融資できないなら離縁だと言われました、もちろん快諾します。

音爽(ネソウ)

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ふぅふぅと荒い息を吐きながらレイチェルは恫喝を続ける。
「あんたの取柄なんか金だけでしょ!黙って融資してれば良かったのよ!知ってんのよ、離縁したくて偽装倒産した事を!ほんと貴族って小賢しいわ、身分と金だけのバカの癖に!」

えらい謂れようにディアヌはポカンとする、ただの馬鹿が稼げるわけがないでしょうと言いたかった。
「はん!なによ本当だから言い返せないのでしょ!ざまぁ!」

急に冷静になり頭がクリアになったディアヌは口を開く。
「ざまぁ、それはどっちかしら?」

レイチェルの粗末な服は汚く解れ気味で体型は崩れ、顔中吹き出物だらけ。場末の娼婦に貴族令嬢が負ける要素は皆無だ。
見下されたレイチェルは顔を真っ赤に染めて咆えた。

「う、うるさい!ガリガリの醜女の癖に威張るな!金を寄越しなさいよ!金!」
「あら、オークみたいな人に言われたくないわ。どうしてあなたにお金を恵まなきゃならないの?」

ギィヤー!と聞くに堪えない雄叫びをあげたレイチェル。
「ほんとうに魔物みたいね、クス」

ブチ切れたレイチェルがディアヌに飛び掛かってきた。
動作がいちいちスローモーなのでディアヌはささっと躱す。

掴み損ねたレイチェルはボヨンというように床へ転げた。
腹ばいになってギィギィと喚いている、体が重くて起き上がれないようだ。
「……どうしよう、ちょっと面白い」
「うがぁあ!見下してんじゃないわよ醜女がぁ!」


「はぁ、居丈高な物乞いだこと」この女をどうしようかと考えてた所に背後から声がした。
「物乞いというより火付け強盗ですね」

護衛の男がいつの間にか2階へあがってきていた。
「バート、階下でなにがあったの?」
「はい、ボヤ騒ぎがございました。先ほど鎮火した所です」
邸まわりの生垣の一部が焼けて、正面玄関が少し焦げたと報告を受けた。


転げて暴れてたレイチェルは護衛に縛り上げられ連れられていく。
精悍な顔立ちのバートに見惚れたのか大人しくなった。
しかし媚びることが大好きなのか「ねぇん、許して♡」と腰をクネクネして歩いていた。


「厄日かしら?」
眠気が飛んでしまったディアヌは先日買った本を読むことにした。
タイトルは【騎士に恋した化物王女】であった。
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