ※小説家になろうにも投稿中

冤罪により婚約破棄されて国外追放された王女は、隣国の王子に結婚を申し込まれました。

香取鞠里
恋愛
「マーガレット、お前は恥だ。この城から、いやこの王国から出ていけ!」 姉の吹き込んだ嘘により、婚約パーティーの日に婚約破棄と勘当、国外追放を受けたマーガレット。 「では、こうしましょう。マーガレット、きみを僕のものにしよう」 けれど、追放された先で隣国の王子に拾われて!?

妹に婚約者を奪われたけど、婚約者の兄に拾われて幸せになる

ワールド
恋愛
妹のリリアナは私より可愛い。それに才色兼備で姉である私は公爵家の中で落ちこぼれだった。 でも、愛する婚約者マルナールがいるからリリアナや家族からの視線に耐えられた。 しかし、ある日リリアナに婚約者を奪われてしまう。 「すまん、別れてくれ」 「私の方が好きなんですって? お姉さま」 「お前はもういらない」 様々な人からの裏切りと告白で私は公爵家を追放された。 それは終わりであり始まりだった。 路頭に迷っていると、とても爽やかな顔立ちをした公爵に。 「なんだ? この可愛い……女性は?」 私は拾われた。そして、ここから逆襲が始まった。

処理中です...