完結 王族の醜聞がメシウマ過ぎる件

音爽(ネソウ)

文字の大きさ
上 下
8 / 14

ベネッタの癇癪

しおりを挟む


回復するのに五日間もかかったベネッタはご機嫌斜めだった、予定を大幅に狂わされてこのままでは期間内に海辺の町に着きそうもない。

「どうにかならないの!不測の事態なのよ!」
「あ、ああ、わかっているさ、宰相に手紙出しておいた、時期に返事がくるだろう」
「ほんとうに?」
「うん、間違いないよ。だがら機嫌を直してくれないか」

そういう事ならと新たに泊まることになったホテルへ移動した。なるべく倹約したかったのでスィートとはいかないがそれなりに格式あるホテルを選んだ。

「ふん、まぁまぁね。仕方ないから我慢してあげる。そのかわりディナーは豪華によろしく」
「うん、その辺りはわかっているさ。お姫様」
「うふん、大好きよテベリオ」

大好きと言われた彼は有頂天になり、彼女を抱きしめた。やや細く痩せこけたらしい彼女の体躯を残念に思う。豊満な身体を取り戻そうと王太子は血の滴るステーキを食べさせようと思う。



やがて夕餉の時間になりガラガラとディナーの用意をしてきたバトラーが腰を折って挨拶する。食前酒から始まり優雅に食事はスタートした。

「まあ!素敵、とても美味しそうだわ」
ジュウジュウと焼き上げられたシャトーブリアンらしきにフォークを指した、ところが何度切っても一向に千切れない。筋ばかりでフォークの刃を弾き飛ばすのだ。

「ちょっと!どういうことかしら、ちっとも切れないじゃない」
「そんなことはないだろう?きっと体力が落ちているせいさ」
「そうかしらぁ……」

頬に手を当てて首を傾げる彼女に「私が切ってやろう」と鉄板を引き寄せた。とても褒められたマナーではないが仕方ないだろう。

「ほら、簡単に……千切れる…よ!んぎぎぎぎ!」
ギコギコと何度もフォークを往復してやっと切れた一切れを彼女に差し出した。だが、嫌そうにそれを眺めるベネッタである。

「……食べてみてよ、私の代わりに」
「え、……う、うん」
ゴクリと生唾を飲みそれを見た、一見は立派そうなシャトーブリアンである。だがそれはステーキソースに塗れており見た目だけだ、とても堅そうだと彼は眉間に皺を寄せた。

一口頬張ればグニャグニャとそれは歯の上を踊る、何回も咀嚼してもそれは飲み込める品ではなかった。どうにかこうにか飲み込むと「美味しいよ」とテベリオは苦笑いする。
それを見たベネッタはみるみると顔を真っ赤にして震え出した。どうしてそんな嘘を吐くのかとテーブルとダンッと叩く。

「どういうつもりなの!私は豪華にしてと言ったはずだわ!ゴムのような肉のどこが立派な食事!?」
「ごめんよハニー。いまの私たちの予算ではこれが精々なんだよ」
「むきぃー!私達は王太子夫妻なのよ!どういうことなの!」

癇癪を起した彼女は席を立ちあがり調度品に八つ当たりをした、ガタンバタンと大立ち回りをした揚げ句バトラーたちも被害に合う。
「なんなのよもう!すべてが台無しだわ、何が王太子妃よ!妃殿下よ!きぃぃ~!」
「止めて!ベネ!どうにか…痛い!痛いよぉ!」

結果、被害額がとんでもないことになった。



しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

婿入り条件はちゃんと確認してください。

もふっとしたクリームパン
恋愛
<あらすじ>ある高位貴族の婚約関係に問題が起きた。両家の話し合いの場で、貴族令嬢は選択を迫ることになり、貴族令息は愛と未来を天秤に懸けられ悩む。答えは出ないまま、時間だけが過ぎていく……そんな話です。*令嬢視点で始まります。*すっきりざまぁではないです。ざまぁになるかは相手の選択次第なのでそこまで話はいきません。その手前で終わります。*突発的に思いついたのを書いたので設定はふんわりです。*カクヨム様にも投稿しています。*本編二話+登場人物紹介+おまけ、で完結。

貴族の爵位って面倒ね。

しゃーりん
恋愛
ホリーは公爵令嬢だった母と男爵令息だった父との間に生まれた男爵令嬢。 両親はとても仲が良くて弟も可愛くて、とても幸せだった。 だけど、母の運命を変えた学園に入学する歳になって…… 覚悟してたけど、男爵令嬢って私だけじゃないのにどうして? 理不尽な嫌がらせに助けてくれる人もいないの? ホリーが嫌がらせされる原因は母の元婚約者の息子の指示で… 嫌がらせがきっかけで自国の貴族との縁が難しくなったホリーが隣国の貴族と幸せになるお話です。

妹は病弱アピールで全てを奪い去っていく

希猫 ゆうみ
恋愛
伯爵令嬢マチルダには妹がいる。 妹のビヨネッタは幼い頃に病気で何度か生死の境を彷徨った事実がある。 そのために両親は過保護になりビヨネッタばかり可愛がった。 それは成長した今も変わらない。 今はもう健康なくせに病弱アピールで周囲を思い通り操るビヨネッタ。 その魔の手はマチルダに求婚したレオポルドにまで伸びていく。

皇后マルティナの復讐が幕を開ける時[完]

風龍佳乃
恋愛
マルティナには初恋の人がいたが 王命により皇太子の元に嫁ぎ 無能と言われた夫を支えていた ある日突然 皇帝になった夫が自分の元婚約者令嬢を 第2夫人迎えたのだった マルティナは初恋の人である 第2皇子であった彼を新皇帝にするべく 動き出したのだった マルティナは時間をかけながら じっくりと王家を牛耳り 自分を蔑ろにした夫に三行半を突き付け 理想の人生を作り上げていく

【完結】婚約破棄されたから静かに過ごしたかったけど無理でした

かんな
恋愛
カトリーヌ・エルノーはレオナルド・オルコットと婚約者だ。 二人の間には愛などなく、婚約者なのに挨拶もなく、冷え切った生活を送る日々。そんなある日、殿下に婚約破棄を言い渡され――?

婚約者から妾になれと言われた私は、婚約を破棄することにしました

天宮有
恋愛
公爵令嬢の私エミリーは、婚約者のアシェル王子に「妾になれ」と言われてしまう。 アシェルは子爵令嬢のキアラを好きになったようで、妾になる原因を私のせいにしたいようだ。 もうアシェルと関わりたくない私は、妾にならず婚約破棄しようと決意していた。

完結 裏切られて可哀そう?いいえ、違いますよ。

音爽(ネソウ)
恋愛
プロポーズを受けて有頂天だったが 恋人の裏切りを知る、「アイツとは別れるよ」と聞こえて来たのは彼の声だった

婚約を破棄したいと言うのなら、私は愛することをやめます

天宮有
恋愛
 婚約者のザオードは「婚約を破棄したい」と言うと、私マリーがどんなことでもすると考えている。  家族も命令に従えとしか言わないから、私は愛することをやめて自由に生きることにした。

処理中です...