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退院後

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秘密裡に退院したアネッタ・ロマーノはとある離れに隠れ住むことになった。静養名目だのことなので誰にも文句は言わせないとサロモーネ氏は言う。

「なにも心配ないよ、キミはここで療養するといい」
「ありがとうございます」
深々と頭を下げる彼女はまだ何処か陰りを持っていた。食欲不振は相変わらずのようだ。心労の元を叩かなければ彼女の回復は叶わないとオリンド・サロモーネは思う。



そこでロマーノ家の家令を呼びつけて現状を把握することを考えた。サロモーネ公爵邸に呼び出された彼は怯えて震えている。それはそうだろう、すべてにおいて子爵家とは比べようがないのだから。

「悪いようにはしない、推薦状も作ってやろう」
「い、いいえ、私は引退しようかと思っております。子爵家に仕えて50年、先代に顔向けができません」
「そうか、大儀であった」
彼はそういうと懐から金貨を取り出した、まるでこうなることを知っていたかのようだ。

「やつらの狙いは子爵家だ、その願いを叶えてやってから潰す。任せてくれ」
「はい……」
初老の家令は腰を折り、金貨の入った袋を受け取ると公爵邸から出て行った。次いで呼び出された侍女長なども似たような対応をした。

こうして次々と子爵家に仕えていた輩は悉く辞めていくのだ。

***

それからほどなくして牢獄から出て来たトンマーゾは白い結婚が終了して子爵家が自分のものになったことを知る。
「やったぁ!積年の願いが叶ったぞ、ハハハハハッ!今宵は宴だ!」
「まぁ、おめでとうございます、これで何もかも貴方のものね」
「ああ、そうだとも!」

財を受け取り一気に高揚した彼は有頂天だ。
飲めや歌えやの大騒ぎをやらかした彼らだったが、翌日には現実を見ることになり青褪める。

「どいうことだ!?家令はどこだ!どこにいる!」
督促状の山を見ながら慄くトンマーゾは「こんなの聞いていない」と宣った。しかし、昨日付で家令は辞めている、その他の使用人も同様だ。

「ねぇ、これっていままでのツケじゃないの?全部見覚えがある請求書だわ」
「え?」


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