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赤子サバイバル
威嚇する仔熊たち
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曲がりなりにも魔物だ、少しくらい知能はあるはずだ。
ただの熊だって物に執着して、危害を加えた相手を覚えるというからな。
ふむ、念話ができるか試してみよう。
長年生きたがこんなことは初めての試みだな。
俺は木の上から仔熊たちへ語りかけてみた、だが怒り狂っているのか芳しい反応はない。
そもそも魔物に理性などあるのか怪しいが、学習能力があるのなら少なからず保持してるのを期待しよう。
そこでコウゾの美味しい実を厳選して下に落としてやり、それから再び念話を飛ばしてみる。
熊が木登りが出来ても鬼コウゾの木はトゲがあり登るのは困難だ、仔熊では下方に生る残念な味の実しか届かないだろう。
『美味しい実を食べてごらん』
「グルルルッ……」
怪しんではいるが落ちた実を気にしている、ほらほら、我慢しないで食べなよ!
真っ赤に熟れた実はすごく甘いんだぞ?
空腹に耐えかねたらしい小さい熊のほうが食べだした。
うん、良い子だ!だから親を呼ぶのはやめてくれよ?
俺は風魔法を更に使って枝を揺らし、木の実のシャワーを浴びせてやった。
すると2頭はガツガツと夢中で食べだした、人も獣も腹が空けば苛立つものだからね。たらふく食べ給え!
彼らが夢中なうちに鬼コウゾの枝を拝借して退散だ。
取り合えず柔らかそうな枝を選んで運ぶことに成功した。
流石にただの枝にまで執着はしないだろう、そこまで強欲でないことを祈る。
幸い親熊は現れない、やれやれ……。
***
小屋に戻った俺は早速、枝の皮を剥ぐことにした。
枝を蒸して皮を剥ぎ、柔らかな白い繊維を干す、その後に水にさらす。柔らかくなったら煮る……。
工程がいろいろあるが忍耐だな、――あぁそれにしても疲れた。
緩く結界を張って束の間の休息を取ることにした、まだまだ未成熟な小さな体は睡眠を欲しがって仕方ない。
”早くパンツが欲しいな……ぐぅ”
その後、目を覚ましたのは夜中のようだ、遠くに梟らしい鳴き声が”ホーホー”と聞こえた。
腹が空いて泣きそうだったので慌ててスープを温めて飲んだ。
捨て子になってまだ1週間も経ってない、なんの成長も見られない手足をグーパーした。
乳幼児期はあっと言う間に大きくなるというが、俺の場合は栄養不足で遅いのではと不安になった。
いいや、ネガティブになるのはよそう。
腹が満たされので再び瞼が落ちてきた、これなら朝までぐっすりかもしれない。
そして翌朝。
いつも通りフヨフヨと浮いて板戸を開けた、小屋の中も外もさして空気は変わらないが気分転換のためだ。
薄っすらと明るい気がする、暗い魔の森に随分慣れてしまったな。
そんなふうに朝の気分を楽しんでいたのだが、視界の端に映ったものを見て悲鳴を上げかけた。
黑い毛玉が二個、軒下に転がっていたからだ。
「あ、あんえ!?」
極力小さく呟いたつもりだったが、ふたつの毛玉は気が付き起き上がって頭をブルブル振っていた。
おいおい、こいつら昨日の仔熊じゃないか。
熊は自分のものに執着する、まさか俺を餌と認識して追いかけてきたのか?
でもコイツらは肉食ではないはずだ、いったいなんだろう。テリトリーに入った俺を排除しにきたのだろうか。
だったら引っ越しをしなければならないな。
僅か数日の拠点だったが気に入ってた。でも仕方ない丸太小屋ごと引っ越すことにしよう。
『お前達に危害を加えるつもりはない、俺は引っ越すね』
「グゥゥゥ」
「グルルル……」
なるべく刺激しないように風魔法で丸太小屋を土台事引き上げた、俺は広範囲に猛獣がいないところを探索した。
木の実があまりない箇所がぽっかり空いていた、良さそうだと目ぼしをつけて、そこへ移動する。
熊スープと干し肉があるから当面は食事に困らないだろう。
小屋を設置する前に地ならしをすることにした。
丸太小屋を仮の場所へ放置して、地面全体を探った。
ふむ、ここは粘土質みたいだ。
ならばちょうど良い、ここに穴を掘って地下室付きの家を造ろうじゃないか!
得意の風魔法を駆使して円形に穴を穿った、中心に太い支柱を立て土台を兼ねる壁を放射状伸ばし部屋を4つに仕切った。それから土を削り取り一階への階段を造る。
補強と虫除けを兼ねてその穴倉に火を放って焼き固めた、これで簡単には決壊しないだろう。
それからそこへ板を並べてさらに補強する、壁には竹を格子状に蔦で編んだもので覆う。
大分それらしくなってきたが……。
「ふああ~う」
欠伸とともに涙が滲んだ、魔法を使い過ぎたせいかまたも眠気が幼い体を襲って来た。
覚醒魔法を緩くかけて耐えることにする、中途半端な引っ越しは後々面倒と思ったから。
完了したら思う存分眠ってやる。
地下室の天井を竹格子と板で作った、四方に長めに張って崩れない様に盛り土で補強する。
断熱材代わりのススキを広げて地下部分は完成だ。
問題は一階の居室だな、地下を広めにしたから長めの丸太が必要だ。
ふむ、以前の家は作業小屋兼納屋としよう。
快適な暮らしを想像して、俺のテンションは一気に上がる。
冬対策を考え積雪にも耐える屋根を造ることにした、丸っと違う構造になるが楽しくて仕方ない。
大きく垂れさがるような屋根は茅葺風にした、多少痛んでも敷直せば半永久に使えるだろう。
最も、俺が成人したらもっと大きな家に変えるつもりさ。
それまで生きていればなのだが。
作業半分という所ですきっ腹が何か寄越せと強請り始めた。
昨日採っておいた実をしゃぶる、昨日今日で歯が生えるわけがないが栄養を摂るには不便だ。
ココナッツミルクが欲しいがここは南国ではないし、探索してもそれらしきは自生してなかった。
後で木の実を探してナッツミルクを飲みたいな。
俺は取り合えず水魔法で飲み水を出して渇きを凌いだ。
”さて、もうひと踏ん張りだ”
ただの熊だって物に執着して、危害を加えた相手を覚えるというからな。
ふむ、念話ができるか試してみよう。
長年生きたがこんなことは初めての試みだな。
俺は木の上から仔熊たちへ語りかけてみた、だが怒り狂っているのか芳しい反応はない。
そもそも魔物に理性などあるのか怪しいが、学習能力があるのなら少なからず保持してるのを期待しよう。
そこでコウゾの美味しい実を厳選して下に落としてやり、それから再び念話を飛ばしてみる。
熊が木登りが出来ても鬼コウゾの木はトゲがあり登るのは困難だ、仔熊では下方に生る残念な味の実しか届かないだろう。
『美味しい実を食べてごらん』
「グルルルッ……」
怪しんではいるが落ちた実を気にしている、ほらほら、我慢しないで食べなよ!
真っ赤に熟れた実はすごく甘いんだぞ?
空腹に耐えかねたらしい小さい熊のほうが食べだした。
うん、良い子だ!だから親を呼ぶのはやめてくれよ?
俺は風魔法を更に使って枝を揺らし、木の実のシャワーを浴びせてやった。
すると2頭はガツガツと夢中で食べだした、人も獣も腹が空けば苛立つものだからね。たらふく食べ給え!
彼らが夢中なうちに鬼コウゾの枝を拝借して退散だ。
取り合えず柔らかそうな枝を選んで運ぶことに成功した。
流石にただの枝にまで執着はしないだろう、そこまで強欲でないことを祈る。
幸い親熊は現れない、やれやれ……。
***
小屋に戻った俺は早速、枝の皮を剥ぐことにした。
枝を蒸して皮を剥ぎ、柔らかな白い繊維を干す、その後に水にさらす。柔らかくなったら煮る……。
工程がいろいろあるが忍耐だな、――あぁそれにしても疲れた。
緩く結界を張って束の間の休息を取ることにした、まだまだ未成熟な小さな体は睡眠を欲しがって仕方ない。
”早くパンツが欲しいな……ぐぅ”
その後、目を覚ましたのは夜中のようだ、遠くに梟らしい鳴き声が”ホーホー”と聞こえた。
腹が空いて泣きそうだったので慌ててスープを温めて飲んだ。
捨て子になってまだ1週間も経ってない、なんの成長も見られない手足をグーパーした。
乳幼児期はあっと言う間に大きくなるというが、俺の場合は栄養不足で遅いのではと不安になった。
いいや、ネガティブになるのはよそう。
腹が満たされので再び瞼が落ちてきた、これなら朝までぐっすりかもしれない。
そして翌朝。
いつも通りフヨフヨと浮いて板戸を開けた、小屋の中も外もさして空気は変わらないが気分転換のためだ。
薄っすらと明るい気がする、暗い魔の森に随分慣れてしまったな。
そんなふうに朝の気分を楽しんでいたのだが、視界の端に映ったものを見て悲鳴を上げかけた。
黑い毛玉が二個、軒下に転がっていたからだ。
「あ、あんえ!?」
極力小さく呟いたつもりだったが、ふたつの毛玉は気が付き起き上がって頭をブルブル振っていた。
おいおい、こいつら昨日の仔熊じゃないか。
熊は自分のものに執着する、まさか俺を餌と認識して追いかけてきたのか?
でもコイツらは肉食ではないはずだ、いったいなんだろう。テリトリーに入った俺を排除しにきたのだろうか。
だったら引っ越しをしなければならないな。
僅か数日の拠点だったが気に入ってた。でも仕方ない丸太小屋ごと引っ越すことにしよう。
『お前達に危害を加えるつもりはない、俺は引っ越すね』
「グゥゥゥ」
「グルルル……」
なるべく刺激しないように風魔法で丸太小屋を土台事引き上げた、俺は広範囲に猛獣がいないところを探索した。
木の実があまりない箇所がぽっかり空いていた、良さそうだと目ぼしをつけて、そこへ移動する。
熊スープと干し肉があるから当面は食事に困らないだろう。
小屋を設置する前に地ならしをすることにした。
丸太小屋を仮の場所へ放置して、地面全体を探った。
ふむ、ここは粘土質みたいだ。
ならばちょうど良い、ここに穴を掘って地下室付きの家を造ろうじゃないか!
得意の風魔法を駆使して円形に穴を穿った、中心に太い支柱を立て土台を兼ねる壁を放射状伸ばし部屋を4つに仕切った。それから土を削り取り一階への階段を造る。
補強と虫除けを兼ねてその穴倉に火を放って焼き固めた、これで簡単には決壊しないだろう。
それからそこへ板を並べてさらに補強する、壁には竹を格子状に蔦で編んだもので覆う。
大分それらしくなってきたが……。
「ふああ~う」
欠伸とともに涙が滲んだ、魔法を使い過ぎたせいかまたも眠気が幼い体を襲って来た。
覚醒魔法を緩くかけて耐えることにする、中途半端な引っ越しは後々面倒と思ったから。
完了したら思う存分眠ってやる。
地下室の天井を竹格子と板で作った、四方に長めに張って崩れない様に盛り土で補強する。
断熱材代わりのススキを広げて地下部分は完成だ。
問題は一階の居室だな、地下を広めにしたから長めの丸太が必要だ。
ふむ、以前の家は作業小屋兼納屋としよう。
快適な暮らしを想像して、俺のテンションは一気に上がる。
冬対策を考え積雪にも耐える屋根を造ることにした、丸っと違う構造になるが楽しくて仕方ない。
大きく垂れさがるような屋根は茅葺風にした、多少痛んでも敷直せば半永久に使えるだろう。
最も、俺が成人したらもっと大きな家に変えるつもりさ。
それまで生きていればなのだが。
作業半分という所ですきっ腹が何か寄越せと強請り始めた。
昨日採っておいた実をしゃぶる、昨日今日で歯が生えるわけがないが栄養を摂るには不便だ。
ココナッツミルクが欲しいがここは南国ではないし、探索してもそれらしきは自生してなかった。
後で木の実を探してナッツミルクを飲みたいな。
俺は取り合えず水魔法で飲み水を出して渇きを凌いだ。
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