融資できないなら離縁だと言われました、もちろん快諾します。

音爽(ネソウ)

文字の大きさ
上 下
2 / 13

2

しおりを挟む
実家に戻った私を待っていたのは親戚全員でした。
みんな晴れやかな顔です、叔父様はすでに美酒に酔っています。

「ただいまみんな!」
「おかえり!人質お疲れ様、愛しいディエ!辛い思いをさせてごめんなさい」
お母様が私を抱きしめ泣いています。

「だいじょうぶ、白い結婚だったもの。失うものは何もなかったわ」
「まぁそれは良かった!ささ、極上のワインを用意したのよ、乾杯しましょう」

離縁と解放おめでとう!そう叫んで祝杯をあげました。
とてもポジティブですね、一応悲しい事情なんですけど。

「金喰い虫と縁が切れたのだ、いやぁ酒が美味いなー」
お父様が満面の笑みでグラスを傾けます、飲みすぎは駄目ですよ?

「ふふ、喜んでいただけて良かった、でも我が家が傾いてしまって悔しいわ」
「ディエや、我が家は事業失敗などしとらんぞ、安心しなさい」
お父様はガハハハと大笑いしました。

あら?
てっきり公爵家に食い荒らされて不憫なことになったとばかり……。

「失敗したと見せかけたのだよ、自社工場を撤退させたと思わせたのだ。立地が良いところに名を変えて移転しただけだ。見事に悪評が広まって公爵が騙されてくれたよ」

社名を変更して、表向き倒産したとみせかけたのだと叔父が言います。
支社や売店などの名前まで一斉に変えた為、他所へ買収されたと世間は誤解したとか。
策士ですね!

「それでは融資を止めたのはワザとなんですね?」
父と叔父が満足げに頷きます。

我が一族の事業はワインをはじめとする飲料の生産です、いま飲んでいるワインも我が家のもの。
なるほど私もすっかり騙されました、こんな美酒を作れる会社が傾くわけありませんね。

「面白かったよ、融資が出来なくなったと言った時の公爵の顔ときたらプククク」
「私のためにこんな大がかりなことを?」
青くなる私に父は慌てて訂正します。

「公爵は自領の立て直す名目で融資させていたのを裏切っていてね。再興したら返済すると誓ったくせに興遊に散財してたのだよ。これが許せるわけがない!あちらの有責は確定している厳しい取り立てがすぐ始まるだろう」

あらー気の毒、ケツの毛まで毟られても弁済できるかしら?
ケツの毛に価値があるとは思えないけど。あらやだお下品!
愛人と再婚どころか、1週間後には日々のパンも食べられるかわからないわね。

「次の夜会で、わが社は社名変更と新事業を展開すると宣伝するつもりだ。愚鈍共がどう豹変してくるか楽しみだな!」

馬鹿公爵みたいな連中を篩落とせたようね、起死回生ね!
崩壊も敗北もしてないけど。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

離縁をさせて頂きます、なぜなら私は選ばれたので。

kanon
恋愛
「アリシア、お前はもうこの家に必要ない。ブライト家から追放する」 父からの予想外の言葉に、私は目を瞬かせる。 我が国でも名高いブライト伯爵家のだたっぴろい応接間。 用があると言われて足を踏み入れた途端に、父は私にそう言ったのだ。 困惑する私を楽しむように、姉のモンタナが薄ら笑いを浮かべる。 「あら、聞こえなかったのかしら? お父様は追放と言ったのよ。まさか追放の意味も知らないわけじゃないわよねぇ?」

愛人がいる夫との政略結婚の行く末は?

しゃーりん
恋愛
子爵令嬢セピアは侯爵令息リースハルトと政略結婚した。 財政難に陥った侯爵家が資産家の子爵家を頼ったことによるもの。 初夜が終わった直後、『愛する人がいる』と告げたリースハルト。 まごうことなき政略結婚。教会で愛を誓ったけれども、もう無効なのね。 好きにしたらいいけど、愛人を囲うお金はあなたの交際費からだからね? 実家の爵位が下でも援助しているのはこちらだからお金を厳しく管理します。 侯爵家がどうなろうと構わないと思っていたけれど、将来の子供のために頑張るセピアのお話です。

【完結】私から全てを奪った妹は、地獄を見るようです。

凛 伊緒
恋愛
「サリーエ。すまないが、君との婚約を破棄させてもらう!」 リデイトリア公爵家が開催した、パーティー。 その最中、私の婚約者ガイディアス・リデイトリア様が他の貴族の方々の前でそう宣言した。 当然、注目は私達に向く。 ガイディアス様の隣には、私の実の妹がいた-- 「私はシファナと共にありたい。」 「分かりました……どうぞお幸せに。私は先に帰らせていただきますわ。…失礼致します。」 (私からどれだけ奪えば、気が済むのだろう……。) 妹に宝石類を、服を、婚約者を……全てを奪われたサリーエ。 しかし彼女は、妹を最後まで責めなかった。 そんな地獄のような日々を送ってきたサリーエは、とある人との出会いにより、運命が大きく変わっていく。 それとは逆に、妹は-- ※全11話構成です。 ※作者がシステムに不慣れな時に書いたものなので、ネタバレの嫌な方はコメント欄を見ないようにしていただければと思います……。

姑が勝手に連れてきた第二夫人が身籠ったようですが、夫は恐らく……

泉花ゆき
恋愛
子爵令嬢だったルナリーが侯爵令息であるザウダと結婚してから一年ほど経ったころ。 一向に後継ぎが出来ないことに業を煮やした夫の母親は、どこからか第二夫人として一人の女性を連れてきた。 ルナリーには何も告げることなく。 そして、第二夫人はあっさりと「子供が出来た」と皆の前で発表する。 夫や姑は大喜び。 ルナリーの実家である子爵家の事業が傾いたことや、跡継ぎを作れないことを理由にしてルナリーに離縁を告げる。 でも、夫であるザウダは…… 同じ室内で男女が眠るだけで子が成せる、と勘違いしてる程にそちらの知識が欠けていたようなんですけど。 どんなトラブルが待っているか分からないし、離縁は望むところ。 嫁ぐ時に用意した大量の持参金は、もちろん引き上げさせていただきます。 ※ゆるゆる設定です

代わりはいると言われた私は出て行くと、代わりはいなかったようです

天宮有
恋愛
調合魔法を扱う私エミリーのポーションは有名で、アシェル王子との婚約が決まるほどだった。 その後、聖女キアラを婚約者にしたかったアシェルは、私に「代わりはいる」と婚約破棄を言い渡す。 元婚約者と家族が嫌になった私は、家を出ることを決意する。 代わりはいるのなら問題ないと考えていたけど、代わりはいなかったようです。

双子の妹は私に面倒事だけを押し付けて婚約者と会っていた

今川幸乃
恋愛
レーナとシェリーは瓜二つの双子。 二人は入れ替わっても周囲に気づかれないぐらいにそっくりだった。 それを利用してシェリーは学問の手習いなど面倒事があると「外せない用事がある」とレーナに入れ替わっては面倒事を押し付けていた。 しぶしぶそれを受け入れていたレーナだが、ある時婚約者のテッドと話していると会話がかみ合わないことに気づく。 調べてみるとどうもシェリーがレーナに成りすましてテッドと会っているようで、テッドもそれに気づいていないようだった。

嘘をありがとう

七辻ゆゆ
恋愛
「まあ、なんて図々しいのでしょう」 おっとりとしていたはずの妻は、辛辣に言った。 「要するにあなた、貴族でいるために政略結婚はする。けれど女とは別れられない、ということですのね?」 妻は言う。女と別れなくてもいい、仕事と嘘をついて会いに行ってもいい。けれど。 「必ず私のところに帰ってきて、子どもをつくり、よい夫、よい父として振る舞いなさい。神に嘘をついたのだから、覚悟を決めて、その嘘を突き通しなさいませ」

【完結】結婚前から愛人を囲う男の種などいりません!

つくも茄子
ファンタジー
伯爵令嬢のフアナは、結婚式の一ヶ月前に婚約者の恋人から「私達愛し合っているから婚約を破棄しろ」と怒鳴り込まれた。この赤毛の女性は誰?え?婚約者のジョアンの恋人?初耳です。ジョアンとは従兄妹同士の幼馴染。ジョアンの父親である侯爵はフアナの伯父でもあった。怒り心頭の伯父。されどフアナは夫に愛人がいても一向に構わない。というよりも、結婚一ヶ月前に破棄など常識に考えて無理である。無事に結婚は済ませたものの、夫は新妻を蔑ろにする。何か勘違いしているようですが、伯爵家の世継ぎは私から生まれた子供がなるんですよ?父親?別に書類上の夫である必要はありません。そんな、フアナに最高の「種」がやってきた。 他サイトにも公開中。

処理中です...