許して貰わなくても結構です

音爽(ネソウ)

文字の大きさ
上 下
1 / 3

0

しおりを挟む
とある商店の息子コーディと恋仲のチェルシーは「いつか結婚しよう」と言った彼の言葉を信じてずっと待っていた。
それなのに……

誕生日を迎えたその日、呼び出しを受けたチェルシーはお祝いしてくれるのだと心躍らせて指定されたカフェに入った。しかし、そこに待っていたのは彼だけではなかった。見知らぬ女性がとても親し気にコーディの横に座り彼の肩に凭れていた。

どういうことかとチェルシーが固まっていると、視線に気が付いたらしい彼が「こっちだ」と手招きする。どうみても祝う席を設けたわけではない。悲しい予感が彼女の胸に過る、実は半年前から彼の態度が徐々に冷たくなっていたからだ。彼女から連絡しない限り誘っても来なかったし、家に行きたいと強請っても断られてばかりいた。

「まぁ座ってくれ、すぐに済むからさ」
「……えぇ」
渋々と向かい側に腰を下ろすチェルシーだが、女の方から侮蔑の眼差しが突き刺さってきて居心地は最悪だ。彼からの話は予想が付いていたが彼女はケジメとしてそこで耐えることにした。

「単刀直入に言えば別れて欲しい、この通り新しい恋人が出来てね。いくら鈍くてもわかるよな?」
「……そうね、あからさまだもの」
チェルシーは給仕が持ってきたお冷を一口飲み、席を立った。身を切るような痛みを隠して彼女は「サヨナラ」と呟いて出口へ向かう、元恋人として女として最後の矜持を見せたのだった。

「なんだグジグジと責めて泣くかと思ってたのに拍子抜けたわ」
「あぁそうだな、そういう所が可愛くないんだよなぁ。その点プリムは最高の女性だよ!愛らしくて美しい」
「うふ、ありがとう」
コーディはウェーブがかかった新しい恋人の黒髪を撫でて満足そうに笑う、意地の悪い彼はワザとチェルシーの誕生日に別れを切り出したのだ。

「せいぜい俺の事を思って泣いてくれよ、毎年この日を迎える度にね」


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】旦那様、お飾りですか?

紫崎 藍華
恋愛
結婚し新たな生活に期待を抱いていた妻のコリーナに夫のレックスは告げた。 社交の場では立派な妻であるように、と。 そして家庭では大切にするつもりはないことも。 幸せな家庭を夢見ていたコリーナの希望は打ち砕かれた。 そしてお飾りの妻として立派に振る舞う生活が始まった。

【完結】裏切ったあなたを許さない

紫崎 藍華
恋愛
ジョナスはスザンナの婚約者だ。 そのジョナスがスザンナの妹のセレナとの婚約を望んでいると親から告げられた。 それは決定事項であるため婚約は解消され、それだけなく二人の邪魔になるからと領地から追放すると告げられた。 そこにセレナの意向が働いていることは間違いなく、スザンナはセレナに人生を翻弄されるのだった。

【完結】唯一の味方だと思っていた婚約者に裏切られました

紫崎 藍華
恋愛
両親に愛されないサンドラは婚約者ができたことで救われた。 ところが妹のリザが婚約者を譲るよう言ってきたのだ。 困ったサンドラは両親に相談するが、両親はリザの味方だった。 頼れる人は婚約者しかいない。 しかし婚約者は意外な提案をしてきた。

私には婚約者がいた

れもんぴーる
恋愛
私には優秀な魔法使いの婚約者がいる。彼の仕事が忙しくて会えない時間が多くなり、その間私は花の世話をして過ごす。ある日、彼の恋人を名乗る女性から婚約を解消してと手紙が・・・。私は大切な花の世話を忘れるほど嘆き悲しむ。すると彼は・・・? *かなりショートストーリーです。長編にするつもりで書き始めたのに、なぜか主人公の一人語り風になり、書き直そうにもこれでしか納まりませんでした。不思議な力が(#^^#) *なろうにも投稿しています

真実の愛かどうかの問題じゃない

ひおむし
恋愛
ある日、ソフィア・ウィルソン伯爵令嬢の元へ一組の男女が押しかけた。それは元婚約者と、その『真実の愛』の相手だった。婚約破棄も済んでもう縁が切れたはずの二人が押しかけてきた理由は「お前のせいで我々の婚約が認められないんだっ」……いや、何で? よくある『真実の愛』からの『婚約破棄』の、その後のお話です。ざまぁと言えばざまぁなんですが、やったことの責任を果たせ、という話。「それはそれ。これはこれ」

【完結】真実の愛だと称賛され、二人は別れられなくなりました

紫崎 藍華
恋愛
ヘレンは婚約者のティルソンから、面白みのない女だと言われて婚約解消を告げられた。 ティルソンは幼馴染のカトリーナが本命だったのだ。 ティルソンとカトリーナの愛は真実の愛だと貴族たちは賞賛した。 貴族たちにとって二人が真実の愛を貫くのか、それとも破滅へ向かうのか、面白ければどちらでも良かった。

【完結】私の妹を皆溺愛するけど、え? そんなに可愛いかしら?

かのん
恋愛
 わぁい!ホットランキング50位だぁ(●´∀`●)ありがとうごさいます!  私の妹は皆に溺愛される。そして私の物を全て奪っていく小悪魔だ。けれど私はいつもそんな妹を見つめながら思うのだ。  妹。そんなに可愛い?えぇ?本当に?  ゆるふわ設定です。それでもいいよ♪という優しい方は頭空っぽにしてお読みください。  全13話完結で、3月18日より毎日更新していきます。少しでも楽しんでもらえたら幸いです。

【完結】脇役令嬢だって死にたくない

こな
恋愛
自分はただの、ヒロインとヒーローの恋愛を発展させるために呆気なく死ぬ脇役令嬢──そんな運命、納得できるわけがない。 ※ざまぁは後半

処理中です...