本編完結 堂々と浮気していますが、大丈夫ですか?

音爽(ネソウ)

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閑話 あの日起きた事

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「どうしてそこまで侯爵家に押し付けるのか、私は甚だ遺憾です」
ただ黙って聞いていたクリストフ・アズナブールが口を開く、彼は部外者だからと遠慮していたのだがそうも言ってられないと思ったようだ。
大国ガルネリからやってきた彼は第二王子である、第一王子に王太子を任せ自分は見聞を広めるために遊学をしていた。だが、その遊学先であるサトゥルノ国で今回のことに首を突っ込む。

はからずも、好感を抱いていた女性アリーチャが幸せな結婚をするのなら応援しようと思っていた。だが、それは間違いだと気が付く、王家の話では第四王子テリウスに手を焼いており、その押し付け先に侯爵家を選んだとわかってしまった。

こんなことが許されるわけが無いと彼の中の正義が黙っていなかった。

「どうなんです、サトゥルノ王よ。とてもアリーチャ嬢を幸せにするとは思えない、やんちゃが過ぎる王子を持て余しているように見受けられるが?返答次第では私は黙っていない、為政者としての判断を強く望む」
怒気を孕んだ彼の言葉はとても鋭かった、動揺を隠せない両陛下は目が泳いでおり、どうにもならない事態に陥っていた。

「ま、誠にその通りで……その面目がないです」
「貴方!そんな」
「お前は黙っていなさい、事は国の法律に抵触するのだ。大袈裟なことではない……知っていようどんな理由があれど臣民を虐げてはならないと婚姻に際しても強制はできないとな、これ以上は無理なのだ」
さらには国家間の貴族が自由に出入りできることが望ましいとある、つまり国外へ嫁ぎ出ることも自由なのだ。

「長い事縛り付けてきて済まなかった、これ以上は我儘になってしまう」
王は頭は下げはしなかったが、謝罪を口にした。やっと呪縛から放たれるのだ、アリーチャは心から安堵した。
「我が王よ、謝罪は受け入れます。今日までありがとうございました」

代わりに王妃は泣き崩れ「あの子の未来が変わってしまう」と嘆いた。それは代理母としての苦痛そのものだった。彼女には悪いが犠牲になるわけにはいかないとアリーチャは背を震わせた。


その後、王は急遽にカジノの解体に動いた。
紳士倶楽部に深く根付いていた闇金融の排除に力を注ぐと決意したのだ。腐ったものを見て見ぬふりは出来ないと重い腰を動かした。
「これで良いのだ、借りる側にも落ち度があろう、しかし貸し付けることは違法だ」
闇金融には借りた側に利息も元金も返済する義務はない、つまりは潰す一択なのだ。こうして後ろ暗いものは消え去る運命なのだ。

放逐されたテリウスはどうなったかはアリーチャが良く知っている。手駒として使うつもりだ。


クリストフはこっそりと言う。
「ところでアリーチャ、他所の国へ嫁ぐことは考えてる?えーああ、例えばだけれどね一つの選択肢として」
「他所の国へですか?うう~ん、わかりません。いまは何も考えたくないの、やっと自由になれたのだもの!」
「そ、そうか……」



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