本編完結 堂々と浮気していますが、大丈夫ですか?

音爽(ネソウ)

文字の大きさ
3 / 62

しおりを挟む
クルクルと回転する回転盤ルーレットに球が吸い込まれて行く、ガラガラと刻むような音が耳にこびり付き見守る者達が固唾を飲む。
ノアール8だ!」
「やったわ!三十六倍よ!やったやった!」
小躍りするヴァンナはチップを搔き集めてご満悦だ、ちらりとディーラーが気難しい顔をする。無作法だとでも言いたげだ。

「よしよし、いいぞ。俺には賭け事の才能があるんじゃないか?」
ホクホク顔のテリウス王子は次はどこに掛けるかワクワクしている、3回に一度は涙を呑んでいたが通算で考えれば負け越してはいない。
「よし、次はポーカーだ!負ける気がしないぞ」
「その調子よテリー!頑張って!」
宣言通りにストレートフラシュを出して、大儲けをしたテリーは調子ずく。その晩の彼らは向かう所敵なし状態であった。

「うまいことやりますなお若いの、次は負けませんよ?」
初老の紳士が人懐こい笑顔でチップコインを弾く、気が大きくなっていたテリウスは大法螺を吹き「次も勝ってみせるさ」とウインクした。

「ははははっ!カジノは初めてだがやってみると面白いものだな!掛ける金子は小遣い程度だし」
「ふふふ、言ったじゃないの!少々の刺激は必要だとね」
「ああ、本当だな!愉快愉快!」
この時の彼らは地に足が着いておらずフワフワとした浮遊感でいっぱいだった。そして、勝ち誇った王子はそのまま細かく仕切られた小部屋へとヴァンナを連れ込む。

そこは本来、遊戯に疲れた者達が仮眠をとる場所だ。
だが痴れ者の彼らは違う目的でその寝室を使うのだ、クラバットを崩した彼は彼女の豊満な膨らみに手をやった。
「いいだろう、ヴァナ。可愛がってやるよ」
「うふふ、イケナイ人……いいわ来て?」


***

記録魔道具を停止させて深くため息を漏らしたアリーチャは「なんということ」と呟く。
夜な夜な紳士倶楽部へ入り浸り賭け事に興じており、あまつさえ言葉にすることも憚れることをやらかしていることを見た。
「とっても不愉快なものを見たわ、あぁ腹立たしいこと。ねぇそう思わなくてドニ?」
彼女は左端の空間をじっと見つめて影が落ちてくるのを待った。

「はい、その通りでございます」
「え、そっち!?なんで右端から落ちてくるのよ!」
てっきり左端から出てくるとばかり思った主はプリプリと立腹して机をパシパシ叩いた。

「もう、いいわ。とにかく良い情報をありがとう。賭博場に出入りしているのは大問題だもの!きっと御父様も動いてくださるでしょう」
するとドニは訝しい顔をして「果たしてそうでしょうか」と宣う。まだ足りないのではというのだ。
「どうして?これほどの情報なのよ、剰えヴァンナを個室に連れ込んであんなことやそんなことを」

「いいえ、状況証拠ではありますが、紳士倶楽部は王侯貴族も出入りしております。もし事が露見しますと都合が悪い輩たくさん出て参ります。ちなみにスカリオーネ卿も過去何度か利用実績がございます」
「な!お父様までも!?」

賭博場の利用はしていないらしいが、歓談に訪れシガーを嗜む姿があったという。
「なんという不品行!不埒な!こんな弊害があるなんて」
愕然とするアリーチャであるが、隠密ドニは「今しばらくお待ちいただければ」と言う。

「どういう意味かしら?」
彼女は頬に手を当てて”?”を頭の上に浮かばせんが如く頭を捻る。したり顔のドニは「面白い結果がでますまでお待ちください」と言うだけだった。

しおりを挟む
感想 57

あなたにおすすめの小説

婚約破棄をありがとう

あんど もあ
ファンタジー
リシャール王子に婚約破棄されたパトリシアは思った。「婚約破棄してくれるなんて、なんていい人!」 さらに、魔獣の出る辺境伯の息子との縁談を決められる。「なんて親切な人!」 新しい婚約者とラブラブなバカップルとなったパトリシアは、しみじみとリシャール王子に感謝する。 しかし、当のリシャールには災難が降りかかっていた……。

妹に婚約者を奪われた上に断罪されていたのですが、それが公爵様からの溺愛と逆転劇の始まりでした

水上
恋愛
濡れ衣を着せられ婚約破棄を宣言された裁縫好きの地味令嬢ソフィア。 絶望する彼女を救ったのは、偏屈で有名な公爵のアレックスだった。 「君の嘘は、安物のレースのように穴だらけだね」 彼は圧倒的な知識と論理で、ソフィアを陥れた悪役たちの嘘を次々と暴いていく。 これが、彼からの溺愛と逆転劇の始まりだった……。

あなたの幸せを、心からお祈りしています

たくわん
恋愛
「平民の娘ごときが、騎士の妻になれると思ったのか」 宮廷音楽家の娘リディアは、愛を誓い合った騎士エドゥアルトから、一方的に婚約破棄を告げられる。理由は「身分違い」。彼が選んだのは、爵位と持参金を持つ貴族令嬢だった。 傷ついた心を抱えながらも、リディアは決意する。 「音楽の道で、誰にも見下されない存在になってみせる」 革新的な合奏曲の創作、宮廷初の「音楽会」の開催、そして若き隣国王子との出会い——。 才能と努力だけを武器に、リディアは宮廷音楽界の頂点へと駆け上がっていく。 一方、妻の浪費と実家の圧力に苦しむエドゥアルトは、次第に転落の道を辿り始める。そして彼は気づくのだ。自分が何を失ったのかを。

冤罪で婚約破棄したくせに……今さらもう遅いです。

水垣するめ
恋愛
主人公サラ・ゴーマン公爵令嬢は第一王子のマイケル・フェネルと婚約していた。 しかしある日突然、サラはマイケルから婚約破棄される。 マイケルの隣には男爵家のララがくっついていて、「サラに脅された!」とマイケルに訴えていた。 当然冤罪だった。 以前ララに対して「あまり婚約しているマイケルに近づくのはやめたほうがいい」と忠告したのを、ララは「脅された!」と改変していた。 証拠は無い。 しかしマイケルはララの言葉を信じた。 マイケルは学園でサラを罪人として晒しあげる。 そしてサラの言い分を聞かずに一方的に婚約破棄を宣言した。 もちろん、ララの言い分は全て嘘だったため、後に冤罪が発覚することになりマイケルは周囲から非難される……。

【完結】真実の愛とやらに目覚めてしまった王太子のその後

綾森れん
恋愛
レオノーラ・ドゥランテ侯爵令嬢は夜会にて婚約者の王太子から、 「真実の愛に目覚めた」 と衝撃の告白をされる。 王太子の愛のお相手は男爵令嬢パミーナ。 婚約は破棄され、レオノーラは王太子の弟である公爵との婚約が決まる。 一方、今まで男爵令嬢としての教育しか受けていなかったパミーナには急遽、王妃教育がほどこされるが全く進まない。 文句ばかり言うわがままなパミーナに、王宮の人々は愛想を尽かす。 そんな中「真実の愛」で結ばれた王太子だけが愛する妃パミーナの面倒を見るが、それは不幸の始まりだった。 周囲の忠告を聞かず「真実の愛」とやらを貫いた王太子の末路とは?

婚約者をないがしろにする人はいりません

にいるず
恋愛
 公爵令嬢ナリス・レリフォルは、侯爵子息であるカリロン・サクストンと婚約している。カリロンは社交界でも有名な美男子だ。それに引き換えナリスは平凡でとりえは高い身分だけ。カリロンは、社交界で浮名を流しまくっていたものの今では、唯一の女性を見つけたらしい。子爵令嬢のライザ・フュームだ。  ナリスは今日の王家主催のパーティーで決意した。婚約破棄することを。侯爵家でもないがしろにされ婚約者からも冷たい仕打ちしか受けない。もう我慢できない。今でもカリロンとライザは誰はばかることなくいっしょにいる。そのせいで自分は周りに格好の話題を提供して、今日の陰の主役になってしまったというのに。  そう思っていると、昔からの幼馴染であるこの国の次期国王となるジョイナス王子が、ナリスのもとにやってきた。どうやらダンスを一緒に踊ってくれるようだ。この好奇の視線から助けてくれるらしい。彼には隣国に婚約者がいる。昔は彼と婚約するものだと思っていたのに。

【完結】婚約破棄したのに殿下が何かと絡んでくる

冬月光輝
恋愛
「お前とは婚約破棄したけど友達でいたい」 第三王子のカールと五歳の頃から婚約していた公爵令嬢のシーラ。 しかし、カールは妖艶で美しいと評判の子爵家の次女マリーナに夢中になり強引に婚約破棄して、彼女を新たな婚約者にした。 カールとシーラは幼いときより交流があるので気心の知れた関係でカールは彼女に何でも相談していた。 カールは婚約破棄した後も当然のようにシーラを相談があると毎日のように訪ねる。

婚約破棄を申し入れたのは、父です ― 王子様、あなたの企みはお見通しです!

みかぼう。
恋愛
公爵令嬢クラリッサ・エインズワースは、王太子ルーファスの婚約者。 幼い日に「共に国を守ろう」と誓い合ったはずの彼は、 いま、別の令嬢マリアンヌに微笑んでいた。 そして――年末の舞踏会の夜。 「――この婚約、我らエインズワース家の名において、破棄させていただきます!」 エインズワース公爵が力強く宣言した瞬間、 王国の均衡は揺らぎ始める。 誇りを捨てず、誠実を貫く娘。 政の闇に挑む父。 陰謀を暴かんと手を伸ばす宰相の子。 そして――再び立ち上がる若き王女。 ――沈黙は逃げではなく、力の証。 公爵令嬢の誇りが、王国の未来を変える。 ――荘厳で静謐な政略ロマンス。 (本作品は小説家になろうにも掲載中です)

処理中です...