融資できないなら離縁だと言われました、もちろん快諾します。

音爽(ネソウ)

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閑話 離縁後のディアヌ

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ケリング家の業績は順調で、飲料に使う果実を生かした商品開発に重点を置いていた。
出戻りの私ディアヌも製菓部門を携わることになったの。

なにもせずにいて良いと両親は甘やかすけど、それじゃつまらないでしょ。
失敗の方が多いけれど毎日が楽しくてしかたないわ。

売り物にならない弾かれた果実を使うから怒られない、恐れないで開発できるの。
「私って恵まれすぎ?」

傷物オレンジの皮を剝きながら「傷物がキズモノを加工してるわ」なんて自虐してたら、加工場に勤める同僚メルに怒られた。

メルは年齢が近いせいかとても話があって楽しい子。

「将来有望なお嬢様がなにを言ってんですか」
「でも、事実だもの。それに結婚はもう懲りたわ、毎日刺繍と本を読むばっかりで退屈なんだもの」
運が悪すぎただけだと皆は慰める、確かに公爵に目を付けられたのは悲劇だった。


「そうそう、嬢様。あの家は子爵に落とされたそうですよぉ、ざまぁですよね!」
「ちょ、そ、そうなの……ざまぁは言いすぎかなぁ?アハハ」

まぁ腹の内は盛大に「ざまぁ!」って叫んでいるわ、それくらい許されるわよね?
「さぁオレンジの皮を煮ましょう、実の方は潰して濾して頂戴」


山と積まれた加工用オレンジから爽やかな酸味が感じられ癒される。
「はぁー良い香、ここに住みたいくらいよ」
「やだぁ嬢様ったら、でもわかります!自分の部屋がこの匂いに包まれたら気持ちが良いわ」

部屋の香?
「そーよ!それがあったわ!果実の香り良いじゃない!でかしたわメル!」
「嬢様はしたない!」


一般家庭では加工するほどの果実は贅沢すぎて買わない。
皮だってジャムにして大事に食べるもの。
ましてや飲食物をまったく違う用途に加工するなんて考えられなかった。

でも加工場では持て余す部分が多い。
搾りカスはどんどん山のように出るし、良くて家畜の餌か堆肥になっている。

ずっと勿体無いと思ってたのよ!
キズモノが商品になるなんて、まさに私に合ってる。

「これは天啓かしら!すごいわ、早速お父様たちに相談しましょう!」
「嬢様、手を動かして!」

やっぱり私は恵まれてる、幸せだわ!
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