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コアブルト国のカレドナ王女は、品行方正かつ眉目秀麗で評判が良い兄の婚約者リリジュア公爵令嬢が気に入らない。父王と王妃は何かと彼女の有能さを褒めては王女に「彼女を敬いなさい、手本になさい」と口煩かったせいだ。
怠惰で爛れた色事が大好きなカレドナはリリジュアと比較されては堪ったものではない。

「婚約が消えちゃえば良いのに、ううん、消えなくても兄と険悪な夫婦になればスカッとするわ!」
浅慮な悪巧みを思いついた彼女はリリジュアが浮気を繰り返し自分を陰湿に虐めてくると兄王子に嘘を吹き込むことにした。実はその悪行は王女自身がやらかしている事なのである。


ある時は茶会に乱入しては「リリジュア様が睨んでくる」と言って兄に泣きつく。
「うぅ、そのようにムシケラを見るような視線は悲しいわ」
妹を溺愛している王子は嫉妬しているのだと微笑む、そしてリリジュアに寛容な態度で頼むと言う。
「いいえ、私は睨んだりしてませんわ。対面に座っているのですから殿下にも見えるでしょう?」
「え、ああ。そうだな失念していた。カレドナの勘違いだな!」
「そんなぁ、酷いわ兄様は私が嘘を言ったと?」

決してそんなことはないと愚妹を宥めるテスタシモン王子、妹と婚約者が自分を取り合いしていると勘違いをした彼はニタニタと嬉しそうに笑う。そんな愚鈍な王子を妹も婚約者も同時に呆れた。
茶会の邪魔程度なら日常茶飯事のことだったのでリリジュアはさして気にもしないが、嘘を吹き込む王女の態度は許しがたいと腹を立てていた。
そこで王から借りている密偵を使って王女の身辺を探り、侍女に扮装させた書記官を茶会に置くようにした。

「茶会での発言と態度はもちろん、私に接してくる王女の非道事は一字一句書き漏らさず残すのよ」
「畏まりました」
当然だが書き残された報告書は王にも届けられる、そうとは知らないカレドナ王女は、嫌がらせを繰り返す手を緩めることはしなかった。



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