57 / 62
後日談
武闘大会
しおりを挟む季節は廻り秋となった、武芸に熱い者達が心震わせる武闘大会がいよいよ開催される。その後に文化祭が開かれるのだがそれは別の話。
「ふっふん!もちろん参加するわよ!ハンナとカーラは?」
「私は遠慮しま~す」
「私も……」
武闘大会は男女関係なく参加できるが大概は男子生徒ばかりである、血気盛んな女子は極稀であり、クリスティナはその稀な者になる。
「なんだぁつまんない。ハンナならフルーレで参加できそうだけど」
「ご冗談を……貴女みたいな豪胆さはないわ」
「あぁ、豪胆と言えば2学年のカミラ・テレジオ伯爵令嬢がいたわ」
「カミラ様?」
「ほら、あそこで素振りなさっているわ」
校庭の左端を指すカーラは「素敵ね」と言って笑う。女子には珍しい短髪をしたその人は「ふん、ふん!」とひたすらに剣を振っていた。
確かに目を引くし上背も高い、濃いオレンジ色の髪の毛が特徴的だった。一見は男子生徒と間違うほどだ。
「ふ~ん、あの方は参加なさるのかしら?」
興味を惹かれたクリスティナはさっそくとそちらに突撃していた。
「あ、待ってよ!」
「待って~」
ハンナとカーラを置いてきぼりにしてクリスティナは「こんにちは!」とやっていた。急に声をかけられたカミラは驚いて「なにごと?」とキョトリとしていた。
「私はクリスティナといいます!よろしく!」
ハキハキと喋る彼女に「ああ、アズナブール王女殿下ですね」とにっこり微笑んだ。
「あら、私の事を御存じで?」
「ふふふ、知らない人の方が少ないです、王女殿下」
彼女は騎士の礼を取り跪くと、クリスティナの手に唇を落としたではないか。
「ま、まぁ……なんて素敵」
クリスティナは同性だというのにドキドキしてしまう、それほどに紳士然としていてカミラは凛としていた。
「貴女は武闘大会に出場されるのかしら?」
「はい!もちろんです、昨年は事情があり参加しておりませんが今年こそは優勝狙いです!」
「す、素敵……」
目をハート型にしそうな勢いで語り合う二人の元に、アルフォイ・ロッシーニがやってきた。
「なんの話をしているの?ふたりはどういう関係?」
「え?ついさっき会ったばかりよ」
「そ、そうか」
明かに牽制している彼に可笑しくなったハンナとカーラは「クスクス」と笑ってしまう。彼女に恋心を抱いていることに気が付いたのは二人だけだ。
「とにかく私は武闘会に参加するよ、キミは?」
「私もですぅ!一緒に頑張りましょうね」
すっかり打ち解けたらしい二人はタメ口を許してしまっていた。それを見たアルフォイは焦りだす。
「わ、私も参加するぞ!絶対にだ!」
「あ~うん、参加すれば良いんじゃない?」
いまいちな反応のクリスティナにアルフォイは「ぐぬぬ」と歯噛みするのだ。
***
それからというもの、足繁くカミラの元へ行くクリスティナの姿が見られた。彼女は恋慕というよりも憧れを抱いているのだが、誤解をしたアルフォイは気が気ではない。
「そう、もっと踏み込んでごらんよ」
「うん、わかったわカミラ!」
剣筋が良いと褒められた彼女は嬉しくなってガシャガシャと剣を揮う、もちろん模造刀であるが中々な迫力だ。
「ふう、良い感じじゃないか。もう立派なライバルだよ」
「えへへ、ありがとう~」
二人は休憩しながら談笑していた、それを羨望の眼差しで見つめるのはアルフォイだ。
「うぅ……ふたりは何の話をしているのだ?」
そんな様子を伺っていたハンナは意地悪い笑顔を見せて彼に話しかける。
「ねぇ、そんなに気になるのぉ?可愛い所あるじゃない」
「え!うわぁ!だ、誰が!」
ニコニコと笑うハンナとドキマギするアルフォイの図はなかなかに面白い。
11
お気に入りに追加
1,123
あなたにおすすめの小説

完】異端の治癒能力を持つ令嬢は婚約破棄をされ、王宮の侍女として静かに暮らす事を望んだ。なのに!王子、私は侍女ですよ!言い寄られたら困ります!
仰木 あん
恋愛
マリアはエネローワ王国のライオネル伯爵の長女である。
ある日、婚約者のハルト=リッチに呼び出され、婚約破棄を告げられる。
理由はマリアの義理の妹、ソフィアに心変わりしたからだそうだ。
ハルトとソフィアは互いに惹かれ、『真実の愛』に気付いたとのこと…。
マリアは色々な物を継母の連れ子である、ソフィアに奪われてきたが、今度は婚約者か…と、気落ちをして、実家に帰る。
自室にて、過去の母の言葉を思い出す。
マリアには、王国において、異端とされるドルイダスの異能があり、強力な治癒能力で、人を癒すことが出来る事を…
しかしそれは、この国では迫害される恐れがあるため、内緒にするようにと強く言われていた。
そんな母が亡くなり、継母がソフィアを連れて屋敷に入ると、マリアの生活は一変した。
ハルトという婚約者を得て、家を折角出たのに、この始末……。
マリアは父親に願い出る。
家族に邪魔されず、一人で静かに王宮の侍女として働いて生きるため、再び家を出るのだが………
この話はフィクションです。
名前等は実際のものとなんら関係はありません。
【完結24万pt感謝】子息の廃嫡? そんなことは家でやれ! 国には関係ないぞ!
宇水涼麻
ファンタジー
貴族達が会する場で、四人の青年が高らかに婚約解消を宣った。
そこに国王陛下が登場し、有無を言わさずそれを認めた。
慌てて否定した青年たちの親に、国王陛下は騒ぎを起こした責任として罰金を課した。その金額があまりに高額で、親たちは青年たちの廃嫡することで免れようとする。
貴族家として、これまで後継者として育ててきた者を廃嫡するのは大変な決断である。
しかし、国王陛下はそれを意味なしと袖にした。それは今回の集会に理由がある。
〰️ 〰️ 〰️
中世ヨーロッパ風の婚約破棄物語です。
完結しました。いつもありがとうございます!
【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。
るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」
色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。
……ほんとに屑だわ。
結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。
彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。
彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。

【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜
福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。
彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。
だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。
「お義姉さま!」 . .
「姉などと呼ばないでください、メリルさん」
しかし、今はまだ辛抱のとき。
セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。
──これは、20年前の断罪劇の続き。
喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。
※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。
旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』
※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。
※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。
【完結】婚約を解消して進路変更を希望いたします
宇水涼麻
ファンタジー
三ヶ月後に卒業を迎える学園の食堂では卒業後の進路についての話題がそここで繰り広げられている。
しかし、一つのテーブルそんなものは関係ないとばかりに四人の生徒が戯れていた。
そこへ美しく気品ある三人の女子生徒が近付いた。
彼女たちの卒業後の進路はどうなるのだろうか?
中世ヨーロッパ風のお話です。
HOTにランクインしました。ありがとうございます!
ファンタジーの週間人気部門で1位になりました。みなさまのおかげです!
ありがとうございます!
さよなら、皆さん。今宵、私はここを出ていきます
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【復讐の為、今夜私は偽の家族と婚約者に別れを告げる―】
私は伯爵令嬢フィーネ・アドラー。優しい両親と18歳になったら結婚する予定の婚約者がいた。しかし、幸せな生活は両親の突然の死により、もろくも崩れ去る。私の後見人になると言って城に上がり込んできた叔父夫婦とその娘。私は彼らによって全てを奪われてしまった。愛する婚約者までも。
もうこれ以上は限界だった。復讐する為、私は今夜皆に別れを告げる決意をした―。
※マークは残酷シーン有り
※(他サイトでも投稿中)


【完結】元婚約者であって家族ではありません。もう赤の他人なんですよ?
つくも茄子
ファンタジー
私、ヘスティア・スタンリー公爵令嬢は今日長年の婚約者であったヴィラン・ヤルコポル伯爵子息と婚約解消をいたしました。理由?相手の不貞行為です。婿入りの分際で愛人を連れ込もうとしたのですから当然です。幼馴染で家族同然だった相手に裏切られてショックだというのに相手は斜め上の思考回路。は!?自分が次期公爵?何の冗談です?家から出て行かない?ここは私の家です!貴男はもう赤の他人なんです!
文句があるなら法廷で決着をつけようではありませんか!
結果は当然、公爵家の圧勝。ヤルコポル伯爵家は御家断絶で一家離散。主犯のヴィランは怪しい研究施設でモルモットとしいて短い生涯を終える……はずでした。なのに何故か薬の副作用で強靭化してしまった。化け物のような『力』を手にしたヴィランは王都を襲い私達一家もそのまま儚く……にはならなかった。
目を覚ましたら幼い自分の姿が……。
何故か十二歳に巻き戻っていたのです。
最悪な未来を回避するためにヴィランとの婚約解消を!と拳を握りしめるものの婚約は継続。仕方なくヴィランの再教育を伯爵家に依頼する事に。
そこから新たな事実が出てくるのですが……本当に婚約は解消できるのでしょうか?
他サイトにも公開中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる