完結 王族の醜聞がメシウマ過ぎる件

音爽(ネソウ)

文字の大きさ
上 下
1 / 14

虚飾の世界

しおりを挟む



豪華絢爛な式を挙げてご満悦な二人が披露宴会場に姿を現す。人々は口々に言祝ぎを紡ぐがどこか空々しい。上辺だけの祝いの言葉を投げているのだ。
それに気づかないテベリオ・ドレイタス王太子とその妻に納まったベネッタ・ルニッチ男爵令嬢は誰かが言い放った皮肉の言葉さえ喜んでいる。

「実にで」と……。頭が空っぽの似た者同士だと揶揄されても気が付かないのだ。
「はは、ありがとう!」
「ありがとうございますぅ」

可愛い顔を綻ばせて小鳥のように囀るベネッタはテベリオを完全に陥落させていた。容姿に恵まれた彼女は、己の武器であるたわわな胸と妖艶な顔と艶めかしい腰つきを使って落としたのだ。

デレデレになった締まりのないテベリオの顔は誰が見ても”醜い”のだが、敢えて口にはしない。

「ねぇ~え、この後はアンドレイナと式を挙げるのよね?私は寂しいわぁ」
「うん、仕方がないのだよ。形式上……」
「ええ~私泣いちゃう!グスングスン」

彼女は人目も憚らず瞳から大粒の涙を流す、これに困った王太子は「どうか泣かないで」と宥めに掛かる。
「うぇ~ん、ふぇ~ん!グスングスン」
「ああ、参ったなぁ」



結局は我儘を押し通して書面を交わすだけの式にした、略式にされたアンドレイナ・サンドリーニ侯爵令嬢は冷笑を浮かべて「左様で」と言った。
そして、そそくさと出て行く王太子を見送ると婚姻届けをビリビリと破り捨てた。

「どこまでも愚かなのね貴方は、ふふふふ」彼女はあの日の屈辱を思い出す。


『お前みたいなつまらない女など要らない、だが優秀さはかってやろう。第二妃として存分に働けよ』
『ごめんなさぁい、貴女は私の代わりに公儀をやってねぇ。だってそれしか取り柄がないんだしぃ』

公務のほとんどを丸投げにする宣言をして、正妃になるはずのアンドレイナ・サンドリーニを蹴落とし正妃の座に就いたベネッタ・ルニッチは高笑いした。王太子は彼女を第二妃として迎えると宣言したのである。

もちろん、そんな事は罷りならないと王は反対したのだが、その言葉を退けて彼女は同意をしてしまう。
「どうぞ、御存分に……ねぇ陛下?」
「ひ、ひぃ!待ってくれ、それだけは勘弁してくれないか!」

「いいえ、なりません陛下。のです」


しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

婿入り条件はちゃんと確認してください。

もふっとしたクリームパン
恋愛
<あらすじ>ある高位貴族の婚約関係に問題が起きた。両家の話し合いの場で、貴族令嬢は選択を迫ることになり、貴族令息は愛と未来を天秤に懸けられ悩む。答えは出ないまま、時間だけが過ぎていく……そんな話です。*令嬢視点で始まります。*すっきりざまぁではないです。ざまぁになるかは相手の選択次第なのでそこまで話はいきません。その手前で終わります。*突発的に思いついたのを書いたので設定はふんわりです。*カクヨム様にも投稿しています。*本編二話+登場人物紹介+おまけ、で完結。

貴族の爵位って面倒ね。

しゃーりん
恋愛
ホリーは公爵令嬢だった母と男爵令息だった父との間に生まれた男爵令嬢。 両親はとても仲が良くて弟も可愛くて、とても幸せだった。 だけど、母の運命を変えた学園に入学する歳になって…… 覚悟してたけど、男爵令嬢って私だけじゃないのにどうして? 理不尽な嫌がらせに助けてくれる人もいないの? ホリーが嫌がらせされる原因は母の元婚約者の息子の指示で… 嫌がらせがきっかけで自国の貴族との縁が難しくなったホリーが隣国の貴族と幸せになるお話です。

妹は病弱アピールで全てを奪い去っていく

希猫 ゆうみ
恋愛
伯爵令嬢マチルダには妹がいる。 妹のビヨネッタは幼い頃に病気で何度か生死の境を彷徨った事実がある。 そのために両親は過保護になりビヨネッタばかり可愛がった。 それは成長した今も変わらない。 今はもう健康なくせに病弱アピールで周囲を思い通り操るビヨネッタ。 その魔の手はマチルダに求婚したレオポルドにまで伸びていく。

皇后マルティナの復讐が幕を開ける時[完]

風龍佳乃
恋愛
マルティナには初恋の人がいたが 王命により皇太子の元に嫁ぎ 無能と言われた夫を支えていた ある日突然 皇帝になった夫が自分の元婚約者令嬢を 第2夫人迎えたのだった マルティナは初恋の人である 第2皇子であった彼を新皇帝にするべく 動き出したのだった マルティナは時間をかけながら じっくりと王家を牛耳り 自分を蔑ろにした夫に三行半を突き付け 理想の人生を作り上げていく

【完結】婚約破棄されたから静かに過ごしたかったけど無理でした

かんな
恋愛
カトリーヌ・エルノーはレオナルド・オルコットと婚約者だ。 二人の間には愛などなく、婚約者なのに挨拶もなく、冷え切った生活を送る日々。そんなある日、殿下に婚約破棄を言い渡され――?

婚約者から妾になれと言われた私は、婚約を破棄することにしました

天宮有
恋愛
公爵令嬢の私エミリーは、婚約者のアシェル王子に「妾になれ」と言われてしまう。 アシェルは子爵令嬢のキアラを好きになったようで、妾になる原因を私のせいにしたいようだ。 もうアシェルと関わりたくない私は、妾にならず婚約破棄しようと決意していた。

【完結】愛人を作るのですか?!

紫崎 藍華
恋愛
マリエルはダスティンと婚約し愛され大切にされた。 それはまるで夢のような日々だった。 しかし夢は唐突に終わりを迎えた。 ダスティンが愛人を作ると宣言したのだ。

勘違いって恐ろしい

りりん
恋愛
都合のいい勘違いって怖いですねー

処理中です...