融資できないなら離縁だと言われました、もちろん快諾します。

音爽(ネソウ)

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愛の無い結婚、そんなもの百も承知してます。
金の切れ目が縁の切れ目な事も……。

「ディアヌ、お前と離縁する!こちらは騙された、いいや期待を裏切られたのだからな!」
夫ダニエルは声高に私を罵るように離縁宣言しました。

「はい、了承いたしました」
私は感情の抜けた顔で応えます。

公爵家と伯爵家の婚姻は無理矢理なものでした。
困窮したカバリル公爵家が、裕福な我が家ケリング家の財産に目を付け婚姻を迫ったのです。
格上からの申し出は断れません、両親は断腸の思いで私を嫁がせました。

身分だけしか取り柄の無いダニエルとの結婚は苦痛でしかありませんでした。
凡庸な私は愛されることもなく白い結婚でした。
ダニエルは愛人のレイチェルを本宅に、正妻の私を別宅におきました。

手を付けられなくて本当に僥倖。
じぶんの見目の悪さが功を奏したのです。

いろいろと冷遇され腹が立つ日々でした、茶会や夜会も参加させてもらえませんでしたから。
世間では私が死んだのではないかと噂さえ出回る始末。
何度も実家へ帰ろうかと悔しい思いをして暮らしてました。


しかし、本日めでたく離縁宣言をいただきました、快くお受けします!
ありがとうバカ旦那!
たった半年だったけどお世話に、違うわ「お世話してあげました」
さようなら!


突き出された離縁状にそそくさとサインして派遣されてきた判事に手渡します。
なんと手際の良いことでしょう、姑息な所は尊敬しますね。
腐っても高位貴族ですから、離縁などと不名誉な手続きは密かに済ませるようです。

矜持だけは立派ですのね。

「ふん、さっさと出ていけ。貧乏に落ちたお前など価値はないのだからな!」
こちらの返事も待たずに、彼は愛人のレイチェルを抱きしめ自室へ去っていきます。
レイチェルがチラリと振り向いて嘲笑っていました。

平民の彼女をどこかの養女にして正妻にするのでしょうか。
受け入れる相手が気の毒です。
うちみたいに脅迫して縁を結ぶのかしら?

狙われそうなのは、ちかごろ織物産業で景気が良いと評判のラーボック侯爵でしょう。
ですが、そう簡単にいくかしら。

あらやだ、まるで寄生虫かコバンザメだわ。
怖い怖い。


さて、荷物はさほどありません。
こんな忌まわしい家は素早くお暇しますよ!
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