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ベネッタの癇癪

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回復するのに五日間もかかったベネッタはご機嫌斜めだった、予定を大幅に狂わされてこのままでは期間内に海辺の町に着きそうもない。

「どうにかならないの!不測の事態なのよ!」
「あ、ああ、わかっているさ、宰相に手紙出しておいた、時期に返事がくるだろう」
「ほんとうに?」
「うん、間違いないよ。だがら機嫌を直してくれないか」

そういう事ならと新たに泊まることになったホテルへ移動した。なるべく倹約したかったのでスィートとはいかないがそれなりに格式あるホテルを選んだ。

「ふん、まぁまぁね。仕方ないから我慢してあげる。そのかわりディナーは豪華によろしく」
「うん、その辺りはわかっているさ。お姫様」
「うふん、大好きよテベリオ」

大好きと言われた彼は有頂天になり、彼女を抱きしめた。やや細く痩せこけたらしい彼女の体躯を残念に思う。豊満な身体を取り戻そうと王太子は血の滴るステーキを食べさせようと思う。



やがて夕餉の時間になりガラガラとディナーの用意をしてきたバトラーが腰を折って挨拶する。食前酒から始まり優雅に食事はスタートした。

「まあ!素敵、とても美味しそうだわ」
ジュウジュウと焼き上げられたシャトーブリアンらしきにフォークを指した、ところが何度切っても一向に千切れない。筋ばかりでフォークの刃を弾き飛ばすのだ。

「ちょっと!どういうことかしら、ちっとも切れないじゃない」
「そんなことはないだろう?きっと体力が落ちているせいさ」
「そうかしらぁ……」

頬に手を当てて首を傾げる彼女に「私が切ってやろう」と鉄板を引き寄せた。とても褒められたマナーではないが仕方ないだろう。

「ほら、簡単に……千切れる…よ!んぎぎぎぎ!」
ギコギコと何度もフォークを往復してやっと切れた一切れを彼女に差し出した。だが、嫌そうにそれを眺めるベネッタである。

「……食べてみてよ、私の代わりに」
「え、……う、うん」
ゴクリと生唾を飲みそれを見た、一見は立派そうなシャトーブリアンである。だがそれはステーキソースに塗れており見た目だけだ、とても堅そうだと彼は眉間に皺を寄せた。

一口頬張ればグニャグニャとそれは歯の上を踊る、何回も咀嚼してもそれは飲み込める品ではなかった。どうにかこうにか飲み込むと「美味しいよ」とテベリオは苦笑いする。
それを見たベネッタはみるみると顔を真っ赤にして震え出した。どうしてそんな嘘を吐くのかとテーブルとダンッと叩く。

「どういうつもりなの!私は豪華にしてと言ったはずだわ!ゴムのような肉のどこが立派な食事!?」
「ごめんよハニー。いまの私たちの予算ではこれが精々なんだよ」
「むきぃー!私達は王太子夫妻なのよ!どういうことなの!」

癇癪を起した彼女は席を立ちあがり調度品に八つ当たりをした、ガタンバタンと大立ち回りをした揚げ句バトラーたちも被害に合う。
「なんなのよもう!すべてが台無しだわ、何が王太子妃よ!妃殿下よ!きぃぃ~!」
「止めて!ベネ!どうにか…痛い!痛いよぉ!」

結果、被害額がとんでもないことになった。



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